為替週間見通し:ドルは伸び悩みか、パウエルFRB議長の議会証言に注目
【先週の概況】
■ドル・円は一時110円02銭、米国株高でドル買い強まる
先週のドル・円は強含み。新型コロナウイルスの感染拡大を警戒してリスク回避のドル売りが先行したが、新型肺炎の効果的な治療薬が開発されるとの思惑やウイルス感染の早期終息への期待が浮上したことを受けてリスク回避の動きは一服した。中国人民銀行(中央銀行)による大量の流動性供給策も好感されたようだ。米国株式は2月3日から4営業日連続で上昇し、米長期金利は反転したことを受けて、リスク選好的なドル買い・円売りが活発となり、ドル・円は7日のアジア市場で110円02銭まで買われた。
7日のニューヨーク外為市場では、ドル・円は110円00銭まで上昇後、109円53銭まで反落した。この日発表された1月米雇用統計で非農業部門雇用者数は市場予想を上回ったことから、ドル買いが優勢となった。しかし、米連邦準備理事会(FRB)が提出する半期毎の金融政策報告書で「新型肺炎の感染拡大は新たな脅威になる」との見解が示されたことを嫌気して、リスク選好的なドル買い・円売りは一服。世界経済の減速に対する市場の警戒感は再び高まり、米国株式の反落や米長期金利の低下を意識したドル売りも観測された。ドル円は結局、109円77銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:108円32銭-110円02銭。
【今週の見通し】
■ドルは伸び悩みか、パウエルFRB議長の議会証言に注目
今週のドル・円は伸び悩みか。2月11日、12日に予定されているパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言が注目されているが、新型ウイルスの米国経済への影響を考慮し、景気見通しや利上げについて慎重な姿勢を改めて示す可能性がある。中国の新型コロナウイルス感染の早期終息への期待やワクチン開発などを背景に米国株式が再び上昇すれば、リスク選好的な円売りが優勢となりそうだが、今週発表の1月消費者物価指数や1月小売売上高が市場予想を下回った場合、リスク選好的なドル買いは抑制されそうだ。
中国などで新型コロナウイルスの感染被害はなお拡大しており、2020年における中国経済の減速は避けられないとの見方が増えていることもドルの上昇を抑える一因となりそうだ。今後発表される中国や同国と交易関係の深いアジア諸国などの経済指標にその影響が反映された場合、投資家のリスク許容度は低下するとみられる。
【米・1月消費者物価コア指数(CPI)】(13日発表予定)
13日発表の1月消費者物価コア指数(CPI)は前年比+2.2%と、インフレ率は12月実績を下回る可能性がある。市場予想と一致した場合、米政策金利は長期間据え置きとの見方が強まり、ドル買い材料にはなりにくい。
【米・1月小売売上高】(14日発表予定)
14日発表の1月小売売上高は前月比+0.3%と、伸び率は12月と同水準と予想される。市場予想を上回った場合、個人消費の回復が意識され、国内総生産(GDP)の改善も期待できることから、ドル買い材料になるとみられる。
予想レンジ:109円00銭-110円50銭
《FA》
提供:フィスコ