レバを掛けるなら、短期勝負の順張り戦略がテッパンなわけ
楽天証券・土信田雅之さんに聞く「コロナ相場後の投資戦略」~第2回
~株探プレミアム・リポート~
楽天証券経済研究所シニアマーケットアナリスト。国内証券会社にて企画や商品開発に携わった後、2011年より現職。中国留学経験があり、アジアや新興国の最新事情にも精通している。楽天証券「トウシル」の「信用取引入門講座」で信用取引のノウハウを紹介するほか、連載中のコラム「テクニカル風林火山」「一生モノの株投資力養成講座」などが好評。
第1回「もう「逃げ」も「乗り」も遅れない、それならコロナのほかにココに注意」を読む
足元の日経平均株価は2万1500円~2万3000円近辺のレンジの中で行き来しており、しびれがきれるような相場が続いている。次に動きが出たら、手元資金以上のポジションを組める信用取引や、通常より2倍や3倍と大きな値動きのするレバレッジ型ETF(上場投資信託)を使って、手っ取り早く儲けてやろうと考えている投資家もいるだろう。
ただ、こうしたレバレッジ(倍率)を掛ける「レバ投資」は、一歩間違えばあっという間に損失が拡大していくリスクと隣合わせ。その恐ろしさは、『株探』プレミアムで6~7月にかけて掲載した「コロナ相場でしくじり、とりでみなみさんの教訓」のシリーズで紹介した(参考記事)。
2回目となる楽天証券経済研究所シニアマーケットアナリストの土信田雅之さんインタビューでは、レバ投資を活用するにあたってのテクニカル面での注意点や攻め技について聞いた。
レバ投資、仕掛けるのはトレンド転換を確認してから
――『株探』プレミアムでは、コロナ大暴落の最中に信用買いで向かい、資産の半分を吹き飛ばした億トレさんのしくじり話を最近特集しました。こうした行動を取った投資家は少なくなさそうですが、レバレッジ投資に挑戦する際の注意点を改めて教えてください。
土信田雅之さん(以下、土信田): 信用取引を生かしたレバレッジ投資にせよ、レバレッジ型のETFにせよ、あくまでも短期勝負に徹するつもりで参戦し、そして相場のトレンドに乗る方向で手掛けるのがリターンを得やすいやり方だと考えています。
――「相場のトレンドに乗る」、つまり順張りで仕掛けるということですね。
土信田: レバレッジ投資で上手く利益を出している投資家さんを見ると、例えば下落トレンドにあったところから、トレンドが完全に転換して上昇トレンドに変わったことを確認してからその波に乗って投資をしているパターンが多く見受けられます。
上昇ないし、下降のトレンドに乗ることさえできれば、そのトレンドが強いものであってもそうでなくても、利益を取ることができます。これが一番効率のよい方法ですね。
一方、順張りの反対は逆張り投資になりますが、これは、よほど自信がない限りは安易に手を出すのはお勧めできません。
先回りの逆張り投資は損失拡げるリスクも
―― 逆張り投資は、下げ局面の中で、将来の上昇を見越して買い向かう投資法ですね。
土信田: 逆張り投資は、「下げ過ぎ」「上げ過ぎ」など相場がどちらか一方に過熱感が出た状態に注目し、この先にトレンドが転換することを期待して、先回り投資するやり方です。
しかし、トレンド転換を先回りして見極めるのは、プロでも至難の業です。今回のコロナ大暴落で見られたように、強いトレンドが出た時は「下げ過ぎ」などのサインは無視され、とことんトレンドに拍車がかかることもあるからです。
投資の経験を積み重ねていくと、「行き過ぎが起これば、どこかで反転するもの」という経験則が頭に入っています。しかし、そのどこかが明日なのか、それとも1週間後なのか、それとももっと先なのか――のタイミングを正確に見極めることは不可能に近い。しかも、今から何%下落(もしくは上昇)すれば、反転が始まるのかも、誰もわからないというのが実情です。
にもかかわらず、「そのうち反転するだろう」と期待して逆張りすると、自分の想定を超えてさらに下落(もしくは上昇)するという事態に巻き込まれ、損失が拡大してしまうことになります。
逆張り投資は多数の人が行っていることと反対のことをする行動で、例えて言えば急流に逆らって、手漕ぎの舟を一人で漕いでいるようなものです。自分の漕ぐ力より大きな力が舟にかかっているので、僅かな操作ミスで自分の行きたい方向とは逆方向に大きく流されたり、最悪の場合は転覆してしまったりします。
そんな無茶をするのではなく、川の流れに身を任せるような順張り戦略の方が効率よくリターンを狙いやすいと考えています。
―― 順張り投資はトレンドが転換した後に仕掛けることになります。では、転換したと確認するには、どんなものに注目したらよいのでしょうか。
土信田: トレンド転換を示すサインで代表的なものに、下降から上昇への転換では「ダブルボトム」「トリプルボトム」、上昇から下降への転換は「ダブルトップ」「トリプルトップ」などの出現があります。
こうしたトレンド転換のサインが完全に形成され、転換したことを確認しないうちに仕掛けるのはリスキーで望ましくありません。
■ダブルボトムとトリプルボトムのチャートの形状
「こんなに下がったから」の判断は危険
―― コロナ相場を振り返ると、3月の第1週では、2月の後半から本格化した下落がいったん止まり、少しもみ合った局面がありました。ここで反転を期待して買い向かった投資家も多かったようです。
土信田: このタイミングではもみ合ってはいましたが、まだ下落から上昇へのトレンド転換を示す明確なサインが出たわけではない状況でした。こうした時はさらに下押しする可能性も考えて、様子見すべき時期だったと思いますね。
■今年2月からの日経平均株価の日足チャート
注:出来高・売買代金の棒グラフの色は当該株価が前期間の株価に比べプラスの時は「赤」、マイナスは「青」、同値は「グレー」。以下同
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