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米国株
2020年3月5日 10時30分
市況

武者陵司 「新型コロナウイルスと米国株高シリーズ(3)」<前編>

―強権中国が新型コロナウイルス戦争に勝利するという皮肉―

新型コロナウイルス感染の連鎖が、中国全体主義の終わりの始まりとなる可能性はある。新型コロナウイルスの発生と初動において、中国の全体主義が大きな責任を負っていることは明らかである。だが、短気は禁物、むしろコロナウイルス問題は習近平政権の強権を強める方向に働き、その新型コロナウイルス撲滅は習政権の基盤を一時的に強化する可能性がある。

先週(2月最終週)、コロナウイルス問題は3つの新展開を見せた。(1)韓国、イタリア、イランで感染者急拡大、(2)米国株式急落(一週間でNYダウは-12%と史上最高速度の下落、2月12日の史上最高値比では-14%。新型コロナウイルスの世界的パンデミック化の可能性が高まり、市場は最悪事態を織り込み始めた形)、(3)中国での感染者数のピークアウト、である。世界は中国以外の国での蔓延拡大に恐怖しているが、中国での改善に希望を見出すかもしれない。

中国強権体制の対新型コロナウイルス戦争における有効性は疑いない。中国はコロナウイルス撲滅戦争での、中国システムの優位性を誇示するだろう。世界は中国の新型コロナウイルス撲滅を歓迎するだろう。中国をコアとするグローバルサプライチェーンは一旦は再構築されるだろう。中国での感染ピークアウトが確かとなれば、最悪を一旦織り込んだ世界金融市場は落ち着きを取り戻すだろう。

【1】 希望は中国、恐怖は韓国、イラン、イタリア、日本などという皮肉

●中国でピークアウトした新型コロナウイルス感染

WHO(世界保健機関)は2月28日、新型コロナウイルスに関するリスクアセスメント「世界蔓延pandemic(※)のリスクは非常に高いが、まだ最悪を回避できる可能性もある」を発表した。

(※)pandemic: 全ての世界市民が一定期間感染する可能性がある状態

要点は、(1)まだ数名以上の感染者報告国は23カ国(感染者確認国は51カ国)にとどまっている、(2)欧州・中東地域では初感染者発生のイタリアから14カ国へ、イランから11カ国へと概ね感染経路やクラスターが追跡できている、(3)中国では新規感染者数は329人(2月27日)とピークの8割減となり、非中国新規感染者数の半分となっている。(3月1日付 Financial Times)

しかも「湖北省を除けば、中国に31ある省・自治区・直轄市の約9割は新規感染者が連日0~1人にとどまる」(3月1日付 日本経済新聞)。この中国の公表データに信頼性はないとの見方があり、そうかもしれない。しかし、虚偽のデータにより事態が深刻化すれば、中国習近平政権にとって命取りとなる。総力戦によって武漢で起きた爆発的感染連鎖は回避され、かつ中国国内に限ってみれば、事態は沈静化に向かっていくと考えていいのではないか。

中国は民主主義国では見られない強権とテクノロジーを活用した監視制度によって、人々の行動に絶大な支配力を持っており、その効果が如実に表れているとみられる。コロナウイルスの蔓延を契機に、ネット監視を一段と強めている。この中国での感染封印の進展は、世界の希望になっている。中国は新型コロナ感染の圧倒的症例情報と有効な封印対策事例を持っており、対新型コロナウイルス戦争では最前線に立っている。

●中国の景気対策総力戦

中国の2月製造業PMI(国家統計局による)は35.7(前月比-14.3)とリーマンショック時(2008年11月)の38.8を下回る過去最低となった。また、2月の自動車販売(1~23日まで)は前年比9割減ペース(1~2月平均では前年比4割減ペース)である。しかし、これらは春節以降の非常事態の下での悪化で、驚きはない。感染者数が減少し続ければ、4~6月の生産急回復が展望できる。習近平政権はあらゆる手段を投入してそれを実現しようとし、全世界はそれに期待をかけている。ブルームバーグは2月29日付けで「中国の工場の稼働率はこの数週間で回復しつつあり、ブルームバーグ・エコノミクスの推定によると今週は60-70%の見込み。国家統計局の29日の発表資料によると、25日時点でPMI調査の中・大規模企業の業務再開率は78.9%で、3月末までに90.8%へ上昇する見込み。中・大規模メーカーは25日時点で85.6%、3月末には94.7%になるとした」と報じている。

中国をハブとするグローバルサプライチェーンが再構築される公算は大きい。加えての景気対策。財政赤字対GDP比は6.1%と急速に悪化しているが、政府債務残高は対GDP比55.6%と主要国の中では最低水準であり、さらなる発動の余地は十分にある(いずれもIMF2019年10月推計値)

金融面では現代ビジネスでのマネックス証券大槻奈那氏のコメントが参考になる。「中国は総力戦で支援策に取り組んでいる」「2月に入ってからの20日間で、中国人民銀行は早急で、かつ巨額の金融緩和策を取ってきた」「また、これらに呼応して、民間の金融機関も相次いで、融資や、支援のための社債発行を行い、企業の金融支援を行っている」「2月11日、中国の国営テレビで現在の緊急融資の様子が報じられた。そこで報じられた新規融資実行までの所要時間はわずか2時間だった」(マネックス証券大槻奈々氏 現代ビジネス2020年2月28日より) 。

このように見てくると中国の強権発動が感染を遮断し、経済の後退を短期で抑制できる可能性が高いように思われる。

●危機管理能力を誇示

中国の危機管理能力の高さを誇示する動きも見られ始めた。山東省威海市は日本、韓国からの入国者に対して14日間のホテル滞在を義務付け(2月26日)と報じられている。中国は感染拡大が止まらない日本、韓国などからの入国制限を示唆している。

<後編>へ続く

株探ニュース

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