田部井美彦氏【新型コロナで欧米波乱、米大統領選後の景色は?】(1) <相場観特集>
―2万3000円台で強調展開の日経平均、11月相場を読む―
名実ともに11月相場入りとなった週明け2日の東京株式市場は、大きく買い優勢に傾いた。前週は週を通じて高い日がなく週末は350円強の大幅安に見舞われたが、足もとはリバウンド狙いの動きが顕在化した。しかし、何といってもあす3日に米大統領選の投開票というビッグイベントを控えマーケットには緊張感が漂っている。東京市場はあすが文化の日で休場ながら、4日以降の相場に大統領選の結果が色濃く反映されることになりそうだ。先読みに定評のある市場関係者2人にずばり11月相場の展望を聞いた。
●「日本株の相対的堅調さ目立つ、中国景気の回復が追い風に」
田部井美彦氏(内藤証券 投資調査部 リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト)
米大統領選挙がいよいよ迫ってきた。相場は大統領選の結果を先取りする形で動いているが、共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン候補のどちらが当選したとしても、選挙後は財政の裏付けや政策の優先順位などが考慮され、もう一度仕切り直しの展開も予想される。そんななか、足もとで欧米市場に比べ日本株の相対的な堅調さが目立つ。これは新型コロナウイルスの感染が比較的抑えられていることに加え、中国景気の回復が日本企業に波及し業績の押し上げ要因となっていることがあると思う。
実際、日本企業の第2四半期の決算は、第1四半期に比べ減益幅は縮小してきている。この日本株の相対的な強さを評価する動きは今後も続くだろう。とりわけ、中国向けの受注が伸びる電子部品関連などに見直し余地があると思う。
個別企業では、ソニー <6758> に注目している。ゲーム機の「プレイステーション5」は年末商戦の人気が期待できるほか、電子部品の画像センサー(CMOS)は中国・ファーウェイ向けの受注は既に止められており、業績への悪影響は織り込んでいる。むしろ他の中国スマホメーカー向けの需要やゲーム関連、動画配信事業などへの評価で株価には一段の上値余地があるとみている。また、日東電工 <6988> はディスプレー向け偏光フィルムなどの需要が中国スマホメーカーやノートパソコン、タブレット向けなどに伸びている。シークス <7613> は電子機器の受託製造(EMS)事業を手掛けているが、東南アジアや中国向け受注比率が高く、中国景気回復の追い風を享受できる。
更に、ソニー系の不動産テック企業のSREホールディングス <2980> [東証M]にも注目したい。ソニーが金融事業に力を入れるなか、金融と親和性が高い不動産のデジタルトランスフォーメーション(DX)関連銘柄として期待したい。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(たべい・よしひこ)
内藤証券リサーチ・ヘッド&チーフ・ストラテジスト。株式市況全般、経済マクロの調査・分析だけでなく、自動車、商社、アミューズメント、機械などの業種を担当するリサーチアナリストとして活動。年間200社程度の企業への訪問、電話取材、事業説明会への参加などを通して「足で稼ぐ調査・情報の収集」に軸足を置いている。
株探ニュース