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2020年9月15日 19時30分
特集

国土強靭化は止まらず、新政権下「防災関連」を問う <株探トップ特集>

―台風シーズン本格化と強靭化主導「建設コンサル関連株」の価値―

前日14日、圧倒的勝利のもと菅義偉氏が自民党総裁に選出された。あす16日に臨時国会が召集され、首相指名選挙を経て菅首相の誕生となる見通しだ。新型コロナウイルス感染症への対応をはじめ、低迷する経済の立て直しなど難問山積だが、加えて頻発化する大規模自然災害への対策も大きな課題といえる。安倍政権が強力に推し進めてきた 国土強靱化は、政権が変わろうとも、もはや立ち止まることの許されない国家的事業だ。安倍政権の政策を継承すると伝わる次期政権下でも、当然のことながら大きなテーマとなる。 台風シーズンが本格化するなか、国土強靱化計画の主導的役割を担う建設コンサルタント関連株を点検した。

●リスクマネジメントで頭角現わす

もはや日本は災害列島と揶揄(やゆ)されるほど、毎年多くの自然災害に見舞われている。昨秋は9月9日に台風15号が関東に上陸、ここから次々に日本列島を豪雨などの自然災害が襲い甚大な被害をもたらすこととなった。今夏も7月には九州豪雨が発生し大きな傷跡を残した。そして今月に入っても大型で非常に強い勢力の台風10号が九州に接近するなど、台風シーズン突入で警戒が強まっている。こうしたなか、株式市場では大豊建設 <1822> 、イトーヨーギョー <5287> [東証2]、ウェザーニューズ <4825> など幅広い分野にまたがる「豪雨関連株」に注目が集まるが、防災などのリスクマネジメントを手掛ける「建設コンサルタント」への期待も大きい。

もちろん、建設コンサルの業務は防災・減災に関わるものだけではない。本来はインフラなど社会資本の整備を進めるうえで、調査・計画そして設計といった分野において事業者を支援することが主な業務だが、近年では専門家集団として、その役割が日増しに大きくなってきている。また、少子高齢化、過疎化など変遷する社会構造を背景に、これに即した街づくりなどにおいても活躍のステージが広がる。

●地味なセクターから面目躍如

株式市場において建設コンサル株は、数年前までさほど注目度の高いセクターではなかった。ある意味、投資家の間では地味なセクターとの印象が強かったかもしれない。その認識を一変させたのが、近年相次ぐ台風などによる大規模な自然災害の発生だったともいえそうだ。温暖化による気候変動が招く集中豪雨など甚大な被害が頻発化する現在、重要性が再認識されたことで注目度が高まり、多くの関連株が昨年9月から年末にかけて株価の居所を大きく変えることにつながった。集中豪雨をはじめとする自然災害への抜本的対策が迫られるなか、建設コンサルの事業フィールドは一段と広がりを見せており、コロナ禍にあっても業績が堅調な企業は少なくない。加えて、株価が高値奪回から一段高が期待される銘柄が多いことも見逃せないポイントだ。気になる点を挙げれば商い薄で流動性に乏しい銘柄が多いことだが、再評価機運の高まりから、昨年同様に出来高増へとつながる可能性もある。

●長大、7月九州豪雨で現地被害調査

長大 <9624> は橋梁や道路、水道といった公共投資向けのウェートが高く、防災・減災に向けた国土強靱化への備えや、主軸である橋梁設計や老朽化対策などに取り組み、ニーズに即応した業務展開で活躍期待が膨らんでいる。同社は、7月の熊本県を中心とした九州豪雨では、いち早く熊本県球磨川流域の被災現場に入り現地被害調査を行った。国土交通省九州地方整備局からの支援要請を受けた建設コンサルタンツ協会九州支部を通じたもので、被害状況の確認を行い、ライフラインである道路の応急復旧計画や橋梁の復旧方針検討に向けた現地調査など、災害支援活動を実施している。業績も健闘している。7日の取引終了後に20年9月期の連結業績予想について、売上高を304億円から308億2000万円(前期比6.3%増)へ、営業利益を19億8000万円から25億円(同13.9%減)へ上方修正している。新型コロナウイルスの感染拡大による影響を受けながらも、国内公共事業の受注増加が寄与し売上高が計画を上回る見通しであるのに加えて、ITを活用した業務遂行の効率化などが利益の増額に貢献するという。株価は1300円手前でもみ合うが、1月につけた年初来高値1348円は目と鼻の先。また、昨年10月末に上ヒゲでつけた1420円も視界に捉えているだけに注目場面は続きそうだ。

●オオバはコロナ禍でも増収増益

一方、民需の比率が高いオオバ <9765> の株価も上値指向が強い。3月中旬に年初来安値となる395円で底を打ち、上昇気流に乗った。きょうは800円台乗せを達成し、1月10日につけた年初来高値970円奪回から次のステージへと期待がかかる。7月9日の取引終了後に21年5月期の連結業績予想を発表。売上高157億円(前期比3.3%増)、営業利益12億円(同4.8%増)と、コロナ禍においても増収増益を見込んでおり、株価上昇を後押ししそうだ。国土強靱化、防災・減災関連業務などの官庁需要や、携帯電話基地局設置、物流施設開発支援業務といった民間需要がともに増加が見込まれるなど、引き続き好調な受注環境を享受する見通し。また、土地区画整理事業などにおける業務代行参画などの事業ソリューション業務の増加も見込まれる。

●アジア航測、被災地撮影で被害状況把握

航空測量大手のアジア航測 <9233> [東証2]も建設コンサル関連株の一角として注目度が高い。同社は、地震、台風や集中豪雨による河川氾濫、土砂災害などの自然災害が発生した際に、被害状況を正確に把握するため、独自判断で自社撮影をしているが、加えて撮影画像を用いたコンサルタント技術者による判読・解析、被災判読図や赤色立体画像の作成なども行っている。7月の九州豪雨でも被災地の空中写真撮影を実施し、情報を公開することで、現地の詳細解明ならびに2次災害の抑制に一役買っている。昨年も台風19号の被害発生直後に、上空から被害地域の緊急撮影を実施するなど、素早い対応を見せていた。同社は8月14日、20年9月期第3四半期累計の連結決算を発表。営業利益は前年同期比2.1倍の22億4800万円となり、通期計画15億円を大きく超過した。売上高は同4.7%増の229億円で着地。航空レーザー計測需要の拡大などから国交省をはじめとした官公庁、自治体向けの事業が堅調だった。通期業績予想は従来計画を据え置いているが、当然ながら上振れる可能性が高い。株価は、前述の2社同様に高値圏で頑強展開をみせており年初来高値をにらむ。

●FCHDは「地球システム科学」買収

建設コンサルの業務は幅広い。都市計画から老朽した橋梁などのインフラの点検などに取り組むことで、変化する社会ニーズを捉え存在感を増している。

FCホールディングス <6542> [JQ]は8月3日、子会社である福山コンサルタントが「新潟市スマートシティ協議会」の事業において、 スマートシティの「令和2年度先行モデルプロジェクト」に選定されたと発表。同プロジェクトは、国交省が先進的技術をまちづくりに生かすスマートシティのモデルを早期に実現するため公募したもの。「スマートシティ実証調査」予算を活用し、実証実験を支援するとともに、全国のプロジェクトの経験、知見を生かしたノウハウ支援などを提供するという。また、4月には防災や環境ビジネスなどを展開する地球システム科学を買収し傘下に収めており、事業展開力や収益基盤の強化も期待される。20年6月期営業利益は前の期比16.5%増の8億6100万円と2ケタ伸長を達成し、21年6月期も増益基調はキープできる見通しだ。

●大日本コン、ダイヤコンサルタントと経営統合でシナジー発揮へ

大日本コンサルタント <9797> [東証2]は、8月7日にダイヤコンサルタント(東京都千代田区)との経営統合に向けた協議を開始することについて合意したと発表。大日本コンは官公庁向け比率が高く橋梁を中心とした構造物の計画・設計でトップクラスだが、地質・地盤の調査・解析で強みを持つダイヤコンサルタントとのシナジーを発揮することで、頻発化・激甚化する自然災害や深刻化する環境問題、社会インフラ老朽化への対応を進め、事業領域及び収益の一層の拡大を図る方針だ。また、両社の知見や設計技術を組み合わせ、エネルギー・環境関連分野において新たな市場の開拓を目指すという。最終契約の締結は来年2月、経営統合の効力発生は来年7月を予定している。株価は、8月に入り上げ足を速め9月2日には年初来高値を更新、現在は高値圏で売り物をこなす状況にある。

●応用地質、ウエスコHD、日本工営は動向注視

また、20年12月期業績予想を下方修正し、株価も調整が続く応用地質 <9755> にも目を配っておきたい。新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、景気の減速や原油・資源価格市場の低迷、移動制限などにより、海外のグループ子会社を中心に売上高が減少していることが下方修正の要因としているが、台風シーズン突入で思惑買いを誘う可能性もある。株価は下値を探る展開にあったが、1200円を割ったところでコツンときた感触も。

そのほかでは、西日本を地盤とするウエスコホールディングス <6091> [東証2]からも目が離せない。同社は前週末の11日大引け後に発表した20年7月期の通期決算で、営業利益が前の期比6.8%増の7億9500万円に伸びたが、21年7月期の同利益は前期比8.2%減の7億3000万円に減る見通しとなった。株価は、決算発表前日まで9日続伸と上昇基調を強めていたものの、大引け後に決算発表を控えた前週末に大きく売り込まれたが、商いも増勢で注視しておきたい。また、総合建設コンサル最大手の日本工営 <1954> は、8月31日の取引終了後に21年6月期の連結業績予想について大幅営業減益を発表。グローバルに展開する同社だけに、新型コロナウイルス感染拡大が業績に大きな影響を与えた格好だ。これを受けた翌日には株価が大きく売り込まれることになったが、ここを起点として切り返しムードも漂う。今月8日には、鋼構造物の設計・調査・点検の専門コンサルタントであるTTES(東京都目黒区)と業務提携を締結したと発表し、これも株価を刺激した格好だ。

防災・減災分野でスポットライトが当たる建設コンサル関連株。注目される背景には日本の急速な社会構造の変化があることを忘れてはならない。建設コンサル株の活躍ステージは、今後更に広がりを見せることになる。

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