明日の株式相場戦略=解散総選挙というジョーカー
きょう(16日)の東京株式市場では、強弱感対立のなか日経平均株価は前日終値近辺での強含みもみ合いで推移した。大引けは20円高で、ソフトバンクグループ<9984>1銘柄で日経平均を64円弱押し上げた。では実質的に軟調相場かというとそうでもなく、TOPIXも3ポイントのプラスで着地。更に東証1部の値上がり銘柄数は6割を超えている。
ここにきて米ハイテク株安が一服、ナスダック総合指数もNYダウにキャッチアップする形で25日移動平均線との間合い(マイナスカイ離)を詰めており、リスク許容度低下による海外投資家の売り圧力が希薄化している。とりあえずは、日本時間あす未明のFOMCの結果やパウエルFRB議長の記者会見を見極めたいというところだが、実際ここを基点に相場の潮目が変わるということもなさそうだ。
歴代最長7年8カ月の長きにわたった安倍内閣が総辞職し、菅新政権が発足した。組閣については、首相を除く20人のポストで8人が再任、初入閣は5人にとどまった。閣僚の平均年齢は60歳ソコソコと比較的若いが、党4役については続投の二階幹事長をはじめ年齢的には高齢なイメージで平均年齢は71.4歳とのこと。もっとも、今年の米大統領選は78歳と74歳の戦いであるから、今は日米ともにオールドパワーが政権の舵取りを担う巡り合わせなのかもしれない。
市場関係者は「客観的にみて論功行賞がなかったとは言い切れない。ただ、代わり映えがしないといっても、安倍政権を継承するという意思を示していたのだから、ここで奇抜な変化を求めても仕方がない。派閥を意識した人選であっても、各派閥の仕事のできる人を一本釣りしたという印象であり、相応に評価できる」(中堅証券ストラテジスト)という声があった。解散総選挙については、新型コロナウイルス感染が下火になった現在、この顔ぶれで支持率を横にらみに10月25日投開票の線もなくはないが、菅新首相は「せっかく総裁になったのだから仕事をしたい」と早期解散に否定的な言動を続けている。もちろん、これが本意かどうかは分からない。「10月17日に中曽根元首相の内閣・自民合同葬を行うことが決まっており、25日投開票の線は日程的に難しいだろう」(生保系調査機関アナリスト)という見方がある一方、「(合同葬後の)10月20日公示で、大阪都構想の住民投票に合わせた11月1日投開票なら可能という思惑がにわかに浮上している」(国内ネット証券マーケットアナリスト)という指摘も出ている。菅新首相が解散総選挙のカードを切る可能性に言及する声が強いのは、いずれにせよ任期はあと1年でそれまでに選挙を行う必要があるということ、そしてやるなら今が最も勝利の条件が揃っているタイミングにあることが挙げられる。また、菅氏がショートリリーフではなく、長期政権の第一歩を踏み出すことを念頭に置いた場合、ここでの決断が極めて重要なアクションともなる。
「少なくとも時間の経過が与党圧勝の度合いを高めることはない。選挙の時期が後ろにズレればズレるほど菅新政権にとって形勢の針は不利な方向に振れるのは自明」(前出の中堅証券ストラテジスト)であるからだ。過去を振り返って、「与党の圧勝が予想される局面で解散総選挙のカードを切った場合、ほぼ株価は大きく水準を切り上げている」(同)という。慎重な姿勢を貫く菅氏がここで手の内にある“ジョーカー”を華麗に切ってくれれば、マーケットにとってもビッグなプレゼントとなる。米国株市場の動向にもよるが、売り方の立場にすれば今秋の解散総選挙の可能性が拭い切れない段階で日本株にショートポジションを積み上げるのは大きなリスクだ。企業のファンダメンタルズはとりあえず不問として、日経平均の上値追いを予想する向きがマーケット関係者の間にも多くなっている。
個別ではDX関連でノムラシステムコーポレーション<3940>、マイナンバーや医療ICT関連の出遅れでODKソリューションズ<3839>。医療ICTではケアネット<2150>も再注目。また、ホームセンターを展開し屋根改修に強みを持つ建設事業者でもある綿半ホールディングス<3199>。日用雑貨品のレック<7874>などにも着目したい。
日程面では、あすは日銀金融政策決定会合の結果発表と黒田日銀総裁の記者会見。8月の首都圏・近畿圏のマンション販売など。また、雪国まいたけ<1375>が東証1部に新規上場。海外では英中銀の金融政策決定と議事要旨発表のほか、9月の米フィラデルフィア連銀製造業景況指数、8月の米住宅着工件数など。(中村潤一)