明日の株式相場戦略=ハイボラ相場といかにして戦うか

市況
2020年3月10日 17時27分

きょう(10日)の東京株式市場は日経平均が朝方に1万8800円台まで売り込まれたが、その後下げ渋り、後場は典型的なアルゴリズム売買による速射砲的な買いで漸次水準を切り上げる展開をみせた。日経平均は一時2万円大台にあと一歩と迫る271円高の1万9970円まで上昇する場面があった。

大蛇がのたうつようなボラティリティの高い相場が眼前で繰り広げられている。騰落レシオなどの投資指標は行き過ぎたイレギュラーゾーンにあり、売り方の本音を推察すれば目先買い戻しを入れたいタイミングにあったと思われる。目先のターニングポイントは、きょう日経平均が800円あまり下値に突っ込んだ午前9時40分頃だったが、その後の切り返しは目を見張るものがあった。

前日の米国株市場でNYダウが2000ドル強の下げとなり、下落幅が過去最大であることはもとより下落率でもリーマン・ショック時と並んだ(7.8%安)。また、“2000ドル安”のインパクトから米国だけに目が行きがちだが、前日の欧米株市場では11%を超える下げとなったイタリアをはじめ、8.4%安のフランス、7.9%安のドイツと、実は軒並み米国を上回る暴落に遭遇していた。これに加えて前日のWTI原油先物が一時1バレル30ドル台を割り込む大暴落とあってはどうしようもない。これを受け、東京株式市場でも寄り付き時点では悲観ムードの極致にあったことはいうまでもない。

実際、取引が始まると外国人の五月雨的な保有株の売却にヘッジファンドによる先物の売り仕掛けがのしかかり、これに個人の信用の追い証に絡む投げが加わって1万9000円台を一気に割り込む怒涛の下げを演出。これは打つ手なしと呆然としたところが、売り人気の頂点だったということになる。

新型コロナで嫌というほど下値を試した後だけに、政府や中央銀行など当局サイドからは株式市場にポジティブなアナウンスは事欠かない状況にあり、売り方が買い戻せば、自然と後から説明材料がついてくるのが現在の相場環境だ。きょうは、トランプ米大統領が給与税の減税などを検討していることが伝わり、アルゴリズムのスイッチを買いの方向で押したほか、安倍首相の経済対策を示唆する発言も効力を発揮した。これに外国為替市場も味方している。一時1ドル=105円近辺まで急激に円安が進む局面となり、行き過ぎたリスクオフの巻き戻しを加速させた。

しかし、これはリスク回避相場の踊り場に過ぎず、トレンドの上昇転換に結びつく戻りではない。仮に2万円大台を回復しても、日足チャートを見れば分かるようにそれは自律反発の領域にとどまる。1番底を確認したとは到底思えない。今晩の米国株が戻りに転じたとして、明日もドル円相場と米株価指数先物を横目に不安定な地合いが続きそうだ。

もっとも、スケジュール的にはここから売り方が動きにくい時間軸に移行していく。今週12日にECB理事会、来週17~18日にFOMC、18~19日には日銀金融政策決定会合を控える。金融政策が新型コロナに効かないのは確かだが、それでも日米欧協調緩和への道筋を上記スケジュールで辿るなか、売り方の立場では仕掛けを封印するだろう。

こういう波乱の地合いにおいての個別株戦略はヒット&アウェイが基本。暴落相場のさなかにあってチャートの崩れていない強い銘柄としてマークしたいのはアマゾン関連のファイズホールディングス<9325>だが、下に振られる時も値幅は大きいため押し目買いを念頭に置きたい。このほか、75日移動平均線近辺でバランスを立て直しつつある人工知能(AI)関連の雄、ニューテック<6734>。またゲーム関連では引き続きAiming<3911>や、イグニス<3689>あたりに注目。このほか、落ちてくるナイフではあるが、地面が近いと思えるのが1000円台を割り込んだフィックスターズ<3687>。リアル量子コンピューター関連として潜在的な人気素地は十分で敢えてマークしておきたい。

日程面では、あすは1月の特定サービス産業動態統計速報が後場取引時間中に経済産業省から発表される。IPOではコンピューターマネージメント<4491>がジャスダック市場に上場する。海外では、2月の米消費者物価指数、2月の米財政収支が発表される。このほか米10年物国債の入札も予定されている。(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2020年03月10日 17時50分

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