異常気象は成長のチャンス! 商機捉え上昇気流に乗る有望株を徹底追跡 <株探トップ特集>

特集
2020年1月23日 19時30分

―地球温暖化が新たなビジネス需要を喚起、気候大変動時代の成長キーワードを探る―

昨年秋から、異常気象に伴う大型台風の被害を受けた長崎県壱岐市をはじめ、日本各地で「気候非常事態宣言」表明が相次いでいる。温暖化対策の新たな枠組みの「パリ協定」が本格的に発動する今年、改めて対策の必要性が叫ばれている。国際情勢リスクを分析するコンサルタント会社、ユーラシア・グループが毎年初めに発表する「世界の10大リスク」によると、2020年に「気候変動における政治と経済」が7位にランクインしている。気候変動問題への対策は待ったなしの状態だが、地球規模の気温変化とともに、衣食住にまつわる様々な需要が創出されている。将来のリスクをイノベーションや投資を加速させる好機として捉え、関連銘柄を厳選した。

●確実に上がる気温で新たな需要を創出

国内でも暖冬によるスキー場の雪不足が伝わっており、これも温暖化の影響といわれている。日本に限ったことではない。英国のオックスフォード大学出版局が19年を象徴する「今年の言葉」として、「気候非常事態(Climate emergency)」を選んだ。5年前、今世紀末までに平均気温の上昇を産業革命前に比べて2℃未満に抑えるという長期目標のもと、多数の国がパリ協定に調印した。しかし、足もと世界の気温は世紀末までに3.5℃上昇するペースで進んでいる。最近、気温の変化に伴う行動パターンや、商品などの需要分析、予測に役立つ気象ビックデータを使って、様々な形のビジネスが生まれている。

民間気象情報で世界トップのウェザーニューズ <4825> はこれまで法人向けに航海や航空、陸上気象データを中心としたビジネスを展開してきたが、気象リスクへの関心の高まりやネット技術の発展により、陸上気象の調査や道路市場のシステムの需要が拡大している。同社は、放送気象市場の構造的変化に対応する新たな収益モデルの検討を行っている。それとともに、欧州において再生可能エネルギーの発電量想定や、天候と連動する電気などのエネルギー需要予測サービスを提供するフランスのMetnextを傘下に収め、グローバル展開を目指している。

●天気情報配信ビジネスは様々な需要に対応

気象会社が企業向けに販売する情報は、広範囲の気象情報が一括で売られる例が多く、特定地域の情報のみを必要とする企業にとっては割高となるケースも多い。そこで、京セラ <6971> 傘下で通信・環境エンジニアリングを手掛ける京セラコミュニケーションシステム(京都市)は、顧客企業が情報を必要とする地域や時間帯を選べるサービスの提供で需要を捉えている。同社は16年から気象庁の公開情報を基に、異なるシステムで情報連携するための技術仕様に使いやすく加工し配信するサービスを提供している。

環境・建設コンサルが主体のいであ <9768> は気象情報を中心とした環境情報全般をオンラインでシステム化し、気象海象情報の予測ならびに実況情報をリアルタイムに提供する仕組みを構築しており、天候の変化に伴う季節病などの症状の悪化や健康への影響を予報するサービスも提供している。

昨年12月10日に東証マザーズに上場したALiNKインターネット <7077> [東証M]は日本気象協会との共同事業である天気予報専門メディア「tenki.jp」「tenki.jp 登山天気」を運営している。今期tenki.jpのページビュー(PV)数は順調に拡大すると予想しているが、19年3月に米アップルが複数のウェブサイトを経由してユーザーを追いかける広告(リターゲティング広告など)に対して広告の追跡を阻止する機能を強化したことで、スマートフォンサイトのPV単価が下落している。しかし、昨年秋の大型の台風接近でPV数が大幅に上昇し、第3四半期経常利益は2億9100万円と通期計画ラインにほぼ達しており、通期経常利益は上方修正が期待される。

●温暖化対策関連株にも上値期待膨らむ

19年12月のオーストラリアでは連日最高気温の記録が更新された。世界各地で毎年のように「観測史上最高の暑さを記録」との報道にはもはや驚きがない。気温の変化に我々の生活も合わせざるを得なくなるだろう。国際エネルギー機関(IEA)では、熱波の到来は今後、より頻繁になると予測しており、世界のエアコンの数は、今世紀半ばには現在の16億台から56億台になるとみている。

エアコンや冷蔵庫メーカーが恩恵を受けることとなるが、エアコンに使われる「代替フロン」が地球温暖化を促進させる可能性が高いとのことから、16年10月の国際会議で、36年までに先進国の代替フロンの生産・消費量を85%削減する目標が決議されている。目標を達成するには、エアコンなどの冷媒を切り替えると同時に、新しい技術の開発が進められている。こうしたなか、エアコン大手のダイキン工業 <6367> は19年7月、エアコン用冷媒「HFC(ハイドロフルオロカーボン)32」の特許を外部に無償開放した。代替フロン(HFC)の中でも環境負荷の小さいHFC32の普及を促すことで、過度な規制が今後設けられることを牽制する狙いがある。同社19年度の家庭用ルームエアコンの世界生産台数は前年比14%増の835万台と、2年連続で過去最高を更新する見込みだ。

このほか温暖化対策関連として挙げられるのは、建築用遮熱塗料に強みを持つ日本特殊塗料 <4619> やエスケー化研 <4628> [JQ]。世界でも数社しか生産していない高付加価値の断熱材のセラミックファイバーを手掛けるイソライト工業 <5358> も環境への対策が急務となるなか存在感が高まりそうだ。

ほかには、気温の上昇によって水や蚊を媒体に伝染するデング熱などの感染病が発生する恐れが指摘されており、大幸薬品 <4574> 、住友化学 <4005> 、関西ペイント <4613> などに関心が高まる可能性がある。更に、インターネットを使って日用品や食料品を日常的に購入する人が増えると予想されることから、オイシックス・ラ・大地 <3182> [東証M]、出前館 <2484> [JQ]、セイノーホールディングス <9076> なども商機が拡大しそうだ。

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