伊藤智洋が読むマーケット・シナリオ【週間展望】 8月23日版
日経平均株価は週明け後に上昇するなら、9月上旬までに2万4000円突破の公算も
1.優先順位の高い情報はいま起こっている動き
日米とも、今年前半の景気の失速は鮮明であり、新型コロナウイルスの問題が依然として燻っている中で、期待していたV字回復を想定しにくい状況となっています。
それにもかかわらず、株価は堅調に推移し続けています。
個人的には、強い理由も明確であって、年末へ向けてまだ十分な上げ余地があると見ているので、上昇の動きをすんなりと受け入れられますが、多くの方は違和感を持っているのではないでしょうか。
7~9月の夏枯れと呼ばれる時期に上昇の流れを作っているのですから、長く市場に関わってきた人ほど、先行きに不安を感じているはずです。
そこで、主観を排除するためにも、今回はまず、値動きを予測するときの優先順位を確認しておきます。判断の基準になる優先順位の最も高い情報は、いま起こっている事象から推測できる展開です。先のことはわかりませんが、目先どうなるということは、いま、まさに表れている値動きから推測することができます。
株価の値動きに対する自分の思惑は、経験値から推測できる展開となりますが、あくまでも想像の範囲を抜けられません。
長期的な値動きは、戦略として作られるものですから、予測というよりも、「(策略を)見抜く」という作業だと考えてください。人の仕掛けによって作られる動きがなければ、未来は予測不可能なのです。これも個人的な意見になりますが、長期的な戦略を見抜くことができたと思えるようになることが、資金が少額の投資家が利益を得る唯一の方法だと考えています。
いま起きている事象は、まさにいまの情勢を表しているものですので、それを無視してはいけません。
チャートは、その時点で、買い側と売り側のどちらが優勢であるかを示します。明らかに弱い流れができていて、上値を強く抑えられる動きになったなら、たいていの場合、それをきっかけにして、下降の流れが勢いづき、下げ幅の大きな動きが表れます。そうならないなら、その時点では多くの市場参加者が積極的に買いたいとは思っていないが、下げ余地が十分にあると見ていないのだと判断できます。
2. 日経平均は週明け後の上昇開始を無視できない展開になった
図1は、最近の 日経平均株価の日足です。日経平均株価は、8月14日に戻り高値2万3338円をつけた後、下値を試す動きへ入っています。
下降開始から4営業日目(個人的に一時的な調整の押し目をつける可能性が高いと推測している期間)となる、8月19日に価格が反発して、それまでの下げが一時的な調整である可能性を示しました。
その翌日の8月20日は、19日の安値を割れて、その結果、上値、下値を切り下げるはっきりとした弱気の流れを示す格好になっています。
さらに、21日は価格が反発しましたが、19日の反発でつけた高値を前に上値を抑えられて、あらためて(19日の高値付近)2万3000円以上の値位置の上値の重さが露呈しています。