明日の株式相場戦略=米中雪解けか、内需系材料株が本領発揮へ

市況
2020年2月6日 17時53分

きょう(6日)の東京株式市場では日経平均株価が続急騰、一時680円近い上昇で2万4000円大台目前に迫る鮮烈な上げ足をみせた。海外ヘッジファンドの先物買い戻しから裁定買いが流入し、日経平均を一気に押し上げ一時2万3995円まで上昇、気が付けば2万4000円大台にあと“半歩”というところまで迫った。新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大を嫌気して急落した相場は、一体何だったのかと言わせるような切り返し。踏み上げ相場の色彩が極めて強いが、いずれにせよ感染者数の拡大が続き、これからサプライチェーン・リスクが現実化する段階にあって、それを承知とばかりに日経平均は“新型肺炎ショック”で下げた分の全値戻しを果たす格好となっている。

前日の米国株市場でNYダウが480ドルあまりの上昇をみせ3連騰、3営業日合計で1000ドルを超える上げ幅をみせているとあっては、理屈ではなく東京市場もこれについて行くよりないという感じではある。新型肺炎については治療薬やワクチンの開発に関する報道が相次いだことが株価上昇の手掛かりとなったというが、これは現時点で買いの根拠としては弱い。それよりも、感染拡大で命を落とす人もいる一方、今後は自力で治して「退院する人も増加の一途」となるわけで、それが新型コロナウイルスへの恐怖感を希薄化させる、という暗黙のコンセンサスが作用し始めているようにも思える。感染者数のカウンターを回すだけでは見えてこない実態もある。

他方、新型肺炎の問題で一時的に投資家の目が向いていなかった米中貿易摩擦問題だったが、春節明けとともに雪解けの兆しを思わせるような一報が舞い込んだ。中国が来週14日から750億ドル相当の米国製品に対し、現行10%の関税をかけているものは5%に、5%の関税をかけているものについては2.5%に、つまり今課している関税を半分に引き下げることを発表した。これが両国対立の構図を緩める春一番といえるのかどうかは分からないが、少なくともきょうの東京市場には南からの突風が吹きつけたに等しいインパクトがあった。

きょうの個別株のメーンイベントはトヨタ自動車<7203>の後場取引時間中に発表された決算における通期業績予想の上方修正だったが、午後1時25分に発表された直後の時点では株価は強弱観対立の状況で方向感が出ていなかった。それもそのはずで、20年3月期営業利益段階で2兆4000億円予想を2兆5000億円(前期比1.3%増)に増額したとはいっても、事前のコンセンサスは下回っていたからだ。その気迷いムードを一気に払拭したのがその決算のタイミングに相前後して伝わった中国による対米関税引き下げの報道。これが、トヨタの株価を一時8000円台まで押し上げ、昨年来高値更新の原動力となった真の立役者ということになる。ただ、ソニー<6758>が先日の決算で新型肺炎の影響で業績見通しを打ち消す可能性を示唆したが、トヨタも今回、新型肺炎の影響を業績予想には織り込んでいない点で不安定な要素は多い。したがって、明日以降の同社の株価動向は、サプライチェーン・リスクに怯える全体相場のバロメーターとして意味を持つことになる。

きょうは主力株がインデックス買いで水準を切り上げる一方、中小型株はやや影が薄くなりがちな地合いであった。これはマザーズ指数の動きの鈍さをみてもよく分かるが、中小型から大型に資金がシフトするというような解釈は当たっていない。日経平均は先物ショートポジションの解消で急伸したが、これもきょう1日でほぼ完結した感触で、主力銘柄のここからの株価上昇エンジンとしての先物効果はあまり期待できない。引き続き、新型肺炎関連のダメージから離れたポジションにいる中小型株、内需系の5G関連やDX(デジタルトランスフォーメーション)関連銘柄に優位性がある。

そのなか、大和コンピューター<3816>の戻り相場や正興電機製作所<6653>の上値慕いの動きは魅力的だ。このほか、教育ICT関連でテクノホライゾン・ホールディングス<6629>をマーク。更に、低金利環境を追い風に不動産流動化関連のインテリックス<8940>や神戸市内の駅前再開発で商機を確保している和田興産<8931>などにも注目。

日程面では、あすは、朝方取引開始前に12月の家計調査、12月の毎月勤労統計(速報値)が発表される。また、後場取引時間中には12月の景気動向指数(速報値)が開示される。海外では、1月の中国貿易統計、1月の米雇用統計に注目が集まる。このほかでは、12月の米卸売在庫・売上高、12月の米消費者信用残高など。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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