上昇相場「再起動」、バブル後高値で時機到来の「好決算・特選材料株5」 <株探トップ特集>
―過剰流動性相場の佳境はこれから訪れる、テーマ性に富む“押さば買い”の業績好調株―
●29年ぶりの高みに到達した日経平均
株式市場は経済の先行きを映す鏡と言われるが、必ずしも実体経済と軌を一にするとは限らない。ここにきての株高局面は、まさに経済とは遊離した異なる次元で進んでいる。
週末6日の東京株式市場は日経平均が4連騰で一時280円あまり上昇し2万4389円まで上昇、大引けも219円高の2万4325円で着地した。これは連日の年初来高値というよりももっと大きな意味がある。アベノミクス相場の頂点として刻まれる2018年10月2日の終値2万4270円を上回ったことだ。よくバブル後の高値更新という形容がなされるが、これはアベノミクス相場で高値を形成するたびに使われてきた常套句でもある。今回は菅政権発足後早々にその場面に遭遇、これまで強く意識されていた上値のフシを突破し、ついに1991年11月以来29年ぶりの高みに歩を進めた。
●コロナ禍での米大統領選で混迷の極みに
国内外を見渡せば経済はかなり疲弊している。いうまでもなく新型コロナウイルスの感染拡大による影響である。皮肉にも発生元の中国はいち早く克服した形となっているが、それ以外の国、特に欧米は由々しき事態に陥っている。感染者数の拡大が止まらず、欧州では経済活動の規制が再び強まった。その影響は今後の経済指標に反映されそうだ。また、米国も1日当たりの新規感染者数が10万人を超える状況で、その対応に追われている。
そうしたコロナ禍で、政治における今年最大のビッグイベントである米大統領選が行われた。過去類を見ない大接戦の末、現状はバイデン候補勝利の公算が大きくなったが、トランプ氏も郵便投票の正当性を否定して法廷闘争に持ち込む構えだ。先行き不透明感は拭えず、前方の霧は大統領選前よりもむしろ濃くなった印象すら受ける。追加経済対策の成立も当面おあずけとなりそうだ。
●世界規模の超金融緩和、コロナバブルの入り口
しかし、事実は小説よりも奇なり、株式市場は混迷を極める政治・経済環境を横目に、世界同時株高ともいえる強烈な上昇トレンドを構築しているのは周知の通りだ。直近でみても米国株市場ではNYダウが4営業日合算で1900ドル近い上昇、日経平均も4営業日で1400円近く水準を切り上げた。この株高の原動力は何かといえば、市場を取り巻くじゃぶじゃぶの資金、いわゆる過剰流動性にほかならない。“不景気の株高”というが、今の状況はその究極モデルであり、各国中央銀行による徹底的な金融緩和策が株式市場に投資マネーを誘導している。
短期的な視点では今の苛烈なまでの株価上昇の反動に見舞われる場面もありそうだ。しかし、結論から言えばそこは買い場となる。バブル的環境といっても過言ではない今の株式市場において、当局に金融緩和の蛇口を締める動きがみられない限り、マーケットの時価総額は膨張を続ける。のちのち歴史的に振り返って、2020年春を起点に始まった上昇相場が「コロナバブル」と命名されることになったとしても、今はまだその入り口にあるといってよい。
●好決算が光るテーマ材料株を狙え
経済環境は極めて厳しいなかにあって、現在たけなわとなっている企業決算は、新型コロナに対する耐性の強い業態を中心に健闘しているところが多い。製造業であれば電子部品や半導体周辺企業、また内需系では巣ごもり 消費やシステム開発・ITソリューション関連などの業態に事前コンセンサスを上回る実績及び見通しを示す企業が相次いでいる。決算発表が一巡すれば、スガノミクスを追い風に再び有望テーマに乗る成長力に富んだ中小型株に市場の熱視線が向かうことになる。目先的には為替が円高方向に振れていることが、日本株にとって警戒材料に映るが、内需型の成長シナリオを持った企業であれば問題ない。むしろ、消去法的に物色の矛先が向きやすくなる可能性がある。
今回は、足もと好決算を発表した銘柄の中から、テーマ性が豊富でここから株価の一段高が有望視される妙味株を5銘柄選出した。
【グリーは巣ごもり消費追い風に見直し機運】
グリー <3632> の500円台半ばのもみ合いは仕込み好機とみられる。9月30日と10月28日に2回マドを開けて買われているが、目先筋の売りを着実に吸収しており、早晩600円台回復から一段の上値が見込めそうだ。コロナ禍にあってレジャー分野でもゲームなどの巣ごもり消費が強さを発揮している。そのなか、スマートフォンゲームに経営の重心を置く同社は、足もと収益改善色を強めている。ゲーム事業では新会社グリーエンターテインメントを設立し強化を図っている。20年7-9月期は減収ながら営業利益段階で前年同期比36%増と急拡大した。7月に配信した主力のスマホゲーム「シノアリス」のグローバル版が伸びているほか、今月5日から「アナザーエデン」の中国向け配信をスタートさせた。会社側では「いずれも人気タイトルで(業績寄与への)手ごたえを感じている」としている。このほか、バーチャルライブ配信アプリ「REALITY」の強化・コンテンツ拡充も進めている。
【No.1は有力子会社擁し業績も高成長トレンド】
No.1 <3562> [JQ]は足の速さが魅力。目先調整一巡から13週移動平均線をターニングポイントに上昇転換が期待できる。直近1株を2株にする株式分割を実施しており、流動性が高まっている点もポイント。同社はOA機器やサーバーなどの販売及びメンテナンスを展開し、自社企画で好採算の情報セキュリティー商品も扱う。子会社アレクソンが同社の収益に大きく貢献しているが、アレクソンは非接触3D受付システム「3D-AXI.01」の販売を今月から開始し、空中ディスプレー関連としても要注目の存在。No.1によると「(アレクソンは)FFRIセキュリティ <3692> [東証M]とサイバーセキュリティー分野で協業体制にあるほか、10月には台湾のAMIT Wirelessと5G対応製品の販売アライアンスを締結した。また、NTTグループとはリモートワーク導入支援サービスで当社を含め3社体制で連携している」とする。21年2月期営業利益はアレクソン効果もあり前期比56%増の5億6300万円と大幅な伸びを見込む。
【ストライクは事業承継ニーズ捉え成長路線邁進】
ストライク <6196> は10月中旬の上場来高値7020円を形成後、調整局面に入り漸次水準を切り下げていたが、ここにきて13週移動平均線とのプラスカイ離をほぼ解消し仕切り直しに動いている。中小企業を主要顧客とする独立系のM&A 仲介会社でネットを活用したマッチングで優位性を持つ。新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が停滞し、資金繰り面で体力のない企業は解散や休廃業を強いられるケースも増えている。同社は数年来成約件数が増勢にあり、大型案件の寄与でトップライン、利益ともに急成長路線を走っている。20年8月期は36%増収、58%営業増益という高変化をみせたが、21年9月期も13ヵ月の変則決算ながら増収増益基調が継続できそうだ。今期はM&Aの成約組数について前期比57件増の191組を計画。これについて会社側では「営業力の強化が奏功している。今後中期的にも中小企業の事業承継ニーズは旺盛で、需要開拓余地が大きい」としている。
【キューブシスは金融向けシステムで時流に乗る】
キューブシステム <2335> は調整一巡、10月21日につけた上場来高値1747円の奪回は比較的早い時期に実現しそうだ。金融、流通、通信業界向けなどを主軸にシステム開発やデータベース構築などを展開する。金融向けではリテールバンキングの中枢である顧客管理システムに強く、富裕層向けプライベートバンキングなどにも実績。ネットバンキングシステム構築でも実力を有する。菅首相が掲げる政策目標のなかで骨子の一つである地銀再編では同社にビジネスチャンスが巡るとの思惑があり、マーケットではテーマ買いの対象として波状的に投資資金を誘引している。業績も好調だ。20年4-9月期営業利益は前年同期比41%増の5億5200万円と大幅な伸びを達成した。システムエンジニア自らが営業を担当することにより、顧客ニーズを迅速かつ的確に捉えた提案を可能としている。また、システム構築後も継続的にシステム改善を行い、高い信頼性を勝ち得ている。
【ITメディアはバーチャルイベントで飛躍へ】
アイティメディア <2148> が力強い戻り足を形成しており、3000円台活躍へと歩を進めそうだ。10月14日の3070円をクリアすれば戻り売り圧力のない青空圏に突入する。IT系などを中心としたニュースサイトを運営するほか、旬ネタサイト「ねとらぼ」をはじめとした非IT系メディア育成にも傾注し業容を広げている。ネット上でBtoBの「見込み顧客」を発掘して営業機会の創出を支援するリードジェネレーション事業に力点を置くが、ウィズコロナ環境が長引くなか展示会やセミナーなどをオンラインで開催する需要の高まりを受け、バーチャルイベント関連の受注が急拡大している。業績は新型コロナウイルスの影響をものともせず絶好調に推移、特に利益の伸びが著しく、営業利益は33%増益を達成した20年3月期に続き、21年3月期も前期比48%増益の17億3000万円と成長を加速、大幅に過去最高益を更新する見通しにある。
株探ニュース