デジタル革新、ウィズコロナで成長加速する「DX関連株」厳選リスト <株探トップ特集>

特集
2020年6月27日 19時30分

―国策の追い風を背に、新たな舞台へと進むデジタルトランスフォーメーション―

●大きく変わる経済活動の枠組み

2018年5月に経済産業省が立ち上げた研究会で、官民を挙げてのデジタル化投資の重要性が謳われ、いわゆるデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた取り組みが始まった。年間最大12兆円という経済損失が発生すると試算されている「2025年の崖」を回避するために、デジタルシフトによる既存システムの刷新が民間企業、そして官公庁にとっても大きな課題として横たわっており、これを国策のもとで克服する動きが顕在化している。

そうした折、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が人心を恐怖に陥れるとともに実体経済にも多大なダメージをもたらした。いずれは収束の方向をたどるにせよ、ウィズコロナやアフターコロナの世界では従前とは経済活動の枠組みが大きく変わるとみられ、これがDX化を促進させる流れとも合致する可能性が高まっている。西村康稔経済財政・再生大臣は、新型コロナ危機を契機にテレワーク をはじめさまざまなIT技術の活用が経済成長の牽引役を担うとの見解で、デジタル・ニューディールを展開することによってこれを後押しする考えを示している。このデジタル・ニューディールの概念は、今年1月の国会演説で西村大臣自らが言及したもので、具体的には次世代高速通信5Gにおける技術開発の支援や、小中学校教育現場へのパソコンの完全普及などを挙げ、19年度補正予算に約1兆円の関連経費を計上した経緯がある。

●富士通19年ぶり高値が示唆するもの

6月8日と9日の2日間の日程で行われた「世界デジタルサミット2020」では5G時代のデジタル革新について幅広く議論され、人工知能(AI)IoTクラウド などの活用によるイノベーションの重要性に改めてスポットライトが当たった。報道の範囲でも世界のIT企業は5Gを基盤とした経営革命の担い手としてのポジションに虎視眈々であることがうかがわれた。

同会合で富士通 <6702> の時田社長は、日本国内でも今後DXが加速するとの見解を示したことが伝わっている。富士通は、直近発表された世界のスーパーコンピューターの計算速度ランキングで、理化学研究所と共同開発した「富岳」が9年ぶりに世界一の座を射止めたことが話題となった。現在、日本が世界に後れを取っているDX投資においても、その旗振り役となることが期待されるが、くしくも同社の株価は6月相場で一気に水準を切り上げている。実質月内最終売買日となった26日に1万3000円台に買われ年初来高値を更新、実に01年6月以来19年ぶりの高みに達した。

日本を代表するIT企業として富士通と双璧であるNEC <6701> も26日は連日の年初来高値更新と気を吐いた。時価は08年8月以来の高値に浮上し、足掛け12年で“リーマン・ショック前”の株価水準を取り戻している。

●DX加速のステージで脚光を浴びる5銘柄

こうした大手ITの株価が暗示するのはデジタル革新の匂いだ。新型コロナ危機をバネに加速するDX投資の流れを、株式市場でも投資マネーが本格的に意識し始める兆しがある。コロナ収束後も個人消費などが牽引する形での経済復活には相当な時間を要するとの見方も強く、ビジネス業態もこれまでとは違った“ニューノーマル”に対応できる企業が成長シナリオを評価され株価も上昇させることになる。「3密」とは対極の形態として企業のデジタルシフトは大きな潮流を形成していく。今回は、その流れに乗るDX関連有望5銘柄を厳選エントリーした。

◎キューブシステム <2335>

金融、流通、通信向けなど幅広い業界で実力を発揮するシステムインテグレーター でソフト開発やデータベース構築を得意としている。金融では大手金融向けで高い実績を有するほか、キャッシュレス化の流れを追い風にクレジット会社向けシステム構築案件が伸びて業績に貢献している。流通では主にスーパーや、コンビニ、アパレル関連などのシステムを構築、成長領域での顧客開拓が進む。通信向けでは顧客管理システムなどの開発実績が豊富。AIやブロックチェーン 分野も深耕し、独自のDX技術者育成プログラムも推進している。中期計画最終年度となる21年3月期は売上高160億円(前期比9%増)、営業利益11億2000万円(同17%増)と増収2ケタ増益を見込んでいることも評価される。

◎テクノスジャパン <3666>

ITコンサルティング会社で世界屈指のソフトウエア企業である独SAP製を中心にERPソフトの導入支援ビジネスを展開する。企業のDX投資に向けた流れを捉え、デジタル革新ビジネスに重点を置く。前期にいったん落ち込んだ業績も21年3月期はV字回復が見込まれており、営業利益段階で前期比2.8倍の8億円が予想されている。顧客情報を統合・一元管理する顧客管理システム(CRM)の構築で需要を取り込み成長トレンドを加速させる方向にある。今後はERPとCRMを連携してサプライチェーンの効率化を実現するプラットフォーム(CBP)にも力を入れていく方針。AIやビッグデータの活用支援に本格的に乗り出しており、今後の業容拡大に対する期待が大きい。

◎TDCソフト <4687>

金融や流通向けを主力とする独立系システムインテグレーターで、デジタル技術の新たな潮流に対応し“次世代型SI”への進化を目指す。AIデータサイエンスやアジャイル開発、クラウド分野などへの取り組みでニーズを捉えている。AIコンサルティングでは近畿大学とAIを使った学生評価支援の研究などで実績。DX推進でもアジャイルサービスを取り入れ需要を獲得している。また、ローカル5G分野に積極参入、高速大容量通信のプライベートLTEサービスを手掛けるLTE-X(東京都中央区)とは5G分野でのサービス提供に向けた戦略的提携を締結している。足もとの業績も保険・クレジット向けシステム開発の大規模案件などが寄与して中期成長トレンドをキープしている。

◎ニーズウェル <3992>

独立系で金融機関を主要顧客としており、勘定系、チャネル系、外部接続系などの基幹系業務システム開発で強みを持つ。高度な金融系業務知識を持った技術者育成に傾注し収益機会を捉えている。また、RPAとAI技術を融合させたソリューションが得意。あらゆる書類を高精度でデジタルデータ化する「DX Suite」はAI-OCR市場のシェアで首位を誇る。テレワーク導入の動きが加速するなか、企業内情報セキュリティーなどのソリューションでも定評がある。中長期的にAI・IoTや自動運転、クラウド、ブロックチェーンといった次世代成長分野の顧客ニーズを取り込み業績に反映していく構え。業績は13年9月期以降、増収増益基調を継続しており成長性と安定感を併せ持っている。

◎アイエックス・ナレッジ <9753> [JQ]

独立系システムインテグレーターで金融系に強みを持ち、コンサルティングや保守運用なども幅広く手掛ける。キャッシュレス決済やブロックチェーン分野で実績が高く、フィンテック関連としても注目を集めるほか、デジタル先端技術分野に注力している。クラウドサービスはAWS構築・運用支援のほか、名刺管理システムと社内SNSを融合した「i-Connection」を展開、サイバー防衛へのニーズが高まるなか、標的型メール訓練サービスなどワンストップ型のセキュリティー教育クラウドも手掛ける。システム開発は車載組み込み関連が好調で全体業績に寄与している。株価指標面でもPER12倍前後と割高感に乏しく、財務面にも不安がなく増配余力も高いとみられている。

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