明日の株式相場戦略=“上げ潮相場”に乗る個別株を追う

市況
2020年6月8日 17時30分

週明け8日の日経平均株価は世界株高の潮流が押し寄せるなか、水かさが増すように2万3000円大台ラインをクリア、約3カ月半ぶりの高値に浮上した。前週末の米国株市場では NYダウが800ドルを超える急伸をみせた。5月の雇用統計で非農業部門の雇用者数がうれしい誤算ともいうべき251万人の増加。事前コンセンサスでは800万人程度の急減が見込まれていただけにサプライズを誘い、売り方の買い戻しが加速した。欧州では仏CAC40指数が3.7%高、独DAX指数が3.4%高と値を飛ばしており、何のことはないNYダウよりも上昇率で上回っていた。

理屈を超えた上げ潮相場で、東京市場でもファンダメンタルズからのアプローチが利かない以上、どこで止まるかは見極めにくい。日柄的には週末のメジャーSQ算出までは強いとみる市場関係者が多いようだ。きょうは三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>などメガバンクが商いを伴い上げ足を加速、いよいよ金融相場の色彩を強めてきた。過剰流動性が今の相場の本質だが、言葉を変え世界株高の理由に日々呪文のように繰り返されるのが“景気回復期待”というワードだ。

いうまでもなくその背景には経済活動の再開がある。活動を再開するのはもちろん人間であるわけだから、結局のところ経済の流れというのは人心に左右される部分が多い。それを象徴する銘柄が、先月に複数回取り上げた100円ショップのワッツ<2735>で、ここ一段と上値指向を強めている。きょうは87円高の888円に買われる人気となった。直近開示された5月の月次既存店売上高が16%増と2ケタ伸長を示したことが好感された。この株が買われるのは消費者のデフレマインドを追い風とする業態であるからで、実際に売上高の伸びにも反映されている。チャートは急速に上放れ新値街道をまい進、皮肉なことにデフレ経済とは真逆のトレンドを示している。5日移動平均線とのカイ離修正場面は、投資対象として依然妙味がありそうだ。

アフターコロナの産業構造の変化をにらむのであれば、やはり企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の担い手が注目され、広義では AI IoTクラウドなどのITソリューション関連株に光が当たり続ける。ネット接続大手の朝日ネット<3834>が上場来高値圏を走り大相場に発展しつつあるが、これは今後 “あらゆるものがオンライン化する”IoTが予想を超える勢いで日常と同化することを予知しているようにも見える。朝日ネットをひとつの断片図として捉えた場合、ワイヤレスゲート<9419>などもこの横にピースとしてはまる銘柄だ。きょうは派手な値動きだがまだ600円台前半で、目先の押し目は狙えそうだ。株価は中勢4ケタ大台を目指す雰囲気を携えている。

金融向け案件に強みを発揮するソフト受託開発では、ソルクシーズ<4284>。子会社でテレワークサービスの展開にも力を入れており、ジリジリと水準を切り上げ、どこかでマドを開けて上げ足を強める可能性がある。また、AI・IoT分野に軸足を置き、ソフト受託開発とIT技術者派遣を行うソーバル<2186>は4ケタトビ台で値幅を出しやすいポジションにある。板が薄く目立たない銘柄だが、配当利回り3%台で堅実なイメージがあり、日足一目均衡表の雲から抜け出たところでタイミング的にも悪くない。更にODKソリューションズ<3839>は5月下旬から大きく水準を切り上げた後、600円台近辺で売り買いを交錯させていたが、大勢2段上げの兆し。同社は独立系のシステム開発会社で大学入試関連を中心とするビジネスプラットフォームを提供し、制度改革の時流にも乗る。

AI・IoT分野の開発に傾注する企業では、ネオス<3627>も強さを発揮している。売り物も厚く単調な値運びではないものの、5日移動平均線をサポートラインに次第高の動きにある。そしてAI・IoTを支える通信インフラといえば5Gだ。こちらは基地局向けエレメントの需要好調な大泉製作所<6618>が鮮烈に上値を追っている。1月高値から3月安値までの半値戻しを達成した矢先であり、引き続き目を配っておきたい。

日程面では、あすは5月のマネーストックが朝方取引開始前に日銀から開示され、引け後には5月の工作機械受注が発表される。また、6カ月物国庫短期証券の入札も予定される。海外では、FOMCが10日までの日程で開催される。このほか、4月の米卸売在庫・売上高、米10年国債の入札など。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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