馬渕治好氏【再び1万7000円割れ、相場復活の日はいつか】(1) <相場観特集>

特集
2020年3月16日 18時30分

―協調緩和の流れのなか、揺れまくるドル・円相場も注視―

週明け16日の東京市場は、日経平均株価が前日終値を挟んでの不安定な展開を強いられていたが、後場に入り大きく荒れた。前週末の米国株急反騰に加え、FRBの緊急利下げ発表、日銀のETF買い入れ枠増額とポジティブ材料が続いたが、それでも全般相場は戻り足をみせず、一時1万7000円台を割り込んだ。日米の金融政策などを背景に為替動向にも影響が出そうだ。今回は、株式市場の見通しと為替相場の見通しについて、それぞれ業界第一線で活躍する識者に意見を聞いた。

●「波乱相場続くもアク抜けが近い」

馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)

東京株式市場は足もと1万7000円近辺で波乱含みの動きとなっている。結論を先にすれば、日経平均は依然として1万6000円台半ばまでの下振れ余地はあると思われるが、売られ過ぎの反動からリバウンドも期待できる局面であり、向こう1ヵ月でみれば1万9000円台回復から場合によっては2万円近くまでの戻りがあって不思議はない。

カギを握る米国株については、これまで割高水準に買われていたが、直近の大幅調整を経てNYダウの2万3000ドル近辺はほぼ適正水準に入っている。ただ、新型コロナウイルスの影響から今の段階で下値リスクは拭えず、いったん2万1000ドル台まで下押すことも考えられる。

ここにきて、各国中央銀行が矢継ぎ早に緩和的金融政策を打ち出している。きょうは、日本時間朝方にFRBがFOMCを待たずして緊急利下げを発表、資産買い入れによる実質量的緩和も発表したが、これに歩調を合わせて日銀も18~19日の会合を前倒しで行い、ETFの買い入れ枠拡大や、企業のコマーシャルペーパーと社債の購入を間接的に日銀が引き受けるという形での資金供給によって、信用不安を封じ込める構えを示した。こうした一連の動きは、世界の中央銀行が慌てているという印象を与え、事実投資家の疑心暗鬼を誘いきょうの米株価指数先物の下落などに反映されたが、マーケットが一番心配している中小をはじめとした企業の資金繰りをピンポイントで支えていく、という姿勢で合致している点は評価できる。あれだけ財政出動に難色を示していたドイツでさえ、企業に無利子で資金を貸し出すという政策を打ち出している。

足もとは経済全般に対する悲観ムードは強いが、日本では“自粛疲れ”ともいうべき消費熱の回復が垣間見られる。購買需要そのものがなくなるということではなく、ものによって品不足となるケースや、レジャーもゲーム・動画配信などの巣ごもり消費に加え、一部地域では旅行需要も再燃している。企業業績は1~3月が最悪期となる可能性があり、この期間の数字が明らかとなる5月の半ばごろまでには、全体相場も次の四半期を見据えて上値を追える局面に移行するのではないかとみている。

(聞き手・中村潤一)

<プロフィール>(まぶち・はるよし)

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「投資の鉄人」(共著、日本経済新聞出版社)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。

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