明日の株式相場戦略=コロナの初期臨床が景気敏感株を動かす現実
きょう(19日)の東京株式市場は、前日の米株急騰に追随する形で日経平均が一時500円を超える上昇となり2万600円台まで上値を伸ばした。現在のファンダメンタルズを考慮すればとても上値を買い進む気はおきないが、「だからこそ戦略的にショート(空売り)を積み上げる動きを誘発し、それが踏み上げ相場の肥やしになるという現実が繰り返されている」(国内中堅証券ストラテジスト)という指摘がある。依然として裁定買い残が枯れて裁定売り残が膨らんだ状態にあることは紛れもなく上値の軽さを担保するものであり、株式市場にとって「良好な需給」は経済の鏡というもう一つの側面を封印するくらいの強さがある。株式需給VSファンダメンタルズは短期的には前者に軍配が上がることが多い。
既に日経平均はEPSをモノサシに使える状況にはない。経済回復への「期待」ですべて説明がつくというのは乱暴だが、少なくとも足もとの相場を経済の鏡という観点から肯定するにはそこしかない。角度を変えて見れば、経済回復期待というのは国策に対する全幅の信頼ということにもなる。繰り返しになるが 新型コロナウイルスがもたらした経済の落ち込みは人為的に経済の動きを止めたことが要因である。それを補うために政府と中央銀行が財政出動と金融緩和策を全力で打ち出すという世界規模のポリシーミックスが、おそらく経済が復元するまで続くであろう、という暗黙のコンセンサスが目先の強気相場の本質にも思われる。
前日の米国株市場でNYダウ平均ザラ場1000ドル高の導火線となったのは米バイオベンチャーが新型コロナウイルスのワクチン の初期臨床試験で効果が確認されたと伝わったことだった。これがワクチンの早期開発期待につながり、その結果として経済回復を早めるとの思惑を呼び、半導体関連などを筆頭に景気敏感セクターが買われるという三段論法だが、何といってもこれは初期の臨床段階に過ぎない。話が飛躍し過ぎて限りなく説得性に乏しいはずだが、それが理屈として通るのが今の相場環境だ。
ただし、モメンタム相場はいったん折れれば資金の逃げ足も早い。どういう形かは特定できないものの、反動安がいつ訪れても不思議はないといえる。きょうの相場でいえば終盤はさすがに息切れ模様となった。300円をわずかに下回る上げ幅となりこの日の安値で着地しており、引け味としてはよくない。過信はできない局面であることも念頭に置いたうえで、タコ糸を出し切ることのない機動的な売買を心掛けたい。
きょうはマザーズ指数の伸びも勢いを欠いたが、個人投資家の視点としては同指数の動きがバロメーターとなる。5日移動平均線を明確に下回ったら、たとえデイトレードであっても中小型株は要注意だ。しかし、バイオ関連株は引き続き強い銘柄が多い。新型コロナウイルスに関連する材料が断続的に出てくるため、投資する側としては期待値が高い。今月取り上げたスリー・ディー・マトリックス<7777>は、新型コロナ関連でのアンジェス<4563>との連携を材料視され、きょうは一時ストップ高に買われる場面があった。このほか、業績面で評価余地が大きいコスモ・バイオ<3386>も継続注目しておきたい。
医療ICT化で商機をつかむ銘柄としてはケアネット<2150>が好決算を背景に大きく株価水準を切り上げたが、電子カルテシステムを開発するCEホールディングス<4320>も足もとの業績は好調でマークしておくところ。
決算発表を通過してみると、意外なセクターに好業績銘柄が眠っていることがある。例えば戸建て住宅関連などは業績で株価も明暗を分けるケースが多いが、いわゆる2極化の勝ち組銘柄の上げ足の強さに思わず目を見張る時がある。きょうは1次取得層向けを中心とする分譲住宅大手のケイアイスター不動産<3465>が好決算を材料にマドを開けて買われたが、このほか都内23区などを中心に分譲事業を行うオープンハウス<3288>が強い足を見せつけている。
日程面では、あすは3月の機械受注、4月の首都圏・近畿圏の新規マンション販売、4月の主要コンビニ売上高、4月の訪日外客数が発表される。20年国債の入札も予定される。海外では、タイ中銀の金融政策決定会合、FOMC議事録(4月28~29日開催分)、米20年債の入札など。
(中村潤一)