明日の株式相場戦略=“電子コミック祭り”相場 と勝ち組消費株
きょう(30日)の東京株式市場は朝方こそ前日の米株高を受け日経平均が反発してスタートしたが、その後は上値の重い展開となり、前場後半を境に値を消す展開となった。前日終値近辺でもみ合いを続けたあと下げ幅を広げ、結局57円安の2万2339円で着地。アルゴリズム主導の下値を大きく売り込むような動きは封印されているものの、前日までの4営業日続落で強気相場に陰りが出始めたところだけに、きょうの値運びは注視する必要があった。新型コロナウイルスの感染力が驚くほど強力であることに加え、徐々に本格化する企業の決算発表も想定以上に厳しいという認識が浸透し始めている。日経平均の5日続落はコロナショック第1幕の崩落相場が始まった2月21日から月末にかけ記録して以来、ほぼ5カ月ぶり。今回は全体相場が急落に見舞われているわけではないが、くしくも感染第2波が押し寄せている現状において、投資マネーの戸惑いを如実に映し出している。
日経平均以上に気になるのはマザーズ指数で、7月早々の急落後いったんバランスを立て直したかに見えたが、その後は25日移動平均線が頭を押さえつける形で戻り切ることができず、きょうはプラスで引けたものの下放れを匂わす波動となっている。好調マザーズのシンボルストック的存在だったアンジェス<4563>は「個人のニューマネー、平たく言えばロスカットの選択肢がない投資初心者の資金が結構な水準入っており、株価下落によりこれらの資金がフリーズ状態になっているのが痛い」(国内証券ストラテジスト)という指摘もある。また、「(マザーズ市場は)6月下旬からのIPOラッシュに合わせて目先天井をつけた感がある。個別ではベンチャーキャピタルの売りに加え、海外短期筋の貸株調達による売り仕掛けも機を捉えた」(同)という。2部指数も同様に25日線との下方カイ離を広げており、中小型株は資金の回転が効きにくい地合いになっていることを物語る。
来週から名実ともに8月相場入りするが、夏枯れ相場という代名詞があるように機関投資家の動きが鈍い月だ。とりわけ、過去10年間を振り返って海外マネーは日本株の持ち高を引き下げる傾向がかなり強いということが分かっている。8月中旬に向け加速する企業の決算発表も、事前に悪い内容は織り込んでいるとはいえ、日経平均2万2000円台半ばは悪材料出尽くしで一段と水準を切り上げるには発射台が高すぎる。ただし、深押しリスクも限定的とみられる。過剰流動性に支えられた環境にあってなおかつ日銀のETF買いを考慮すれば、日経平均はとりあえず200日移動平均線の2万2000円近辺、仮に崩れ足となっても75日移動平均線の2万1500円近辺が下値メドとなるのではないか。
もちろん、日本株を語るうえでは米国株の動きもポイントとなる。現在、米国では新型コロナ対策として、失業者に対し、失業保険に上乗せする形で週600ドルの給付金が出ている。日本とは大違いだが、これが8月からは大幅減額もしくは共和党と民主党間で紛糾を重ねた場合一時的にストップする懸念もある。「米国株好調の背景には"給付金トレーダー"の貢献も大きかったが、この株高条件がひとつ消える公算が大きくなった」(ネット証券大手マーケットアナリスト)という声も出ている。
何か弱気材料ばかり並べる感じになってしまったが、現在の流動性相場においては、総論がどうであれ何処かに資金が流れ込む入り江があることも忘れてはならない。いわば急所の見極めが大切となる。決算絡みのこの時期は基本的に好決算発表銘柄のギャップアップスタートに関心が集まりやすいが、それとは別に束になって買われるテーマ買いの動きも健在だ。きょうは"電子コミック祭り"の様相となり、イーブックイニシアティブジャパン<3658>を筆頭に、富士山マガジンサービス<3138>、パピレス<3641>、Amazia<4424>、Link-U<4446>などが大賑わいとなった。連日ストップ高のブランジスタ<6176>などもこの一角に属する要素がある。このほか、引き続き店舗展開する消費関連の勝ち組で、ワッツ<2735>、ジェーソン<3080>、Olympicグループ<8289>などをマーク。目先ひと押し入れているスーパーバリュー<3094>あたりも食指が動く。
日程面では、あすは6月の完全失業率・有効求人倍率、6月の鉱工業生産速報値、6月の住宅着工、7月の消費動向調査など。また、主力企業の決算発表では、NEC<6701>、キーエンス<6861>、デンソー<6902>、村田製作所<6981>、三井物産<8031>、ヤマトホールディングス<9064>、KDDI<9433>などが予定されている。海外では7月の中国製造業PMI、4~6月期ユーロ圏GDP、6月の米個人所得・個人消費支出、7月の米消費者態度指数(確報値・ミシガン大学調査)などが焦点となる。(中村潤一)