明日の株式相場に向けて=ドコモTOBの波紋、菅政権の“本気”を暗示
きょう(29日)の東京株式市場は日経平均が朝安後に下げ渋る展開となり、後場に入るとプラス圏に浮上。その後も売り物をこなし、大引けは27円高の2万3539円と小幅ながら3日続伸となった。配当権利落ちに伴う下落圧力が140円強と試算されており、実質的には170円程度の上昇となる。もっともTOPIXはマイナス圏での着地となり、値下がり銘柄数が値上がり数を上回っており、決して強い地合いとはいえなかった。前日の欧米株が大幅高したことはポジティブ材料だが、これに先立って日経平均は前日の後場終盤に先物主導で上げ足を強めていたこともあって、先づけで買われた分の反動が出た。ただし、マザーズ市場など新興市場の強さが際立ち、個人マネーは回転が効いていると思われる。出遅れ感の目立つバイオ関連などに物色の矛先が向いている。
とはいえ、きょうマーケットの注目を集めたのは何といってもNTTドコモ<9437>だ。NTT<9432>がTOBで同社株を取得し、完全子会社にする方針が伝わったことから一気に人気化して取引時間中は値がつかず、大引けストップ高配分となった。もっとも前日の米相対取引市場で同社株のADRが急騰し終値ベースで30%高を超えていたことから、当然きょうの展開は予想されたこと。時価総額9兆円近い企業がマドを開けて舞い上がるさまはインパクトがあったが、TOBは1株3900円で実施されることが決まり、あすもカイ気配で水準を切り上げることになりそうだ。一方、KDDI<9433>やソフトバンク<9434>は下値模索が続き新安値。「今回のNTT親子一体化は、5G分野などへの成長分野投資を図る目的というのは表向きに過ぎず、実際は菅首相が掲げる携帯料金値下げ対応への準備が主眼との見方が強い」(国内証券アナリスト)という。値下げによる収益圧迫が現実味を帯びてきたことがKDDIとソフトバンク株下落の背景にある。ソフトバンクについては配当利回りが7%超という水準にもかかわらず実需売りが止まらなかった。配当性向連動で収益低下の際の減配リスクまで織り込みに行く動きだ。
あすのスケジュールは、8月の鉱工業生産速報値、8月の住宅着工など。また、東証マザーズ市場にアクシス<4012>が新規上場する。海外では9月の中国製造業・非製造業PMI、9月のユーロ圏消費者物価指数のほか、9月の米ADP雇用リポートが注目される。