新型コロナ禍を好機に変える、リターン・リバーサル戦略で浮かぶ株 <株探トップ特集>

特集
2020年3月26日 19時30分

―下落率の大きい銘柄を拾って水準訂正を待つ、波乱相場を乗り切る逆張り作戦とは―

新型コロナウイルスによる感染症(新型肺炎)の拡大を受けて大きく落ち込んだ株式市場だが、ここにきてやや落ち着きを取り戻してきたかのように見える。もちろん、新型肺炎の感染者数は現在も増加の一途をたどっており、3月25日には東京都の感染者数が新たに41人増加し、3日連続で過去最多を更新したことが発表された。小池百合子知事は都民に今週末の「不要不急の外出」を自粛するよう要請しており、感染拡大に警戒感を強めている。

ただ株式市場では、 日経平均株価が前日比781円安と大幅に下落した2月25日以降続いていた下値模索の動きに一巡感も感じられるようになった。日経平均は2月下旬から下落に転じ、3月に入り下げが加速していたが、19日の終値1万6552円から25日には1万9546円まで3営業日で18%上昇した。

●米国では過去最大規模の経済対策

この間、米国では3月6日に新型肺炎対策費83億ドルを盛り込んだ予算が成立、13日には国家非常事態が宣言された。米連邦準備理事会(FRB)も15日の緊急利下げ以降、立て続けに資金供給策を拡大しており、ゼロ金利政策と量的緩和を再開。また、日米欧6中銀は協調し、ドルの流動性供給拡充を発表した。

米国では更に、トランプ政権と与野党の議会指導部が25日、2兆ドル(約220兆円)規模の景気刺激策で最終合意した。これは米GDP(21兆ドル)の約1割に相当し、2008年の金融危機後の経済対策(7000億ドル規模)を大きく上回り単独の経済対策としては過去最大規模になる。FRBによる量的緩和と合わせ、信用不安への警戒は大きく後退している。

国内でも、2月13日に打ち出した約153億円の緊急対応策第1弾に続き、政府は3月10日に第2弾として約4300億円の財政措置を打ち出した。4月には過去最大規模の緊急経済対策がまとめられる見通しで、これらが株式市場のセンチメントを好転させている。

●リターン・リバーサルに注目

新型肺炎は現在進行形で、世界中で感染者数を拡大させており、収束にはまだ時間がかかるとみられている。そのため、株式市場が本格的に落ち着きを取り戻すのにもまだ時間を要するだろうが、いずれは回復する。08年9月のリーマン・ショック時にも、震源地である米国の8月末のNYダウは1万1500ドル台で、09年3月には6500ドル台まで下落したが、1年後の10年4月には1万1000ドル台に戻した。今回は、対応の早さや対策の規模の大きさなどから、本格回復に至る時間の短期化が期待されている。

こうしたなか注目したいのは、直近までの下落率が大きかった銘柄の戻りである、いわゆる「リターン・リバーサル」だ。日経平均株価は、直近高値となった2月20日終値2万3479円から3月19日終値1万6552円まで3割弱下落したが、これよりも大きく下げている銘柄も多く、これらは戻り相場の先導役となる可能性が高い。

日経平均が上昇に転じた23日から25日の上昇率をみると、東証1部で下落率1位のコシダカホールディングス <2157> こそ上昇率25%と日経平均の18%と大きな違いはないが、2位のUTグループ <2146> は59%と6割近く上昇。3位のIBJ <6071> は37%、4位のアウトソーシング <2427> は42%と日経平均の上昇率を大きく上回る。下落率が大きいだけに戻り率も期待が持てるが、なかでもより業績下振れ懸念が少ないものに注目したい。

●ラクーンHDやTKPなどに注目

前述のアウトソーシングは、下落率が62%に達し、PBR1割を割り込む水準に売られている。20年12月期は、国内製造派遣事業の成長計画を抑制しつつ、営業利益210億円(前期比35.5%増)と大幅増益を見込む。中期経営計画で24年12月期に営業利益650億円を目指していることにも注目したい。

ラクーンホールディングス <3031> は、3月5日に第3四半期累計(19年5月~20年1月)連結決算を発表し、営業利益5億2700万円(前年同期比33.8%増)と大幅増益となったが、全般安に加えて目先の材料出尽くし感もあり、60%近く下落した。ただ、足もとで「スーパーデリバリー」の新規会員小売店舗数が増加。新型肺炎の感染拡大で海外流通額が増加しているほか、売掛保証サービスへの関心も高まっており、20年4月期営業利益予想6億7000万円(前期比22.1%増)は上振れの可能性もある。

Hamee <3134> も全般安に連れ59%下落したが、足もとのコマース事業、プラットフォーム事業の上振れから3月11日には20年4月期連結営業利益予想を12億6900万円から14億2700万円(前期比22.7%増)に上方修正した点は注目余地が大きい。24日には27万株、2億円を上限とする自社株買いを発表しており、株価の下支え効果も期待できる。

ルネサスエレクトロニクス <6723> は58%の下落となった。19年12月期は連結営業利益が68億4500万円(前の期比90.0%減)と大幅減益となったが、足もとは5Gやデータセンター向けが堅調で稼働率も改善しつつある。2月25日には2000万株、100億円を上限とする自社株買い(取得期間20年3月26日~21年3月25日)を発表している点も注目したい。

ライクキッズ <6065> は、3月9日に発表した第3四半期累計(19年5月~20年1月)連結決算で、営業利益が4億7900万円(前年同期比44.5%減)と大幅減益となったことも加わり56%の下落となったが、悪材料出尽くし感も台頭している。小中・高校などの一斉休校時にも保育所などは原則開所しており、業績へのネガティブ要因が少ないことも注目したい。

新興市場では、global bridge HOLDINGS <6557> [東証M]が66%下落したが、ライクキッズ同様に保育所を運営し、特に認可保育所に特化していることから、業績へのネガティブ影響が少ない。19年12月上場で株式市場における知名度はやや劣るものの、20年12月期は既存施設の稼働向上から営業利益2000万円と黒字転換を見込んでいる点などは見直し余地が大きい。

また、ティーケーピー <3479> [東証M]は、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うイベントの中止や延期などが懸念され70%強の下落率となった。3月6日には20年2月期の連結業績見込みを営業利益で76億700万円から57億7000万円(前期比34.5%増)に下方修正し、今期も厳しい見通しとなりそうだ。ただ、子会社日本リージャスホールディングスのシェアオフィスやレンタルオフィスがテレワーク向けに問い合わせが急増している点には注目。株価は25日まで3日連続ストップ高したが、戻り余地はまだ大きい。

■2月20日から3月19日までの東証1部株価下落率ランキング■

銘柄名       下落率

コシダカHD <2157>    -77.8

UT <2146>        -67.5

IBJ <6071>       -66.0

アウトソシン <2427>    -61.8

シンクロ <3963>      -61.8

ヒトコムHD <4433>    -61.1

東祥 <8920>        -60.5

IHI <7013>       -60.1

ラクーンHD <3031>    -59.7

フルキャスト <4848>    -59.5

単位:パーセント(%)

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