明日の株式相場戦略=DX、半導体、不動産の出遅れに照準

市況
2020年8月17日 17時25分

週明け17日の東京株式市場は、直近の米国株市場が上昇一服となったほか、前週の反動もあって利益確定売りやむなしの局面が想定された。朝方取引開始前に内閣府から発表された20年4~6月期の実質GDP(速報値)は前期比年率で27.8%減。単に“戦後最悪”という形容詞では伝わらないレベルで、かつて100年に一度の危機といわれたリーマンショック時(09年1~3月期)に年率17.8%減という落ち込みがあったが、「そこから更に10%下に棒グラフを付け足した、ほとんどマンガチックな数値」(中堅証券アナリスト)という状況だった。

しかしこれは、事前の見通しとほぼ一致しており、個人消費の減少幅が予測を下回ったとはいえ、株式市場はおおむね冷静に受け止めた。ベクトルが既に上向きに変わっているのであれば問題なし、バックミラーに映る景色を見て頭を抱える必要はないというのが暗黙のコンセンサスとなっている。もっとも、これは空前の過剰流動性、カネ余り環境が土台となって築き上げられたコンセンサスでもある。

崩れそうで崩れない。米中対立が先鋭化することへの懸念も強まるなか、日経平均は超薄商いのなか次第安の展開を強いられ、後場寄りにいったん大口の売りが出て2万3000円大台攻防も意識させたが、そこからは二枚腰の粘りを発揮した。午後1時過ぎを境に下げ渋る動きに変わり、引け際に手仕舞い売りを浴びたものの、大引けは192円安の2万3096円と下げ幅は200円未満にとどまった。

ほぼ出揃った企業の4~6月決算発表は「新型コロナウイルスを背景に、特需に恵まれた一握りの勝ち組に対し9割が負け組という極めて厳しいものとなったが、今回の収穫はそれでも下がらない相場というコンセンサスを得たこと」(前出のアナリスト)だという。

前週は上昇一貫の展開となり、日経平均は4営業日で960円近い上昇をみせたが、騰落レシオなどを見る限り“過熱感なき強調相場”といってよい。前週末時点で東証1部の騰落レシオは96.5%。意外なことに日経225ベースでは更に低く91.3%に過ぎず、どう見ても強気に傾きすぎているようには思えない地合いである。

個別ではお馴染みのFRONTEO<2158>が決算発表を受け再び覚醒、きょうは一時14%高で3連騰と噴き上げている。四半期黒字化といっても水準的にはまだまだといえるが、注力するライフサイエンスAI分野で光明を捉えているのが大きい。新型コロナ関連の一角でもあり、押し目は買いで対処して妙味あり。このほか、デジタルトランスフォーメーション(DX)関連ではKYCOMホールディングス<9685>やテクノスジャパン<3666>などに上値期待が膨らむ。株価に値ごろ感のある富士ソフトサービスビューロ<6188>も急騰後に調整を入れて目先400円台手前で煮詰まっており、上に放れそうな雰囲気を醸している。

また、半導体関連では先駆した銘柄が利食いに押されているが、一方でこれまで蚊帳の外にあった同セクターの中小型株に4~6月期決算発表を契機に動意含みとなる銘柄が増えている。半導体材料の研磨機などを手掛ける浜井産業<6131>はその典型で既に連日急騰しているが、これに続く銘柄を探す動きが活発化しそうだ。例えば栄電子<7567>は4~6月期営業利益は前年同期比8割増で、持ち前の駿足を発揮しても不思議のない場面だ。

あとは意外性のあるところで、超金融緩和環境が担保された不動産関連。新型コロナウイルスの感染拡大は総論として不動産業界に逆風だが、それも株価的には織り込みが進み、テレワーク普及加速を背景に郊外型物件やその間取りなど新たな切り口で注目される銘柄も出始めている。そのなか、首都圏中心に「クリオ」ブランドを展開する明和地所<8869>は、4~6月期営業利益が前年同期比10倍という変化率で、3%を超える配当利回りかつ0.4倍台のPBRは指標面からの割安感も顕著だ。

日程面では、あすは30年物国債の入札。海外では豪中銀が定例理事会の議事要旨を発表するほか、7月の米住宅着工件数、7月の建設許可件数など。また、米国ではウォルマートの決算発表などに市場の関心が高い。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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