トランプの「功績」とは?(下)【フィスコ・コラム】

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2020年11月1日 9時00分

トランプ米大統領が再選を果たせなかった場合、大統領就任前から批判的だったアメリカの主流派メディアは自分たちがトランプの再選を阻止したと胸を張るのでしょうか。メディア(マスコミ)業界を取り巻く環境は依然として厳しいものがあります。トランプ大統領が今回の選挙で敗北しても、メディアは勝者とは言い切れず、業界の斜陽化を止めることは難しいかもしれません。

アメリカでは、新聞社が特定の候補者への支持を明確に示し、その候補者への寄付などで勝利のお膳立てをするカルチャーがあります。前回2016年の大統領選では新聞社100社のうち、トランプ氏を支持したのはわずか2社でした。今回もニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなど、いわゆる主流派メディアの間では、民主党候補のバイデン前副大統領に対する批判的な意見はあまり見られません。

現在のアメリカで共和党は保守、民主党はリベラルと位置づけられますが、一部の識者は「共和党の方が自由主義的であるのに対し、民主党は教条主義的」であると指摘しています。実際、経済・社会問題で共和党は政府の介入を基本的に嫌うスタンスを取ってきました。民主党は1980年代までは社会民主主義を志向した庶民の政党(あるいは大きな政府)でしたが、90年代以降は政治エリート層(エスタブリッシュメント勢力)が主導する政党に変貌を遂げたとの見方があります。

メディアには、社会的弱者を視野に入れて権力を監視する役割が与えられており、かつて民主党をそうした視点から支持するのは理に適っていました。しかし、民主党の変化に追随した主流派メディアは本来の役割から離れつつあり、一部からは「同党執行部の広報担当と呼んでも過言ではない」との意見さえ出ているようです。

主要メディアがそのような状況であるとすれば、世界のリーダーたるべきアメリカの大統領としてはあまりにも表現がシンプルで、時に常識を逸脱するような発言をするトランプ大統領を主流メディアが厳しく批判するのも不自然ではないように思えます。報道機関であるなら、なるべく中立的であろうとする努力は不可欠なはずですが、一部の取材対象への憎悪とも感じられるような報道が横行すれば、国内外の読者のアメリカに対する正確な判断を妨げるおそれもあります。

「トランプ叩き」は一時的に購読部数の増加につながったかもしれませんが、信ぴょう性の低い記事は自らの信頼を失墜させてしまいます。その結果として経営状況はさらに悪化するケースもあるようです。米ピュー・リサーチ・センターによると、平日の新聞発行部数は電子版の有料読者を含めても年々減り続け、現在は過去最低水準に落ち込んでいます。

今回の大統領選の結果はどうあれ、主流派メディアがトランプ大統領に対する批判を続けてきたことは否定できませんが、それでもトランプ大統領は最初の任期をどうにか終えようとしています。トランプ大統領が一部メディアの報道について「フェイク・ニュース」と決めつけて、政権運営に邁進する姿を見て、アメリカ国民の一部は「トランプ大統領は庶民の敵である見えない相手と戦っている」と感じているかもしれません。アメリカの大統領選挙については、「両候補の支持率は世論調査ほどの差はない」との意見が少なくないことから、結果が出るまでは予断を許さない状況が続くことになりそうです。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

《YN》

提供:フィスコ

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