“高成長サイン”点灯企業の肖像、IPO 5年内&四半期2ケタ増収の価値 <株探トップ特集>
―梅雨入りマーケット乗り切る1-3月期トップライン拡大継続銘柄ピックアップ―
新型コロナウイルス感染拡大が企業業績を直撃した20年1-3月期。サービス業を中心に世界規模で経済活動が停止状態となり、上場企業の4社に1社が最終赤字という事態に陥った。一方でこのような逆風下でも勢いが衰えることなく収益を伸ばす企業は、ウィズコロナ、アフターコロナの世界でも成長が期待できる有力候補として注目しておきたいところだ。今回は利益の源泉であるトップラインの成長度合いに着目し、時価総額が小規模で新規上場から5年以内というフレッシュな企業群の中から、四半期ベースで増収率の2ケタ増が続く小型株を追った。
●株価上昇が期待できる成長性の高い小型株に照準
新規上場から5年以内で時価総額が小さい成長株は、収益成長と株価パフォーマンスの両面で成熟企業と比べ伸びしろが大きく、大化け株を狙う投資家の注目度が高い。また、マザーズやジャスダック上場銘柄であれば、東証1部昇格候補としても注視される。足もとの東京株式市場は、日経平均株価が3月19日につけたコロナショック時のザラ場安値1万6358円から約3カ月で一気に2万3000円ラインまで回復した後の調整局面に入りつつある。ここは中長期的な視点も踏まえ、押し目買い候補として高成長有望株を選別しておきたい。
以下では、本決算月にかかわらず、6月12日までに1-3月期の決算を発表した企業の中から、(1)新規上場から5年以内(15年6月以降に上場)、(2)時価総額300億円未満、(3)1-3月期の売上高が2四半期以上連続で2ケタ増収を達成、(4)1-3月期の営業損益が増益もしくは黒字転換、といった条件を満たした7社をリストアップした。
●ホープは自治体向け電力販売参入で業績確変モード
自治体に特化したサービスを展開するホープ <6195> [東証M]は、前期から本格始動した自治体が管理する施設へリーズナブルな電力を供給するエネルギー事業が急成長している。直近3カ月の1-3月期(第3四半期)は電力供給開始案件の落札などが寄与し、売上高32億5000万円(前年同期比4.8倍)、営業損益は1億2200万円の黒字(前年同期は2000万円の赤字)に浮上して着地。エネルギー事業の好調な受注動向を踏まえ、20年6月期売上高予想を従来の135億円~140億円(レンジ予想)から143億円(前期比3.7倍)へ上方修正し、未定としていた営業利益は8億5000万円~9億5000万円(同9.8倍~10.9倍)に急拡大する見通しを示した。今後はこれまで培ってきた自治体との取引実績を活用し、1兆円規模の自治体電力市場に切り込んでいく。
●LTSは企業のDX推進ニーズ捉える
エル・ティー・エス <6560> [東証M]は企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)化を包括支援するコンサルティングサービスを主力とする。20年12月期の第1四半期にあたる1-3月期は、データ分析やRPA導入支援などのデジタル活用サービスが拡大したうえ、M&A効果なども寄与し、DX案件を中心に伸びた。また、企業のIT人材不足を解消するプラットフォーム事業ではITビジネスマッチング「アサインナビ」の会員数増加などを背景に業績が回復し、売上高、営業利益ともに四半期ベースの過去最高をマークした。業務効率化をはじめとする企業のIT投資ニーズは旺盛で、成長拡大余地は大きそうだ。中期経営計画では、23年12月期に売上高80億円(19年12月期実績は37億9000万円)、営業利益12億円(同3億700万円)の目標を掲げる。
●オーケストラはクラウド導入支援が急成長
Orchestra Holdings <6533> はM&Aを積極活用した成長戦略で業績拡大路線を走り続けている。足もとではIT人材不足が続くなか、デジタルトランスフォーメーション事業に注力。なかでもクラウドインテグレーション分野は米セールスフォース・ドットコムとのパートナーシップ強化を背景に案件受注が拡大中だ。1-3月期(第1四半期)は主力のデジタルマーケティング事業で運用型広告を中心に利益率の高い案件獲得が進んだほか、DX事業の収益拡大も寄与し、売上高28億6000万円(前年同期比21.8%増)、営業利益2億2200万円(同42.3%増)と業績高変化をみせた。直近ではタレントマネジメント事業やM&Aマッチング事業に参入するなど、更なる業容拡大で新たなビジネスチャンスを探る。
●BBSecは旺盛なセキュリティー対策ニーズ取り込む
ブロードバンドセキュリティ <4398> [JQ]はSBI系の総合セキュリティーサービス企業。テレワークの導入拡大などでセキュリティー対策への引き合いが強まるなか、多彩なサービスと高い技術力で顧客ニーズを捉えている。1-3月期(第3四半期)は企業システムのクラウド化が進展するなか、脆弱性診断サービスの大型受注案件が増大したうえ、情報漏えいIT対策サービスでは監視・運用といった継続的なサービスなどが伸び、売上高、営業利益ともに四半期ベースで過去最高を達成した。第3四半期累計の営業利益は2億8500万円と通期計画(3億円)にほぼ到達しており、業績上振れが濃厚視される。今期は自社株買いの実施や初配当を予定するなど、株主還元に踏み出したことも注目ポイントだ。
●シルバーエッグは巣ごもり消費が追い風に
シルバーエッグ・テクノロジー <3961> [東証M]は1-3月期(第1四半期)に売上高が2億9000万円(前年同期比23.9%増)、営業利益は6000万円(同3.3倍)と急拡大を遂げた。人工知能(AI)を活用したマーケティング支援ツール「リアルタイム・レコメンド・サービス」を提供するアパレル業界や人材関連、電子書籍サイトの売り上げが増加し、成果報酬などが伸びた。第1四半期の営業利益は既に上期計画4500万円を大幅に超過しており、業績上振れは必至とみられる。巣ごもり消費によるEC利用ニーズの高まりを追い風に、17年12月期に記録した営業利益の過去最高益(1億4900万円)の更新も視野に入る。
●ファイバーGはレジデンスWi-Fiがけん引役
続いて紹介するのは、Wi-Fi機器の開発・製造から電気通信サービスまで一気通貫でサービスを提供するファイバーゲート <9450> 。1-3月期(第3四半期)は新型コロナウイルスの感染拡大で商業施設向けフリーWi-Fiの新規契約獲得ペースが減速する一方、主力とする集合住宅オーナー向けのレジデンスWi-Fiは新規契約戸数が好調に推移。決算発表と併せて、20年6月期の業績予想を増額修正し、今期配当は初配当となる3円50銭を実施する方針とした。テレワークの普及加速などでWi-Fiは生活必需のインフラとして一段とニーズが高まるとみられ、来期以降も業績拡大が期待される。
●ミダックは高収益キープしながら関東進出へ
ミダック <6564> は東海地方を中心に廃棄物の収集運搬から最終処理まで請け負う事業を展開。直近3カ月の1-3月期(第4四半期)は旺盛な最終処分場の埋め立て需要を背景に、搬入制限を一部緩和して受け入れ量を増やしたことが奏功し、2四半期連続で大幅増収増益を達成した。21年3月期は売上高、営業利益ともに5%前後の伸びを予想しているが、同社は期初予想を保守的に見積もる傾向が強く、上振れする可能性は十分にありそうだ。今後は前期実績で売上高営業利益率28.7%と業界屈指の高い収益力を維持しつつ、関東方面への進出を通じて事業規模を拡大する計画だ。
株探ニュース