プラチナは約3年ぶり高値、パラジウムの史上最高値急騰が追い風に! <コモディティ特集>
プラチナ(白金)の現物相場は1月、 金堅調を受けて1000ドルの節目を試したが、突破できずに調整局面を迎えたが、パラジウム急騰をきっかけに押し目を買われて一段高となり、2017年2月以来の高値1040.89ドルをつけた。これまで供給過剰見通しが上値を抑える要因となり、1000ドル前後の抵抗帯に上値を抑えられたが、パラジウムが予想外の高値をつけたことを受けて上値を伸ばした。今年の供給過剰見通しの主因として、投資需要が昨年ほど増加しないとの見方があるが、パラジウム急騰によるパラダイムシフトでプラチナETF(上場投信)に投資資金の流入が続くようなら、需給が均衡する可能性も出てくる。
●パラジウムはリースレート上昇で2500ドル台に
パラジウムは堅調な自動車触媒需要などを背景に大幅な供給不足が見込まれるなか、年明けにリースレート(貸出金利)が急上昇し、史上最高値2543.50ドルをつけた。年末からの金堅調などを受けて年初に2000ドルの節目を突破すると、リースレート1ヵ月物が年末の6.80%から17日に43.25%に急上昇し、供給ひっ迫感が高まった。値ごろ感から売り方に回っていた向きが現物手当に動いたとみられる。
ロジウムも8400ドルと、史上最高値1万ドルをつけた2008年以来の高値をつけ、プラチナ系貴金属(PGM)全体が上値を試している。自動車業界では電気自動車へのシフトが見込まれているが、現時点でのシェアは少なく、ガソリン車やディーゼル車は排ガス規制強化から1台当たりのPGM使用量が増加している。景気減速から新車販売は減少しているが、米国の販売台数は低金利などから5年連続で年間1700万台を超えた。
中国では昨年の新車販売が前年比8.2%減となり、今年も2%減が見込まれているが、米中の第1段階の通商合意などで景気が底入れしたとの見方が出ている。一方、欧州では2018年9月に「国際調和排ガス・燃費試験方法(WLTP)」が導入され、新車販売が混乱したが、昨年はその影響が一巡し、1.2%増となった。
●米中の第1段階の通商合意も世界経済は減速見通し
米中の第1段階の通商合意の署名式が15日に行われた。ただ、カドロー米国家経済会議(NEC)委員長は「米国が中国の通商合意の履行状況を見極める間、対中関税は維持される」との認識を示した。米国の中国への輸出が倍増する見通しだが、米国は3700億ドル相当の中国製品に対する関税を維持するとしている。第2段階の通商協議がいつ開始されるかは不透明であり、関税撤廃は早くとも米大統領選後になるとみられている。
国際通貨基金(IMF)の世界経済見通し(WEO)では、2020年の成長率を3.3%とし、昨年10月時点の予想から0.1%下方修正した。米中が第1段階の通商合意に達したことで底入れする兆しが示されたが、ゲオルギエバ専務理事は「まだ転換点には達していない」との見方を示した。
また、インドを含む新興国の経済が予想よりも減速すると予想。中東情勢の緊迫化に加え、オーストラリア・アフリカの森林火災の影響も指摘された。世界経済の減速見通しから緩和的な金融政策が続き、金堅調が見込まれることもプラチナの支援要因である。
●NY先物市場で大口投機家の買い越しは過去最大に
プラチナが1000ドル台で上値を伸ばすなか、ニューヨーク先物市場で大口投機家の買い越しが過去最高を更新した。米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、1月14日時点のニューヨーク・プラチナの買い越しは6万4525枚となり、1ヵ月前の5万4276枚(12月17日)から拡大。新規買いが新規売りを上回った。買い玉も過去最高を更新しており、テクニカル面で悪化すると利食い売り主導の調整局面が警戒される。
一方、プラチナETF残高は20日の南アフリカで31.76トン(12月末31.71トン)に増加、15日の米国で22.99トン(同23.29トン)、20日の英国で17.90トン(同18.04トン)に減少した。昨年は南アで9.83トン、米国で3.84トン、英国で8.82トン増加し、投資資金の流入から小幅な供給不足となった。
(minkabu PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース