明日の株式相場戦略=“マスク関連リターンズ”で新たな波動
きょう(26日)の東京株式市場は前日とは打って変わってリスク回避の流れとなり、日経平均株価は急反落となった。引き続きAIによるアルゴリズム売買が全体を振り回す相場が続いている。後場は日銀のETF買い観測から日経平均はいったん下げ渋ったものの、戻りは限定的で引けにかけ売り直される展開を余儀なくされた。一時1000円を超える下げをみせ、大引けは882円安の1万8664円で着地した。
周知の通り日銀は3月に入ってからETFの購入枠を大幅に増額している。2月は1回当たり703億円で計8回買い入れていたが、3月に入るとこれを1002億円に拡大し13日までに計6回発動した。更に3月16日に前倒しで開催した緊急の金融政策会合で、ETFの買い入れ枠を従来の年6兆円から12兆円に倍増させることを発表、17日には1回の金額を1204億円に増やしたが、19日にはこれを一気に2004億円まで引き上げ市場関係者の驚きを誘った。週明け23日にも2004億円の買い入れを行っている。まさにバズーカ砲の乱れ打ちだが、その甲斐あって今週は海外ヘッジファンドのショートカバーを誘発、アルゴリズム売買ならではの微塵の躊躇も感じられない一方通行の買い戻しを足場として、全体相場は3営業日で3000円近い強烈なリバウンドを演じた。これが前日までのストーリーだ。
しかし、きょうは全体相場のムードが一変した。東京五輪の延期が決まった矢先の新型コロナ感染者数の急増。穿った見方をすればある程度予想された流れではあったが、小池百合子都知事が25日夜、緊急記者会見を開き感染爆発の危機感をあらわに外出自粛を要請したことで、再びアルゴ売りのスイッチが入った。この先物を絡めた海外筋の売り圧力はかなり強力だ。本稿執筆時点は不明だが、日銀がきょうもETF砲を轟かせた可能性は高く、後場取引開始後に日経平均は下げ渋り、一時は1万9000円台に瞬間タッチする場面もあった。しかし、その後は戻り切れず再び1万8000円台後半に押し戻された。2000億円の巨大な受け皿をもってしてこの水準まで押し込まれたとすれば、それは新型コロナウイルス同様、今のマーケットが楽観できない局面にあることを示唆している。
個別戦略も企業収益の見通しがつきにくい現状にあって、「好実態株の押し目買い」という王道セオリーが主張しづらくなっている。好業績にもかかわらず全体相場に流されて過剰に売られ過ぎた株が狙い目、と口でいうのは簡単だが、当該株が新型コロナウイルスの影響下で果たして本当に好業績なのかという疑念が生まれれば、投資家として二の足を踏むのは当然だ。
自然と短期売買で動きのよいものに乗るという路線に資金は流れやすくなる。きょうは、コロナ・ショックの初期段階で人気化したマスク や消毒液関連株が一斉高に買われた。川本産業<3604>、中京医薬品<4558>、マナック<4364>、重松製作所<7980>、興研<7963>、大木ヘルスケアホールディングス<3417>、昭和化学工業<4990>などストップ高銘柄のオンパレードとなった。この物色人気に持続性があるかどうかは外部環境にもよるが、総じて休養十分のチャートを形成しており、全体相場が新型コロナの恐怖に立ちすくんでいる間は、逆に短期資金が集結しやすいというシナリオが想定できる。
また、テレワーク周辺株も“マスク関連リターンズ”の相場展開となれば、同じ土俵で株価が刺激されやすい。きょうはブイキューブ<3681>が一時ストップ高に買われたほか、fonfun<2323>やリアルワールド<3691>などにも人気が波及した。更に、オンライン医療 やオンライン教育関連株にも物色資金が広がっている。オンライン医療では「ポケットドクター」を運営するMRT<6034>が戻り相場入りの兆し。また、オンライン教育ではeラーニングシステム「SLAP」を展開するアイスタディ<2345>が一時値幅制限いっぱいに買われた。その後大きく伸び悩んだが、株価位置を考慮すると、きょうの上ヒゲは今後に期待を残す旗印となりそうだ。このほか、教育ICT関連の中軸銘柄で静かに水準を切り上げてきたチエル<3933>などもマークしておきたい。
日程面では、あすは3月期末の権利付き最終日となる。3月都区部CPIが総務省から朝方取引開始前に発表されるほか、3カ月物国庫短期証券の入札も予定される。海外では2月の米個人所得・個人支出、3月の米消費者態度指数(ミシガン大学調査・確報値)が注目される。1~2月の中国工業企業利益も発表される。
(中村潤一)