和島英樹の「明日の好悪材料Next」~第7回
月次売上高が堅調な食品スーパー、100均、ディスカウン店が目立つ
株式ジャーナリスト
日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社。株式新聞社(現モーニングスター)記者を経て、2000年にラジオNIKKEIに入社。東証・記者クラブキャップ、解説委員などを歴任。現在、レギュラー出演している番組に、ラジオNIKKEI「マーケットプレス」、日経CNBC「デイリーフォーカス」毎週水曜日がある。日本テクニカルアナリスト協会評議委員。国際認定テクニカルアナリスト連盟認定テクニカルアナリスト(CFTe)。
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7月3日~9日分では、小売り系企業が月初めに公表する月次決算や、2月決算の第1四半期の発表時期ということもあり、これらの企業の開示が多かった。新型コロナ禍の中、食品スーパー、100円ショップ、ディスカウントストアの堅調さが目立っている。百貨店などはさえず、明暗が分かれている格好。
7月3日分 アークス<9948>
■好悪材料~3~5月期(1Q)経常は2.1倍で着地
北海道、青森、岩手でトップの食品スーパーグループ。傘下に北海道、東北に拠点を置くスーパーマーケット8社と事業会社1社を擁し、アークスはグループ全体の戦略を立案する純粋持ち株会社。2021年2月期の第1四半期決算(20年3~5月)は、売上高1404億9000万円(前年同期比11.5%増)、営業利益58億4800万円(同2.3倍)となった。
グループの既存店売上高は同8.4%増。新型コロナでは、一部店舗で営業時間は短縮したものの、通常営業を継続し売上高を伸ばした。特売広告やポイント倍増セールなどの販促企画を自粛したことで利益率が改善したほか、前期の第3四半期に子会社化した宮城県の食品スーパー伊藤チェーンも寄与している。
2019年10月に本格稼働させた新基幹システムでは、「標準化」と「業界特殊性」を両立したプラットフォームが完成。商品調達力の強化や間接業務の集約などのDX(デジタルトランスフォーメーション)への対応が進んでいる。
通期計画では、売上高が5300億円(前期比2.1%増)、営業利益132億円(同8.9%増)、1株利益150.5円を計画している。第1四半期時点での営業利益の進ちょく率は44.3%と高水準。
■『株探』プレミアムで確認できるアークスHDの四半期業績の成長性推移
「新日本スーパーマーケット同盟」の関連2社にも関心向くか
アークスは2018年に、バローホールディングス<9956>とリテールパートナーズ<8167>との3社間で「新日本スーパーマーケット同盟」と銘打つ戦略的な資本業務提携を発表している。
バローHDは東海・北陸地方を中心にスーパーのほかドラッグストア、ホームセンターなどを展開し、もう1社のリテールパートナーズは中国・九州地方を中心に食品スーパーを主業とする企業の連合だ。
この3グループ共通の限定商品発売、共同販促企画の実施、生鮮品など地場商品・産地情報の共有などを実施している。グループが結束することで、調達力の向上などで採算の改善なども期待できる。バローHD、リテールパートナーズの動向にも関心が高まる可能性がある。
7月6日分 セリア<2782>
■好悪材料~6月の既存店売上高は前年同月比9.8%増と2カ月連続で前年実績を上回った
100円ショップ売上高2位で、中部地方を軸に全国展開している。同社の既存店売上高は今年4月の同2.7%減となるも、5月は同8.3%増に回復し、6月も同9.8%増と成長を加速する。4月は政府の緊急事態宣言を受けて1割強の店舗を休業したことが響いたが、その影響を払拭する伸びを続けている。
同社は2004年に業界初となるPOS(販売時点管理)システムを導入。06年にはそれを活用した発注支援システムを構築し、売れ筋商品を軸とした最適な品揃えとオペレーションの簡素化を実現することで成長してきた。店舗のコンセプトは「Color The Days」(日常を彩る)で、雑多なイメージのある100円ショップ業界にあって、彩り豊かな余裕のある陳列に特色がある。ちなみに「セリア(Seria)」はイタリア語で「まじめな」という意味を持つ。
21年3月期の会社計画は、売上高が1880億円(前期比3.6%増)、営業利益が165億円(同6.3%減)と増収減益に。新型コロナの影響を織り込んで、既存店売上高を前期比3.4%減(上期は前年同期比4.4%減、下期は同2.5%減)を前提としている。
月次は前提を上回って推移しているのは、景気の悪化で支出を抑える動きが出ているなどが要因と見られる。100円ショップへの集客力が高まっているだけに、増額修正に進む公算もありそう。キャンドゥ<2698>、ワッツ<2735>の動向もチェックしたい。
7月7日分 ミスターマックス・ホールディングス<8203>
■好悪材料~6月既存店売上高は前年同月比15.7%増と6カ月連続で前年実績を上回った
九州が地盤の家電、日用雑貨、食品、衣料などの総合ディスカウントストアで、関東や中国地方にも店舗を展開する。2017年9月に持ち株会社制に移行。社名の由来はMaximum(極限)に由来している。品質や価格などを極限まで追求するという意思を表す。
6月の既存店売上高が好調だったのは、気温が高かったことでエアコンや夏素材の寝具・インテリア用品、夏物衣料が伸びたことがある。また、トレーニング用品やゲーム機などの巣ごもり消費や、マスクやハンドソープなど感染症対策商品も引き続き堅調だったとしている。
21年2月期に入ってからの既存店売上高は3月が前年同月比12.5%増、4月が同9.5%増、5月が同16.8%増といずれも順調だ。
■MrMaxHDの既存店売上高の伸び率(対前年同月比、2019年3月~20年6月)
注:会社資料を基に『株探』編集部が作成。▲はマイナス
第1四半期(3~5月)決算は7月14日に発表予定。期初の通期業績予想は売上高1226億8400万円(前期比0.3%増)、営業利益25億6000万円(同4.5%増)、1株利益48.4円。
なお、店舗は福岡23店、佐賀4店、大分3店、熊本5店などとなっているが、豪雨の影響についての開示は7月9日現在ではない。
ディスカウントストアでの類似企業ではジェーソン<3080>、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス<7532>、マキヤ<9890>などがある。
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