明日の株式相場戦略=非常事態宣言の先を見据える

市況
2020年3月31日 17時49分

「気迷い」という言葉が今の相場には当てはまる。マーケット全般を俯瞰すると、個別には新型コロナウイルスの感染から身を守るマスク及びアルコール除菌関連、あるいは在宅勤務の推進でテレワーク関連や、巣ごもり消費でゲーム関連などの一角に勢いよく投資マネーが流れ込んでいるように見える。しかしこれは局地的な活況であって日経平均株価の大勢トレンドについては上に向かうようなイメージが湧かない。株価はどれもみな一様に底値圏からの出直り初動で食指の動くチャートを形成してはいるが、経済実勢を考えると何とも手を出しにくい。そんな局面だ。

名実ともに3月期末を迎える31日の東京株式市場は日経平均が前日の米株高に勇気づけられ朝方は上昇したものの、買い続かず後場に入ると下値を試す展開に変わった。その後は持ち直す場面もあったが引けにかけ軟化し、結局日経平均の終値は前日比167円安の1万8917円で着地した。期末評価を意識した1万9000円の大台攻防というよりは1万9000円近辺で力なく浮遊するという印象のほうが強い。きょうはTOPIXが前引けプラスだったにも関わらず、日銀のETF買いが入ったとの観測が市場では流れていた。日銀にしてもGPIFにしても年度末の株価へのこだわりは当然あるだろうから、少しでも上で着地したいという思惑を市場も感じている。ちなみに日銀は3月に入ってからETF購入額を大幅に増やし、前日時点で既に1兆5200億円に達していた。先の緊急会合でETF年間購入枠を6兆円から12兆円に倍増させたが、それでも3月は月平均換算ではかなりの金額オーバーとなっている。株式市場において日銀はもはや「非常事態宣言」を行動で示しているといってよい。

来週からは期末特有のリバランスの買いも見込めない。非常事態宣言やロックダウンに早くから身構えている東京市場だが、いざこれが発動されたら悪材料出尽くしになるのかといえば、そう簡単な話ではない。凍る都市を眼前に経済への影響を見てみないフリをするわけにもいかなくなる。したがって、どうしても、個別株で値動きの良い銘柄に短期スタンスで乗って値ザヤを稼ぐといった近視眼的な投資を繰り返すしかないというのが、今の投資家が置かれた状況であると思われる。

非常事態宣言でも買われるような株、例えば除菌剤の中京医薬品<4558>や継続注目してきたテレワーク関連のブイキューブ<3681>など強い銘柄は確かにある。AI関連で取り上げたニューテック<6734>もきょうは一時ストップ高に買われた。これらの銘柄の短期回転を前提とした押し目狙いが一つ。このほか、5G関連の大井電気<6822>はまだ出来高は薄いが、株価は1株純資産の半分という割安さを武器に持ち前の急騰習性を再燃させる可能性がある。基本的に新型コロナによる収益デメリットを被りにくいポジションに位置する銘柄をピックアップして順繰りに資金を回していくような相場が続くと思われる。

とはいえ無理をする必要はない局面だ。デイトレに自信がある向きは除いて、ここは嵐が静まるまで身動きせずの「静観」が傷を負わない最善のチョイスだが、では既に保有している株はどうするのかという問題に行き着く。「中長期スタンスであっても今は株を買わない」という選択肢は、理屈としては「中長期スタンスで保有している株であってもいったん売っておく」という選択肢と等しい。コロナウイルスは極めて厄介な悪材料だが、終息すれば世界的なポリシーミックスを背景に急勾配の戻り相場が待っている。その時を楽しみに現状はできる限りキャッシュポジション高めておくことを心掛けたい。

日程面では、あすは3月の日銀短観がマーケットの耳目を集めそうだ。また、3月の新車販売、軽自動車販売が発表される。海外では3月のADP全米雇用リポート、3月の米ISM製造業景況感指数、2月の米建設支出、2月のユーロ圏失業率など。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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