ピー・シー・エー 前期は特需で最高益更新、今期は減収減益だが一時的。来期以降、再成長へ
アルファ・ウイン・キャピタル株式会社は、ピー・シー・エー株式会社(東証一部上場、コード:<9629>、佐藤社長)の2020年3月期決算発表を踏まえ、調査レポートを発行した。要旨は以下の通り。
事業内容
・ピー・シー・エー株式会社(以下、同社)は、基幹業務のパッケージソフトウエアに特化した独立系のソフトウエアメーカーで、同業界では専業大手である。
・同社は1980年に創業され、以来、主に中小企業向けにソフトウエアをオンプレミスやクラウドにて提供している。基幹業務の高度な自動化を実現するソフトウエアの提供を核に、企業の円滑な経営・運営をサポートする「マネジメントサポート・カンパニー」として社会に貢献することを使命としている。
業績動向
・同社の前期業績(2020/3通期)は5期連続の増収増益、かつ通期決算としては過去最高売上高と利益の更新を達成し、極めて好調であった。売上高は14,266百万円(前年同期比24.7%の増収)、営業利益は2,781百万円(同122.8%の増益)を計上した。成長ドライバーであるクラウドと就業管理システム関連の売上高が続伸したほか、特需効果(消費税改正、Windows7のサポート終了対応などの前倒し需要)も加わり、ソリューションや製品の増収が大きく寄与した。同社は、限界利益率が高いビジネスモデルであるため、増収効果が人件費などのコスト増を吸収し、大幅な増益をもたらした。なお、売上高・利益とも、上方修正後の同社予想、並びにアルファ・ウイン調査部の予想をさらに上回った。
・また、同社は、2021/3期(今期)通期の業績を、売上高:13,280百万円(前期比6.9%の減収)、営業利益:2,034百万円(同26.9%の減益)、当期利益:1,358百万円(同25.2%の減益)と発表した。前期までの特需の反動による減収と、将来の成長に向けた投資によるコスト増加のため、減収減益を予想している。会社の予想利益は、前回の当調査部の利益予想とほぼ同水準である。
競争力
・同社は、約24万社の顧客基盤を持ち、中小企業向け等の会計・財務分野では高い知名度と上位のシェアを誇っている。特に同分野における基幹業務のクラウドサービスでは先行し、業界トップを快走中。今後はクラウドサービスでは後発となる大手同業者や、低価格帯を主とする同業者との競合状況に注目していきたい。
・専業者として得意分野に経営資源を集中し、税制・制度変更等の幅広いニーズに対応した商品開発やサービスを他社に先駆けて提供できること、安定した顧客基盤を有し、リーズナブルな価格で高品質な製品・サービスを提供できることが、同社の強みである。
経営戦略
・グループの経営基本戦略として、主力事業の収益基盤の確立(PCAクラウドの強化・拡販、オンプレミスのサブスク事業の強化)、新たなビジネスチャンスの創造(新技術・新事業開発)、高収益体質に向けた経営管理基盤の強化に加え、新たにモノづくりの強化(同社特有の製品・サービスの開発体制)を掲げ、さらなる成長に繋げたい意向である。一方、課題は、人材の確保と、Keepdataや新規ビジネス(PCAサブスク、Hyper等)を軌道に乗せることである。
・また、中計の最終年度である2022/3期の連結数値目標を、同社は上方修正した。売上高115億円以上⇒135億円以上(内ストックビジネス売上高60億円⇒75億円)、営業利益15億円以上⇒21億円以上、営業利益率10%以上⇒15%以上とした。新型コロナの影響は変動要因となるが、ミニマムの目標値としている。
アルファ・ウイン調査部の業績予想
・新型コロナの影響は見通しにくいが、短期的には、商談や新サービスの延期、同社のユーザーである中小企業が受ける業績へのマイナス・インパクトが懸念材料ではある。当調査部では、このリスクを勘案し、今期売上高予想を会社の予想を下回る水準まで修正した。因みに4月、5月の業績は、ほぼ想定の範囲内で推移した模様である。但し、6月以降に新型コロナの影響が、営業・売上高で顕在化する可能性があり注視していきたい。
・また、今期は一時的な減収減益が避けられない。しかし、コスト前提は保守的で、同社の予想利益が下振れリスクは限定的であると考えられる。そのため当調査部の利益予想は、会社予想とほぼ同水準とした。ストックビジネスが継続的に拡大するフェーズにあり、コストコントロールを適正に行えば、過去の特需の反動期と比較しマイナス・インパクトは軽減できる見込みであり、経営体質の改善が進んでいる。
・なお、来期以降も新型コロナの影響は残るが徐々に正常化し、再び増収増益基調に戻るものと思われる。中長期間の年間利益成長率(平準化ベース)を、当調査部では8~10%と予想している。
株価水準
・サブスクリプション・ビジネスモデルへのシフトや働き方改革、税制変更がポジティブに働く、ディフェンシブな内需小型成長株。3月を決算とする東証一部上場企業の過半が、新型コロナの影響で今期の通期見通しを非開示とした中、同社は減収減益ながらも業績予想の開示を行った。その後、株価は上昇しTOPIXを大幅にアウトパフォームしている。株価のバリュエーションは、同業他社との比較では割安感がある。ストックビジネスのため安定性と継続性がある上、コストバッファーがあり今期の予想利益の達成確度は高いと思われること、増配や株式分割など株主還元の強化が今後も見込めること、中長期的に増収増益トレンドに戻り堅調な業績推移が予想されることから、株価のアップサイドの余地はあると考えられる。
株主還元
・同社は、これまで継続的な安定配当(配当性向33%を目安)と自社株買いを行ってきた。前期も一株当たり年23円を増配し(うち普通配当3円、特別記念配当20円)、54円とした。今期は34円の普通配当の継続を計画している。また、株主優待制度のクオカードを考慮すると、実質的な利回りは(最大)、前期基準で1.6%、今期基準で1.2%となる。中長期では、好業績を背景に、株主還元の一層の強化が期待される。
(出典)アルファ・ウイン・キャピタル株式会社
株探ニュース