すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 合金さんの場合-最終回
「下がっても減らない」を意識して、ラインアップに加えた「空売り」と「保育園」
登場する銘柄
岡山製紙<3892>、要興業<6566>、日経平均ブル2倍上場投信<1579><7837>
投資歴18年で、資金を追加しながら3000万円の元手を約2億円に増やしてきた。本人いわく「好きなことに没頭するうち資産が6倍に増えていた」と、お金を稼ぐことより、むしろ知られざるお宝銘柄を発見することに喜びを感じるという。好みのお宝銘柄は、「一見Aカップのように見えて、実はFカップ」。ぱっと見ただけでは通り過ごしてしまいがちだが、じっくり見極めれば大きな魅力を秘めている銘柄を、独特のたとえで表現する。そのために頭だけではなく、足も使って独自の調査も取り組む。
最近は家族との時間を優先するため、勤めていた会社を辞め、不動産投資を含めた専業投資家に転身。不動産投資では保育施設を建設して運用。仕事は辞めても、投資家であるより、社会貢献につながる事業家でありたいという気持ちが、不動産をポートフォリオに加えた理由の1つだ。
新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大で、日経平均株価は半月で2000円近い下げとなり、不安心理が覆う展開になっている。惚れ込んだ銘柄に、ついのめり込んでしまいがちな集中投資派の合金さん(ハンドルネーム)にとっては、人一倍影響を受けやすい局面だ。
実際、リーマン・ショックの際には一点集中買い状態になっていたことで、3000万円を溶かした経験がある。だが、あれから10年強、合金さんも40歳代になり、同じ失敗を繰り返さないように取引手法や資産配分に工夫を凝らしている。大きな転換といえるのが、株で空売りを戦略に加えたことと、これまで一部を紹介してきた株で上げた利益の一部を小規模保育園の運営に回したことだ。
最終回の今回は、攻めながらも守りにも配慮した投資スタイルについて紹介しよう。各論に入る前に、あらかじめ強調しておきたいのは、投資対象や手法は変化しつつも、「合金さんらしさは」変わっていないことだ。
それは、世間の関心や注目度があまり高くないものに好奇心が刺激され、その中身を丸裸にするまで調べ尽くして本来持っている良さを納得した上で、初めて手を出す――という姿勢だ。では守りを意識した、新たな合金流投資法について見ていこう。
原材料の下げと値上げ効果で収益拡大期待あり
合金さんが最近、惚れ込んだ銘柄に岡山製紙 <3892> という会社がある。大株主に製紙大手の王子ホールディングス <3861>を持つ、中国・四国を地盤とする板紙中堅会社だ。同社に魅力を感じた要因の1つが、「古紙の輸出価格が下がっている」ことだ。
岡山製紙は段ボール向け原紙の製造を主力としており、その原材料に古紙を利用している。そのため、古紙の輸出価格下落は国内の古紙調達価格の下落につながり、同社にとっては収益にプラスに働く。それを評価し、保有することにした。いつもながらの「合金流・徹底調査!」で同社株の購入に至っており、その中身はのちほど触れる。
ここで岡山製紙のみを購入したのであれば、これまで紹介してきた合金さんの姿と変わらない。今回がこれまでの投資とは異なる点は、同じ古紙の輸出価格下落を材料にして、ある銘柄を空売りしたことだ。その銘柄とは要興業 <6566>。東京23区内を中心に、一般・産業廃棄物の収集運搬やリサイクル事業などを手掛ける会社だ。
同社を空売りしたのは、岡山製紙とは反対に、古紙の輸出価格の下落が要工業の業績にはマイナスに働くと考えたためだ。同じ材料でも、業績にプラスに寄与する会社があれば、マイナスに寄与する会社もある。気づきは極めてシンプルなものだが、もちろん実際の取引は短絡的に始めたのではない。
繰り返しになるが「そこまでするか!の分析」を実施して、2社の収益基盤や収支構造を丸裸にしてから取引を始めている。その調査の内容とは!?
■岡山製紙<3892>の日足チャート
まず買い側の岡山製紙については、そもそも同社に注目したのは割安銘柄だったからだ。現預金など換金性の高い資産の合計から負債を差し引いた正味資産が、時価総額よりも大きいネットネット株がないか分析しているうちに、岡山製紙が条件に該当することに気づいた。
単に数字が該当するだけでは買えない。分析を進めると「古紙の輸出価格の下落」が国内の古紙流通量をだぶつかせて国内古紙価格の下落を招き、それによって岡山製紙の原材料費圧縮につながる関係が見えてきた。
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