株式相場29年ぶり高値の死角、注意すべきポイント2つ<東条麻衣子の株式注意情報>

市況
2020年11月9日 20時00分

2020年最大の注目イベントであった米国大統領選はバイデン氏が勝利し、かつトリプルブルー(民主党が大統領選のほか上下両院も制する)の可能性も残されているとの見方により、株式市場のみならず金(ゴールド)や原油といったコモディティにも資金が押し寄せるリスクオン状態となっている。

11月9日の東京市場では、日経平均株価が29年ぶりに高値を更新した前週末の勢いを引き継ぎ、514円高の2万4839円と買いの勢いが止まらず2万5000円大台にあと一歩のところに肉薄している。

現状での勢いを見る限り、更に上値を伸ばしそうだが、だからこそ注意しておきたいポイントが2つある。それは空売り比率と為替の動向である。まず、空売り比率をみてみよう。

■空売り比率(価格規制あり)の1日平均金額の推移

(※価格規制ありの1週間分の合計をその週の日数で割った1日平均単価、単位:百万円)

10月5日週  857081

10月12日週 789758

10月19日週 773032

10月26日週 921975

11月2日週  1052874

以上のように、足もとで空売り比率の金額の上昇が鮮明になってきている。絶対額ではまだ警戒するほどの水準ではないが、この数字が1300000~1400000(百万円)辺りに入ると、海外勢によるまとまった売りが観測されて日経平均株価も調整することが多いだけに、この金額の積み上がりには注意しておきたい。

■為替市場で緩やかながら円高に

為替市場は現在、トレンドとして円高・ドル安基調にあるが、これはバイデン政権が今後景気対策の強化に伴って国債増発へと動くことを織り込んでいると考えられる。安倍政権が量的緩和により円安を誘発した時と逆のバイアスが働く可能性がある。

また、バイデン政権は、対中政策において不均衡の是正効果が不明確だった関税政策から為替政策へと舵を切るのではないか。そうであるならば、米国に対して中国同様に多額の貿易黒字を記録している国の通貨にも上昇圧力はかかりやすくなるだろう。

中国では通貨政策を国家が管理しており、どこまで元高にできるかは未知数だが、相手国ばかりでなく米国自身も少なからず傷を負った関税政策から為替政策へと軸足を移す可能性は高いのではないか。だとすれば、円高リスクのある日本の輸出産業は買いにくい展開になると考えられる。

11月5日付でブルームバーグが報じた「円高が重しかアジア回復が追い風か-日本株への海外勢見方分かれる」では、円高を理由にブラックロックが日本株をアンダーウエートに格下げしたと伝えている。

現在は米新政権への期待に覆い尽くされた株式市場では、円高・ドル安を無視したリスクオン一色に染まっているが、マーケットが落ち着きをみせてきた際には、ドル高・円安が及ぼす輸出産業への影響を無視できなくなる可能性があるのではないか。

株式市場の勢いはまだとどまることはないかもしれないが、これから輪郭が鮮明となるバイデン政権の政策と為替動向の行方はしっかりと注視しておくべきだろう。

◆東条麻衣子

株式注意情報.jpを主宰。投資家に対し、株式投資に関する注意すべき情報や懸念材料を発信します。

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