富田隆弥の【CHART CLUB】 「彼岸底になるか」

市況
2020年3月7日 10時00分

◆娘がレノボ製パソコンを注文したのが2月15日。10日ほどで届くと思っていたようだが、2月末になり「納品予定は3月下旬」とのメールが来て、それ以降は音沙汰なしという。レノボが中国のどこでパソコンを作っているのかは不明だが、この一例を見ても中国における混乱ぶりがうかがえる。ただ、中国の工場の稼働状況やサプライチェーンはいずれ回復するし、その動きが鮮明になれば株式市場も切り返しの動きを鮮明にするのではないか。レノボからのメールの「3月下旬」というのが一つポイントになりそうだ。

◆言うまでもなく、新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済は混乱に陥っている。中国(国家統計局)が2月29日に発表した2月製造業PMIが35.7(1月比-14.3)、非製造業PMIは29.6(同-24.5)と統計開始以来の厳しい落ち込みとなった。株式市場では NYダウが2月28日ザラバに2万4681ドルという安値をつけ、前の週終値から週間で4311ドル安(-14.9%)と過去最大の下げ幅を記録した(終値ベースの下げ幅3583ドルも過去最大)。

◆FRBパウエル議長は18日のFOMCを待たず、3日に0.5%の緊急利下げに動いた。日銀の黒田総裁は2日に「潤沢な資金を供給する」と臨時談話を発表し、その日にETFを1002億円(前回703億円)購入。カナダ中銀も4日に0.5%の利下げに動き、各国は協調緩和姿勢を鮮明にした。欧州も12日のECB理事会で何かしら動くことが想定される。

◆ただし、パウエル議長が「利下げがコロナ感染を減らすわけではない」と発言したように、下落する株式市場に利下げ(金融緩和)が効くかは不明だ。昨年までのトランプ米大統領のツイートで振り回された相場でもない。チャート的には10年以上続けた未曽有のマネーバブル相場に亀裂を入れており、その反動が小さくないことを覚悟せねばならない。相場の底入れは「相場に聞く」しかない状況と言える。世界同時株安が続くと過剰債務や低格付け債などに混乱が生じかねず、そのときには12年前(サブプライム、リーマンショック)と似たような下落にもなりかねない。

NYダウは日々1000ドル規模の乱高下を演じており、4日は終値2万7090ドルまで戻して半値戻し(2万7125ドル)や割り込んだ200日移動平均線(2万7248ドル)に迫った。大きな戻りではあるが、この戻りはチャート上のアヤ戻し(プルバック)であって好転信号ではない。好転の兆しを確認するには少なくとも200日移動平均線や上方から降りてくる25日移動平均線(2万8200ドル近辺)を突破しなければならず、それを確認するまでは依然として下落過程にあるといえる。

日経平均株価は2日に2万834円まで安値を切り下げ、その後は2万1000円台でもみ合う(5日時点)。落ち着きを少し取り戻したものの、まだ安心はできない。日経平均のチャートでは月足を注視している。アベノミクス相場(2012年安値始点)の下値抵抗線(2万1100円処)に差し掛かり、月足一目均衡表の「雲」上限(2万500円処)や60ヵ月移動平均線(2万300円処)に迫った。この2万円処が長期波動の厚い下値の節である。ここを維持するなら先行きの「上昇期待」も抱けるが、もし2万円を割り込むと「大勢基調の崩れ」であり、「さらなる調整」を覚悟せねばならない。

◆米国10年債利回りが1%割れと過去最低を更新、為替(ドル円)は106円台前半に急落するなどマーケットは「リスク回避」の動きを強めており、NYダウ、日経平均ともまだ安心はできない。3月には「彼岸底」という格言があり、どこで底打ちするかをもう少し様子見姿勢で見極めたい。

(3月5日 記、毎週土曜日に更新)

情報提供:富田隆弥のチャートクラブ

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