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すご腕投資家さんに聞く「銘柄選び」の技 内田衛さんの場合-最終回

特集
2020年4月3日 11時40分


"落ちてくるナイフ"の日本郵政に買い、その背後にこの資産あり

登場する銘柄
日本郵政<6178>

文・イラスト/福島由恵(ライター)、構成/真弓重孝(株探編集部)

内田さん内田衛さん(50代・男性)のプロフィール:
投資家だった親戚のおじさんに影響され、高校生のうちから投資をスタート。以降、投資歴は約35年、「逆張り&集中投資」をモットーとするすご腕投資家だ。父親とカードローンから借りた800万円を元手にバブル経済の株価上昇に乗るも、ほどなくしてバブル崩壊の波に飲み込まれ、投資資金もまるまる泡と化す。その後は約9年間、借金返済生活に追われるが、1999年の金融危機のさなかに手掛けた信託銀行3行への投資で一発逆転。それまでの借金をチャラにするほど資金は拡大する。
2001年には約12年務めた会社を退職し、専業投資家に転身。その数年後に億り人を達成するもリーマン・ショックで資金を4分の1程度まで溶かすという大痛手を食らう。それでもめげずに投資を続行し、自身の培った逆張り投資の経験を生かし、1億円のマイルストーンに再到達する。現在はさらに3億円超まで資産の拡大を遂げている。ちょっと波乱万丈系のツワモノだ。

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コロナショックで株式相場は、わずか2カ月のうちに取引時間の直近高値から30%も沈むという歴史的な大暴落に見舞われている。そうした中、この大ピンチともいえる局面を、ここぞとばかりのチャンスとして生かす投資家もいる。その一人が「逆張り&集中投資」を得意技として資産を増やしてきた内田衛さんだ。

今回の暴落局面では、内田さんは待機資金を生かして日本郵政<6178>にすかさず買いを入れる行動に出た。そのタイミングとは、日経平均株価がついには1万7000円台を割り込み、このまま底なし沼のごとく株価が下落していくとも思われた最悪の時期だ。

「落ちてくるナイフは掴むな」という格言があるように、こうした時期に「買い注文」のボタンを押すのはリスクが高く、並外れた強いメンタルを持つ人でないとなせない業だ。内田さんは、なぜ"反常識"の行動ができるのだろうか。

大きな理由の1つには、ポートフォリオの中に投資用ワンルームマンションを組み込み、月々安定した家賃収入を得る資産を持っていることがある。最終回の今回は、暴落時に日本郵政に買いを入れた理由、そして今回のような投資家心理が大きく冷え込む状況に陥っている時でも、果敢に買いに挑む勇気を支えてくれる不動産投資についてクローズアップする。

コロナショックで震える中、郵政株に買い出動

まず、内田さんがコロナショックの大暴落の渦中で仕込んだ日本郵政株に注目したポイントを見ていく。

おさらいになるが内田さんの投資スタイルは、逆張り・集中投資で、目を向ける対象として業績悪化や不適切会計といった悪材料に反応して、株価が一時的に急落ないし暴落した「訳あり銘柄」がある。ただ「訳あり」と言っても会社が倒産するほどの致命的な要素でない限り、長い目で見ればやがて株価は回復する。そのリバウンド過程を狙おうという戦略だ。

今回の同社株への投資もこの考えに則るものだ。傘下のかんぽ生命保険 <7181>が起こした不祥事の影響で、下落基調にあった最中に足元の相場暴落が襲った。それによって、日本郵政株は、長期で考えた企業価値からは「あり得ないくらい安い水準」になったと内田さんは判断して、買いを入れた。

購入にあたって着目したのは、持ち株会社である同社が抱えるメーン事業の1つ、郵政事業についてだ。国内で郵便物の配達を行うこの事業は、社会生活に不可欠で、新型コロナウイルス感染拡大があっても、配達が完全に止まることは考えにくい。逆にこうした状況だからこそ安定した配達が求められ、大きな需要の落ち込みはないと見込んだ。

それにもかかわらず同社株が急落したのは、金融関連株として捉えられた影響というのが内田さんの考え。金融関連株は、世界中で大規模な金融緩和策が実施されたことで金利が低下し、金融機関の利ざや収入は一段と下がることが避けられない状況を嫌気され、売り込まれていると見たのだ。

日本郵政はゆうちょ銀行<7182>を抱えることから、金融関連株を手放す動きの中に巻き込まれる状況にあった。

決め手は「つぶれない会社」と高配当

かんぽ生命の不祥事に、金融株として売り込まれた"訳あり状態"ではあるが、国民生活に欠かせない郵便事業を抱えており「絶対に会社がつぶれることはない」と考えた内田さんは、配当利回りが6%を超える水準になったところで買いを入れる。高水準の配当をもらいながら、じっくりとリバウンド局面を待てばよいと判断したのだ。また購入から数週間後には期末配当の権利も取れることも、積極的になる一因だった。

内田さんの買いタイミングは、同社株がチャート上では短期の底値圏にある750円の水準。その後、程なくして株価は反転し、現在は20%近くもの上昇を見せている。新型コロナウイルスの感染拡大状況によっては、まだ株価下押しの場面があるかもしれないが、当初のシナリオ通り、配当の権利もゲットし、かつ当面の下値をさらうことに成功した。

■日本郵政<6178>の日足チャート

【タイトル】

注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同

反発後の足元の株価指標を見ると、PER(株価収益率)7~8倍台、PBR(株価純資産倍率)は企業の解散価値とされる1倍を大幅に下回る0.2倍台にくすぶっている。その一方で、配当利回りが5%台と依然として高い点は魅力的と見る。この後も、もう少し粘って、株価が1000円程度に回復するまで保有を継続するつもりだという。

このように暴落局面で買い出動してその後のリバウンドをさらうのが内田流だ。だが、それを成功させるには、いざという時に出動できる実弾をキープしておく必要がある。このことは、常々内田さんも重要視しており、今回は全体資産が約3億円超あるうち、3000万円の現金を待機資金とさせていたことも重要なポイントだ(1回目記事参照)。

※当該情報は、一般情報の提供を目的としたものであり、有価証券その他の金融商品に関する助言または推奨を行うものではありません。

次ページ 暴落時の買いを支える不動産投資とは?

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