S&P500 月例レポート ― 脅威増す新型コロナ、生き残りを賭けた1カ月間 (1) ―

市況
2020年4月11日 13時30分

S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。

THE S&P 500 MARKET: 2020年3月

●新たな優先順位が生き残っている

新たに付け加えられることはありません。安全に配慮して生活し、外出に関しては常識的に判断して下さい。あなた自身(あるいはご家族)を危険にさらすことなく他の人に手を差し伸べられるなら、そうして下さい。

投資に関しては、ご自分で調べられることを把握しておきましょう ―― ご自身のポートフォリオの内容、流動性とアクセスの可能性、現在および将来必要になること、損失許容度などです。

⇒上記の観察結果は、ご自身の投資期間に照らして判断する必要があります。

○私の子供たちは大幅に値下がりしたバーゲン銘柄を狙っています。彼らには、これから弱気相場、強気相場、景気後退など、何が起ころうとも数十年の投資期間があります。

○投資期間があと数年の私が現在優先するのは最終利益の確保です。

⇒私は1987年にはバーゲン銘柄を狙い、2001年にはポジションを削減し、2008年には流動性を懸念しました。当時の私は家族(子供たちは高校生)を扶養し、住宅ローンを抱えていました。そして、現在、私が心配するのは退職後の生活と子供たちへの援助です。

過去の実績を見ると、3月は60.9%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は3.32%、下落した月の平均下落率は3.61%、全体の平均騰落率は0.61%の上昇となっています。また4月は64.1%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.19%、下落した月の平均下落率は3.35%、全体の騰落率は1.31%の上昇となっています。今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、4月28日-29日、6月9日-10日、7月28日-29日、9月15日-16日、11月4日-5日(米大統領選は11月3日)、12月15日-16日、2021年1月26日-27日となっています。

●主なポイント

○生き残りをかけた1ヵ月でした。

⇒3月のS&P 500指数は12.51%下落しました(配当込みのトータルリターンはマイナス12.35%)。年初来の3ヵ月間では20.00%下落(同マイナス19.60%)、過去1年間では8.81%の下落となりました(同マイナス6.98%)。

⇒2016年11月8日の米大統領選以降の同指数の上昇率は20.80%(同プラス29.29%)、年率換算では5.73%(同プラス7.87%)となりました。

⇒過去最長の強気相場(2009年3月9日開始)は2020年2月19日に正式に幕を閉じ、上昇率は400.5%(配当込みトータルリターンは529.9%)、年率換算では15.70%(同18.12%)となり、弱気相場が正式にスタートしました。

○米国10年国債利回りは、2月末の1.15%から0.66%に低下(一時は0.38%まで低下)して月を終えました(2019年末は1.92%、2018年末は2.69%、2017年末は2.41%)。30年国債利回りは2月末の1.68%から1.32%に低下(一時は0.69%まで低下)して月を終えました(同2.30%、同3.02%、同3.05%)。注目は、1ヵ月物および3ヵ月物国債の利回りが一時マイナスで取引されたことです。

○英ポンドは2月末の1ポンド=1.2816ドルから1.2376ドルに下落し(2019年末は1.3253ドル、2018年末は1.2754ドル、2017年末は1.3498ドル)、ユーロは2月末の1ユーロ=1.0809ドルから1.1018ドルに上昇しました(同1.1172ドル、同1.1461ドル、同1.2000ドル)。円は2月末の1ドル=108.09円から107.74円に上昇し(同108.76円、同109.58円、同112.68円)、人民元は2月末の1ドル=6.9919元から7.0831元に下落しました(同6.9633元、同6.8785元、同6.5030元)。

○原油価格は2月末の1バレル=45.26ドルから下落して一時20ドルを割り込み、20.47ドルで月を終えました(同61.21ドル、同45.81ドル、同60.09ドル)。米国のガソリン価格(EIAによる全等級)は、2月末の1ガロン=2.555ドルから2.103ドルに下落して月末を迎えました(同2.658ドル、同2.358ドル、同2.589ドル)。

○金価格は2月末の1トロイオンス=1594.80ドルから上昇して(一時は7年ぶりの高値を付け)、1635.00ドルで月を終えました(同1520.00ドル、同1284.70ドル、同1305.00ドル)。

○VIX恐怖指数は2月末の40.11から53.54に上昇して月を終えました。月中の最高は85.47、最低は24.93でした(同13.78、同16.12、同11.05)。

○企業業績に関しては、市場の関心が新型コロナウイルスの影響に集まっており、話題は2020年第1四半期の業績に移りつつあります。2019年第4四半期決算は、売上高が四半期ベースで過去最高を更新し、62.5%の銘柄で売上高が予想を上回り、69.2%の銘柄で利益が予想を上回りました。

⇒ボトムアップベースで算出した予想EPSの引き下げが始まっており、2020年第1四半期は2019年末時点から9.5%下方修正され、第2四半期は14.9%、第3四半期は10.0%、第4四半期は6.0%下方修正されており(2020年通年で10.0%の下方修正)、更に大幅な悪化が予想されています。

⇒現在までに、決算時期がずれている17銘柄が2020年第1四半期の決算発表を行っており、15銘柄で利益が予想を上回り、12銘柄で売上高が予想を上回りました。70%の銘柄が4月に決算発表を行う見込みです。

⇒伝統的に、ボトムアップアプローチのアナリスト(銘柄レベルで分析を行う必要がある)は予想の下方修正のタイミングが遅くなります。これに対して、トップダウンアプローチのアナリスト(エコノミストやストラテジスト)は修正のタイミングが早く、既に予想を大幅に下方修正しています。また、伝統的に、ボトムアップアプローチのアナリストは回復の動きを早く捉え、それに比べてトップダウンアプローチのアナリストは底を見極めるのが遅くなります。

⇒2020年通年の予想はまだ見直し過程にあり、2021年については確かな見通しが「偽りなく」示されることはほとんどないでしょう。

⇒株式数による影響は、比較対象の2019年第1四半期に比べると自社株買いはほとんど完了していたため、低水準ではありますが、2020年第1四半期も続く見込みです。

○企業が137億ドルの予想配当の引き下げを発表する中、S&P 500指数構成銘柄の2020年第1四半期の配当は前年同期の1173億ドルから8.2%増の1270億ドルと、四半期ベースで過去最高を記録しました。

○ビットコインは2月末の8761ドルから下落して6324ドルで月を終えました。月中の最高は9168ドル、最低は4107ドルでした(2019年末は7194ドル、2018年末は3747ドル)。

○米国の新型コロナウイルス対応のための財政政策

⇒第1弾: 医療機関への財政支援やウイルス感染拡大防止に83億ドルを拠出

⇒第2弾: 2週間の疾病休暇および最長10週間の家族医療休暇の給与費用に対する税額控除

⇒第3弾: 労働者、中小企業、事業会社、病院や医療関連機関に対する直接支援、ならびに融資保証を提供する2.2兆ドルのプログラム

⇒第4弾: 各種措置を現在検討中

○そして「本当なのか」と思われるかもしれませんが、S&P 500指数の1年後の目標値はこの1ヵ月で若干の低下にとどまり、3237(現在値から27.6%上昇、2月末時点の目標値は3629)、そしてダウ平均の目標値は2万7101ドルとなっています(同26.2%上昇、同3万2624ドル)。

「脅威増す新型コロナ、生き残りを賭けた1カ月間 (2)」へ続く

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