キャッシュレスを賢く利用、“ウィズコロナ”時代のカンタン家計管理術
清水香の「それって常識? 人生100年マネーの作り方」-第8回
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表
1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年よりOfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。
新型コロナの感染が終息していないなかで、全ての都道府県で緊急事態宣言が解除されて1カ月あまり。私たちの暮らしは"ウィズコロナ"のフェーズに入りました。
厚生労働省は6月19日、「新たな生活様式」を公表。身体的距離の確保やマスク、手洗いといった基本的な感染予防対策のほか、娯楽やスポーツ、公共交通機関の利用など様々な生活シーンでの感染予防の取り組みが示されました。
その1つが、買い物において「電子決済の活用」を推奨すること。現金の収受を行わず、カードやスマートフォンなどを用いて行ういわゆるキャッシュレス決済のことです。
支払いに現金を使う機会を減らす、もしくはなくすだけの事ですが、支払手段を変えるだけの変化に留めるのはもったいない話。家計の管理も、現金全盛のときの常識に変化を加え、キャッシュレス時代に最適化した新常識を作り上げてみる。これも「人生100年マネー」づくりに欠かせません。
普及に期待のオリ・パラを延期させたコロナが普及を加速
家計管理の新常識の話に入る前にキャッシュレス決済の現状について簡単におさらいしましょう。これまで広く普及していたのがクレジットカード決済です。これに近年では「Suica(スイカ)」や「ApplePay(アップルペイ)」などのタッチ決済、スマホなどの画面にQR・バーコード決済など表示して行う「PayPay(ペイペイ)」や「LINEPay」などが、わが国では利用が広がってきました。
私たち生活者にとっては、手ぶらで買い物ができる、消費履歴がすぐわかる、盗難時の被害リスクが低く抑えられるなどのメリットがあります。事業者にもレジ締めや銀行入金など、現金管理の手間が削減できるといったメリットがあります。
キャッシュレス化は世界的な流れです。経産省の資料によれば、お隣の韓国のキャッシュレス決済比率(民間最終名目消費支出に占めるキャッシュレス決済の比率)は96.4%と、非常に高い水準になっています。ちなみに同比率は、英国と中国は60%台、アメリカやスウェーデンが50%程度ですが、日本は20%程度と低水準にとどまります。
こうした状況に日本政府も動きだし、昨年6月に「成長戦略フォローアップ」を閣議決定、2025年6月までにキャッシュレス決済比率を倍増、40%程度とすることを目指すとしました。
その背景には、当初は今年開催予定だった東京オリンピック・パラリンピック開催で、成長著しいインバウンド(訪日外国人)需要のさらなる取り込みがありました。さらには昨年10月からの消費税率アップ後に消費を喚起する施策にも使われました。今年6月までの9カ月限定で、ポイント還元事業も実施しました。
その後オリ・パラは来年に延期、また今年4月の訪日外国人数は前年同月比99.9%減と、統計史上最少の2900人となり、当初の当てが外れてしまいましたが、皮肉なことに新型コロナの影響が思わぬ形で追い風に。
現金に触れずに済むことから、従業員と顧客の接触機会を減らせる衛生的な決済手段として、キャッシュレス決済が注目されるようになっているのです。たしかにウィズコロナ下の買い物は、帰宅後に手洗いの後に購入した商品を消毒して、再び手洗いなどと、これまで以上の様々な手間がかかるようになっています。
「ウイルスを媒介しかねない通貨を使わず感染リスクを回避できるなら」とキャッシュレス決済を取り入れた人も少なくないでしょう。筆者もそのひとりで、この春、感染リスク低減を目的に、わが家の家計管理に「PayPay」によるキャッシュレス決済を取り入れることにしました。
今回は、筆者が20年ほど実践している家計管理の方法と、そこにキャッシュレス決済をどのように取り入れたかご紹介します。