明後日の株式相場戦略=王道を行くか、覇道を行くか
週明け10日の東京株式市場では、日経平均は再びリスク回避ムードのなか下値を探る展開となった。朝方は前週末の米株安を引き継ぐ形となり大幅続落でスタートしたものの、前引けにかけ下げ渋る動きをみせた。しかし、後場は再び売り直された。寄り付きの株価水準は上回って引けたことで陽線とはなったが、ここでの上ヒゲは戻り売りニーズの強さを暗示していたようにも見える。
今週は週末14日にオプションSQ算出を控えており、祝日(建国記念の日)明けの12日水曜日は、きょうの相場同様に先物主導で振られる可能性がありやや警戒モードか。企業決算は予想されていたとはいえ、ここまで苦戦が目立つ内容。マクロも来週明け17日に10~12月の国内GDPが発表されるが、厳しい数字が予想される。新型肺炎 の影響から1~3月のGDPも停滞必至となれば、「弱気筋から景気後退うんぬんという話が再びかまびすしくなることも考えられる」(国内証券ストラテジスト)という声もある。
ただ、個別銘柄の物色意欲は旺盛だ。今は基本的に相場を取り巻く流動性が担保されており金融相場の色彩が濃い。加えて景気後退というようなワードがメディアに踊れば、安倍政権も景気刺激策に何らかのアクションをみせる必要が出てくる。巡り巡って株式市場にはプラスに働くことも考えられ、もし今週深押しする局面に遭遇すれば、またもや踏み上げ相場の下地作りとなる、としたたかに構えておいてよいのではないか。
現在の相場と対峙する際に、考え方としては2つある。まず、王道を行くなら現在の全体相場への下方圧力をイレギュラーと考え、好実態株をバーゲンハントする投資戦略。経済実勢にどれだけマイナス作用を与えるか、現時点で影響の度合いが見えにくい新型肺炎だが、遅かれ早かれ収束に向かうことで、やや時間は要したとしても一過性の要因には違いない。焦りは禁物で、新型肺炎による企業業績や消費への影響が取り沙汰されればされるほど、中央銀行の緩和的政策や財政面からの景気刺激策を促すことにもなる。相場の大勢トレンドが揺るがないことを前提に、ここは内容の伴う株を仕込むチャンスという見方も可能だ。
例えば半導体関連の市況回復への道筋は構造的なサイクルで、中国の新型肺炎の影響で崩されるものではない。この見方から、レーザーテック<6920>の5000円台半ばの踊り場形成は仕込み好機と判断される。市場が急速に立ち上がっているEUV露光装置に対応したマスクブランクス検査装置のオンリーワン企業として、同社の存在感は一段と輝きを増しそうだ。
そして、もう一つは清濁併せのんで覇道を行く手法。新型肺炎の感染拡大が続いている間は、たとえマネーゲーム的な要素が強くても、関連株物色の流れは波状的に続くという見方から需給重視で今の新型肺炎関連相場に積極的に乗っていくというスタンス。この場合は、基本的に回転売買の繰り返しで値幅をとる短期トレード特化の姿勢。理論よりも感性がモノを言うケースは相場では意外と多く、口よりも目が重視される。理屈で攻めても埒(らち)が明かない相場では、資金の流れ入る方向に視点を合わせ、それに乗っていくというのが実践的だ。ただし、リスクの少ないのは相場の若い銘柄であり、物色対象に横の広がりが出てきたら、自分なりに“次の銘柄”を探す努力は必要だ。川本産業<3604>や中京医薬品<4558>のリバウンドも確かに魅力があるが、これは既にストーリーではなく板の状況で判断する銘柄になっている。
検査キット関連などにマーケットの関心が広がりをみせるなか、臨床検査薬で高実績を有するカイノス<4556>などに妙味が感じられる。時価総額は70億円弱で小型株特有の足の軽さがある。また、新型肺炎関連を契機に導入の動きが進むとみられているテレワークではウェブ会議などのクラウド型コミュニケーションサービスを展開するブイキューブ<3681>なども12日の本決算通過後、20年12月期の回復期待で相場に発展する余地がありそうだ。このほか、番外編で北の達人コーポレーション<2930>などもマークしたい。
日程面では、あすの東京市場は建国記念の日で休場となるが、海外ではパウエルFRB議長が米下院金融サービス委員会で議会証言を行う予定。また、米大統領選のニューハンプシャー州予備選が行われる。また、明後日は1月のマネーストック、1月の工作機械受注額が発表。海外では1月の米財政収支が開示される。(中村潤一)