緊急事態「2万円割れ」 “底値”か“通過点”か、新型コロナ暴落の正体 <株探トップ特集>

特集
2020年3月9日 19時30分

―世界同時株安・リスクオフ相場の行き着く先は? 市場関係者にも意見の相違目立つ―

週明け9日の東京市場は、これまでとは異質ともいえる一段と強烈な売り圧力に晒される格好となった。日経平均株価はフシ目の2万円大台を大きく割り込み、一時1200円を超える大暴落。引け際ショートカバーが入り、日経平均の終値はやや下げ渋り1050円安の1万9698円で着地した。ちなみに2万円割れは19年1月7日のザラ場以来約1年2ヵ月ぶりとなる。

●99%の銘柄が下落する異常な相場

個別株も東証1部の値下がり銘柄数が2138に達し、全体の99%が下落するという文字通りの全面安商状。値下がり銘柄数としては過去最多となった。売り主体は外国人投資家だが、とにかく保有株は片っ端から吐き出すという状況で下値リスクがいかに強く意識されているかを物語っている。東証1部ばかりではない。新興市場など小型株への売りも容赦がなく、マザーズ指数は一時10%を超える下落率で日経平均のそれを大きく上回った。

前週末は欧米株市場が大きく下値を探る展開を強いられたのと同時に、WTI原油先物価格がOPECとロシアの交渉決裂を受け一気に4ドル60セントあまりの暴落に見舞われた。更にドル・円相場がリスクオフの円買いで急速な円高が進行する状況にあっては、株式市場もこれらをネガティブ材料として大きく下値を試さざるを得ない状況となった。

いうまでもなく、今の世界同時株安は 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う世界経済への大幅なダメージを織り込みに行く動きと定義づけることができる。しかし厄介なことに、現時点ではこのコロナウイルスの感染が世界的に収束に向かう動きが見えていない。つまり、企業ファンダメンタルズに対し、どの程度のマイナス影響がどのくらいの期間続くのかが分からない。これが、ここにきて半ばパニック的な売りを誘発する背景となっている。

●真っ二つに分かれる市場関係者の見解

第一線で活躍する市場関係者の意見も大きく2つに割れている。日経平均が前週末の570円あまりの下げに続き、きょうは一時1200円を超える暴落となったことで、目先テクニカル的にはリバウンドが意識される局面にある。事実、朝方から信用取引の投げが出る一方で、キャッシュポジションを高めていた現物株特化の個人投資家が一斉に買い向かう動きが観測されている。東洋証券ストラテジストの大塚竜太氏は「ひとことで言えば先物が暴走している。(今の下げは)ファンダメンタルズに基づいている動きとはいえない。10日には政府のコロナ対策第2弾に向けたアクションも出てくるはず。今後は金融と財政の両輪が動き出すことが予想され、ここは買い向かって正解であると思う」としている。

また、株式評論家の植木靖男氏は「日経平均は18年12月のクリスマス暴落で1万9155円の安値をつけているが、今回のリスクオフ相場でこの水準を下に抜けずに耐えられるかどうかがポイントなる」としている。「ここを割り込んだら、更に下げが加速する懸念もないとはいえない」としながらも、「日銀のETF買いの買いコストも上昇しており、日経平均が1万9000円を下回ってコスト割れとなることは、政策的にも許されない。逆に言えば政府と日銀が一体となってこれを何としても阻止するような対策を打ち出すのではないか。個人的には1万9000円割れはないとみている」という意見を述べている。

しかし一方で、今回の危機はそう簡単に収まる話ではないと指摘する声も少なくない。その一人である松井証券シニアマーケットアナリストの窪田朋一郎氏は「今はまだセリングクライマックスとはいえないと思う」としたうえで、その理由として「原油価格の暴落に伴う信用収縮が深刻。オイルマネーの日本株売りや米国のシェールオイル関連企業のデフォルトによる経済へのダメージは看過できない。また、米国の新型コロナ感染者数が既に日本を上回ってきたことで認識が変わり、悲観ムードの高まりが米国株の動向に反映されそうだ」としている。また、今は信用の投げが出ているにも関わらず、個人マネーは全体で買い越している状況にある。「個人が外国人売りの受け皿となっているが、外国人の売りはそう簡単には切れない。今買っている個人投資家が投げざるを得ない局面になった時が怖い」(同)という見解を示している。

●頼みの米国の足もと揺らぐ、円高進行も逆風に

頼みの米国株はどうか。米国経済に詳しい第一生命経済研究所主任エコノミスト桂畑誠治氏は「世界株の動向は米国株に委ねられている部分もある。しかし、米国では新型コロナの感染者数が現在進行形で拡大するなか、先行き不透明感を払拭できるすべはない。ここにきて4~6月期に米GDPがマイナス成長に転じる可能性が言われるようになっており、株式市場も上値を追える状況ではない」としており、米国もまた厳しい状況に陥っていることを伝えている。

今は為替の動向が全体相場に大きな影響を与えていることも確かだ。これは足もとの日本株にとって米国株の動き以上にセンシティブな材料といえる。きょうの全体急落相場では、ドル・円が一時1ドル=101円台に入る急激な円高となったことで、市場心理を大きく悪化させた背景がある。

これについて、外為オンラインのシニアアナリスト佐藤正和氏は「(きょうの急激な円高は)新型コロナの影響に加え、原油の急落も効いた面が大きい。FRBは更に大幅な追加利下げを行う可能性があるが、新型コロナの実体経済に与える影響について金融政策による効果は限定的だろう。当面の焦点は1ドル=100円を維持できるかだが、ここを割ると円高のメドは見えにくくなる」としている。そして、経済対策として「日本政府は消費税を5%に戻すぐらいの対策が必要」とも指摘している。

●政府の次の一手にマーケットの視線集中

確かに8%から10%への消費増税の影響が日本経済の重い足かせとなったことは事実で、安倍政権がここに手をつければマーケットに対するポジティブインパクトは大きそうだ。ただし、何はともあれ今は新型コロナウイルスの感染拡大に終止符を打つことが先決。政府が全精力を傾けるべき課題はコロナ対策である。安倍政権では新型コロナウイルス感染症への政府対応について行政文書の管理指針に基づく「歴史的緊急事態」とする方針を表明している。政府の本気が伝われば、マーケットの動きもおのずと変わってくる。いずれにせよ、2万円大台割れで今回の危機を完全に織り込んだとの見方は甘いようだ。当面は株式市場も為替市場もハイボラティリティな値動きで、投資家もこれに振り回されることは覚悟せざるを得ない状況にある。

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