明日の株式相場戦略=菅新政権で大相場はあるか

市況
2020年9月17日 17時40分

きょう(17日)の東京株式市場では日経平均株価が反落、今一つ波に乗り切れない状況にある。注目されていたFOMCでは、インフレ率の2%到達及び失業率が完全雇用の水準である4%に戻るまでゼロ金利据え置きを示唆、結果的に2023年まで金利を引き上げないという姿勢を明示した。しかし、NYダウは一時370ドル高近い上昇局面から取引終盤に失速し、ハイテク株への売り圧力が強まるなかナスダック総合指数は140ポイント安でほぼ安値引けとなった。

抗生物質に対する耐性菌のようにと言えば例えは悪いが、緩和環境に慣れてしまうとこれまでの環境が継続することでは飽き足らなくなり、もっとその先の何かを求めてしまう。FRBの政策でいうならゼロ金利環境の継続が担保されるのは当然として、緩和的政策を更に強めてほしいという欲求を惹起させる。FRBへの追加緩和期待ということであれば、それは一段の量的緩和推進(資産購入の拡充)ということになるが、これについて会見に臨んだパウエル議長の発言は慎重なニュアンスを与えた。ハト派体制の長期維持を示す一方で、少しだけタカ派的要素を匂わせたことにマーケットが臍(へそ)を曲げたというのが、米国株が終盤につるべ落としとなった真相といえる。

今晩の米国株市場もこの流れを引き継ぐのかはまだ分からないが、軟調な米株価指数先物を横目にきょうの日経平均は冴えない展開となった。米国株の波乱に用心する形で、機関投資家を中心に主力株の買いポジションを軽くする動きを誘発、日経平均はマイナス圏での推移を余儀なくされ、結局150円あまりの下げで着地した。

なお、きょうは日銀の金融政策決定会合の結果が発表されたが、こちらは現状維持で株式市場は織り込み済みというよりは、あまり意識が向いていないという印象である。黒田日銀総裁は会合後の記者会見で菅新政権との連携を強調、23年4月までの任期を全うするとした。FRBのフォワードガイダンスを意識して、強力な金融緩和により、2%の物価上昇を目指す方針を改めて示したが、こちらはこれまでの経緯を考えると説得力に欠けるのは致し方ない。黒田総裁としてはこの日米の金融政策会合を通過して、過度なドル安・円高に振れるということは避けたい。それを念頭に置いて発言に苦慮したと思われるが、足もと円が買われる流れになっているのは少々気になるところだ。

ただ、ここはもう少し大局的な見地で相場を俯瞰したい。2012年末を基点とするアベノミクス相場は米国に追随する形であったにせよ、まさに歴史に刻まれる大相場といっても過言ではなかった。しかし、日経平均2万4000円台という大陸を突き進む展開には至らなかった。上陸はしてもとたんに引き戻され、再び沖に流される展開が繰り返されてきた。18年1月の高値2万4124円、同年9月の高値2万4120円、10月高値2万4270円、更に19年の12月は2万4066円、20年1月に2万4083円、そしてコロナ暴落直前の2月は2万3873円で目先の天井を打っている。菅新政権に大いに期待したいところだが、アベノミクス相場の余熱で2万4000円近辺の因縁場を突き破って前に進めるほど甘くはない。逆にここを抜ければ滞留出来高は薄く実質的な青空圏に入る。行政のデジタル化、地方経済の活性化や地方分権の促進といった要諦を軸に、もう一押し、マーケットにダイナミズムを呼び戻すような政策を期待したいところだ。

今回、米国株がコロナバブルの何合目にいるのかは分からないが、ユーフォリア(陶酔)に近づく過程にあるとすれば、日本株はまだそれよりもかなり後方で懐疑のなかで漂流を続けている。裏を返せば、それだけ上値に対する可能性が大きいという見方もできる。ショートリリーフでは終わらせない、しがらみからの脱却、アンシャンレジームの打破を掲げる菅新首相の本気を試すうえでは年内の解散総選挙、これが一つの試金石になる。

日程面では、あすは8月の全国消費者物価指数(CPI)が朝方取引開始前に総務省から開示。また、引け後に8月の訪日外客数が発表予定。海外では、ロシア中銀の金融政策会合、8月の英小売売上高のほか、米国では9月の米消費者信頼感指数(ミシガン大学調査・速報値)、8月の米景気先行指数、4~6月期の米経常収支などが注目となる。

(中村潤一)

出所:MINKABU PRESS

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