マスクや消毒液だけでは足りない新型コロナ対策
清水香の「それって常識? 人生100年マネーの作り方」-第5回
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表
1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年よりOfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。
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毎日のように新型コロナウイルスの話題に目を奪われてきたここ数カ月ですが、災害といえば、その少し前までは、強風や豪雨で甚大な被害をもたらした台風、そして震度5以上の地震や火山噴火の脅威に怯えさせられていました。内閣府によれば、災害が著しく、地方財政や被災者に特別の助成を行う激甚災害の指定された自然災害の数は、2016年からの5年間でも18にも及びます。
この数が示すように、我が国は大きな自然災害に頻繁に襲われています。全世界の陸地面積のわずか0.3%ほどしかない国土にもかかわらず、世界で起きたマグニチュード6以上の地震の約2割が日本で発生しており、近年は地球温暖化の影響から激烈な風水害も各地で相次いでいます。
地震や火災などの災害で支払われた保険金は2011年の東日本大震災以降、1兆円を超えることもたびたび。特に風や水による災害に関する損害保険金は2年連続で1兆円を超えるというこれまでにない状況になっています。
■2010年以降の自然災害による年度別の保険金支払額
出所:「日本の損害保険ファクトブック2019」(日本損害保険協会)および「日本地震再保険の現状2019」(日本地震再保険)
巨額の保険金が支払われる災害が頻発していることもあり、最近は地震保険料の改定が2年に1回のペースで行われ、また火災保険料の改定も続いています。火災保険はかつて36年間の一時払いにすると割安に抑えられるプランもあったのですが、長期にわたる気候変動の影響を読み切れなくなり、現在は最長10年に短縮されています。ただし、これも近いうちに最長5年に短縮される見通しです。
第二次大戦後からの主な自然災害の発生状況を振り返ると、ここ30年間はそれまでとは異なるフェーズに入ったように見えます。
伊勢湾台風が起こる1959年まで、社会インフラは脆弱で、台風や地震で多くの犠牲が生じることを防げませんでした。以降、災害法制や社会インフラ整備が進み、またその頃から、日本は"右肩上がり"の時代に突入していきます。
それが実現した背景には、この時期に災害が比較的少なかったことも指摘されているところです。しかし、そんな時代を経て1995年は阪神・淡路大震災、そして2011年の東日本大震災では、桁違いの犠牲者と損害が生じました。
今後、対策を進めなければ、最悪の場合、南海トラフ巨大地震の犠牲者は東日本大震災の約10倍に上るとも予測されています。今後はメガ級の災害が起こることを前提に、私たち自身も、さまざまな備えを考えざるを得ない時代に突入しているのです。
出所:「平成30年版防災白書」(内閣府)
阪神淡路大震災ではインフルエンザ流行による災害関連死も
そして今ほど、災害の発生を恐れることはなかったかもしれません。しかし、地震はともかく、夏が近づけば台風は必ずやってきます。
災害が起きたあと、「災害救助法」に基づき開設される避難所は、被災者の当面の生活の場です。ところが体育館等でのプライバシーのない劣悪な環境は何十年も変わらないままで、「3密」回避は困難です。
そのため、新型コロナの感染爆発に繋がりかねないと、専門家からもしばしば指摘されているところです。過去に例もあり、1995年の阪神淡路大震災では神戸市の避難所でインフルエンザの集団感染が発生し、災害関連死した約900人のうち300人超はインフルエンザが死因とする推計があります。