明日の株式相場戦略=クライマックスにはゆっくり買い向かえ

市況
2020年3月12日 17時27分

きょう(12日)の東京株式市場では、日経平均が一時1000円を超える下落となり1万8300円台まで水準を切り下げる場面があった。後場はショートカバーが入り下げ渋ったものの、リスクオフ一色の様相は変わらず、結局前日終値を856円下回る1万8559円で着地した。東証1部全体の98%の銘柄が下落する極めて売り圧力の強い展開。絡みつくものすべてを弾き飛ばす、千尋の谷底に丸太を突き転がすがごとき苛烈な下げが続く。

11日にWHOが新型コロナウイルスについてパンデミックに相当すると表明したことが市場のセンチメントを一段と弱気方向に傾けた。これを受けて、きょうのトランプ米大統領のテレビ演説に耳目が集まったが、踏み込んだ経済対策への言及はなく、出てきた言葉は「欧州からの渡航者を30日間制限する」というもの。これでは、経済の歯車を止め一段と景気を悪化させるだけとマーケットは判断し、売りに拍車がかかる形となった。

東京市場における攻守の構図ははっきりしている。運用リスクをとることを放棄したような外国人の投げ売りに対し、向かっているのはGPIFと思われる公的資金や1回当たりの買い入れを1000億円まで増額した日銀のETF買い。更に逆張り指向の個人投資家もここぞと買いを入れているものの、全体指数の動きをみれば瞭然、崩れ落ちる株価を支えることができない。

新型コロナウイルスの感染拡大が一気に加速しており、買いに回っている側のリスクに対する認識が追い付いていないような状況だ。経済全般への影響が次々と露呈しているが、ここにきて恐れられているのは経済活動が止まることによるデフォルト・リスクだ。新型コロナを終息させるために、移動制限など人の動きを止めることが最優先とされるが、これが企業業績を悪化させるだけでなく、企業の資金繰りに対する懸念に及びつつある。日米を問わず大手金融株のここにきての下げ足は、金利低下圧力に呼応しただけではなく、債務不履行による収益ダメージを懸念するムードが漂う。

国内ネット証券大手のデータによると個人投資家の信用評価損益率は11日現在、全体でマイナス25.0%、マザーズ市場に限ればマイナス38.5%に達した。東日本大震災直後と並ぶ低水準となっているが、これには続きがあって、「リーマンショック時に(信用評価損益率は)全体でマイナス40%、マザーズでマイナス50%まで落ち込んだことがある」(同証券)という。これは新型コロナショックがリーマン並み、もしくはそれ以上だとすれば、今が大底圏とみるにはまだ早いということにもなる。世界的な感染者数の拡大が続いている間は、慎重姿勢を維持して、値惚れ買いは避けるべきだ。一方、東証1部の騰落レシオは49.6%と50%を下回った。これを陰の極と呼ばずして何と呼ぶか、というような状況に遭遇しているが、ここは短期のリバウンドを狙うにとどめ、深入りは避けるべきだ。セリングクライマックスをピンポイントで捉えることは至難の業。クライマックスにはゆっくり買い向かうのが鉄則。今は焦らず、待機資金8割をメドに確保しておくことを勧めたい。

暗闇の中でも光明が見えないわけではない。直近、英イングランド銀行が緊急利下げを発表した。きょうは安倍首相と黒田日銀総裁の会談が行われ、その後の記者会見で黒田総裁は、潤沢な資金供給及び資産買い入れに前向きに取り組む姿勢を明示している。日本時間今晩10時前に予定されるECB理事会の結果とその後のラガルドECB総裁の記者会見がまず注目されるが、来週はFOMCと日銀の金融政策決定会合を控えており、日米欧の協調緩和は、近視眼的にはコロナウイルス対策にならないとしても、その薬効はいずれ顕在化する。

日程面では、あすは株価指数先物・オプション3月物のSQ算出。1月の第3次産業活動指数。IPOは3件。木村工機<6231>が東証2部に、フォースタートアップス<7089>とリグア<7090>がマザーズ市場に新規上場する。海外では2月の米輸出入物価指数、3月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・速報値)が発表される見通し。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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