新興市場見通し:ネット・IT系に期待もマザーズ軟調続く、IPOではAHCG上場
先週の新興市場は、新型肺炎の感染拡大への懸念から不安定な相場展開を強いられた。週前半は日経平均の下落とともに新興市場でもリスク回避目的の売りが広がり、マザーズ指数は2月18日に終値ベースの昨年来安値808.62ptを付けた。その後やや持ち直す場面があったものの、週末にかけて再び売りが出て、戻りは限定的となった。なお、週間の騰落率は、日経平均が-1.3%であったのに対して、マザーズ指数は-1.6%、日経ジャスダック平均は-1.4%だった。
個別では、マザーズ時価総額トップのメルカリ<4385>が週間で4.4%高。従前に当欄で述べたとおり、足元で戻り歩調が続いている。今週は外資系証券の投資判断引き上げや初の事業戦略発表会が買い材料となった。フリー<4478>は同20.8%高と急伸し、マザーズ時価総額2位に浮上。新型肺炎の拡大を受けて国税庁が電子申告を推奨し、関連銘柄として関心を集めた面もあるようだ。ただ、Sansan<4443>は同4.1%安と軟調で、新型肺炎の悪影響が懸念された貸会議室のティーケーピー<3479>は同13.9%安となった。売買代金上位ではAiming<3911>が利益確定売りに押され、イオレ<2334>などが週間のマザーズ下落率上位に顔を出した。反面、今期大幅増益見通しのメドレー<4480>などは買われ、やはり好決算のフリークアウトHD<6094>が上昇率トップとなった。ジャスダック主力はワークマン<7564>が同4.0%安、ハーモニック・ドライブ・システムズ<6324>が同7.1%安、セリア<2782>が同5.2%安と全般軟調。外需系、内需系ともに新型肺炎への懸念から売りが出た。また、メディシノバ<4875>やMipox<5381>が週間のジャスダック下落率上位に顔を出した。反面、前の週に続き中京医薬品<4558>、重松製作所<7980>といったウイルス対策関連銘柄が買いを集め、グッドライフカンパニー<2970>が上昇率トップとなった。
今週の新興市場では、マザーズ指数が引き続き軟調な展開となる可能性がある。国内での新型肺炎の感染拡大を受けて日本株の軟調ぶりが目立っており、新興市場銘柄も回復期待は高まりにくいだろう。マザーズ指数は1月以降、度々800pt割れ寸前から持ち直してきたが、一方で戻りも鈍く、日足チャートでは上値を切り下げる格好となっている。マザーズ売買代金は決算発表シーズンを通過して再び減少してきており、積極的な押し目買いが入っている印象は乏しい。
とはいえ、マザーズにはフリーやメドレーといったインターネット・IT系銘柄が多く、新型肺炎の悪影響を受けにくいうえ、ITの利活用が一段と進むとの思惑も出てきやすい。こうした銘柄が買いを集める状況が続きそうだが、市場のリスク回避ムードが一段と強まれば資金の逃げ足も速い点には注意しておきたい。なお、今週は2月28日に大和コンピューター<3816>、はてな<3930>、キタック<4707>などが決算発表を予定している。
IPO関連では、2月25日にAHCグループ<7083>がマザーズへ新規上場する。今年3社目のIPOとなるが、療育支援や障害者就労支援といった福祉事業への期待が高いようだ。また、先週はリバーHD<5690>(3月24日、東証2部)など7社の新規上場が発表され、3月のIPOは25社となっている。単月では2014年12月(28社)以来の社数となる。
《HK》