「本番」迎えるコロナ禍のユーロ【フィスコ・コラム】

市況
2020年11月15日 9時00分

新型コロナウイルス感染第2波への警戒感が世界で高まりつつあります。今年の最重要イベントだった米大統領選を終え、今後は感染拡大をいかに抑えられるかが金融市場のテーマ。とりわけ欧州では非常事態宣言が相次ぎ、ユーロの値動きにも影響しそうです。

10月30日に発表されたユーロ圏の7-9月期国内総生産(GDP)は前期比+12.7%と、記録的な減速となった4-6月期の-11.6%から急激に持ち直し、新型コロナの打撃を帳消しにしたかにみえます。ただ、前年同期比ではマイナスで、V字回復とはほど遠い内容です。足元では新型コロナ拡大による制限措置の再強化で、一段の減速懸念が広がり始めました。このままだと、10-12月期は再び域内経済が収縮しそうです。

欧州では秋口以降、新型コロナ感染拡大が顕著になり、10月下旬にはスペインで非常事態となりました。ほかにイタリアやフランス、ドイツが主要都市の都市封鎖(ロックダウン)に踏み切るなど、深刻さが増しています。11月に入るとポルトガルやノルウェーにも外出制限などの波が拡大。中欧や東欧も同様、感染は欧州全域に広がる可能性があり、欧州中央銀行(ECB)の金融政策にも影響が見込まれます。

ECBは10月29日の理事会で緩和的な金融政策の維持を決定しました。ラガルド総裁はその後の記者会見で域内経済について夏ごろは力強さが戻ったものの、部分的で不均衡な回復にとどまったとし、想定を上回って勢いを失っていると指摘。そのうえで、次回12月10日の理事会で政策調整の必要があるとの見解で一致したと述べており、一段の緩和的なスタンスを示しました。

約100年前に流行したスペインかぜは、第1波よりも第2波の方が被害をもたらしたことがよく知られています。足元のコロナ禍を見ても、春ごろに迎えた最初のピークを越した安心感のせいか、感染者の増加が鮮明です。そのため目先も制限措置の強化による経済の下押しは避けられないかもしれません。今後は域内のPMI(購買担当者景気指数)など経済指標がどこまで悪化するかが注視されるでしょう。

ユーロ・ドルは7月の欧州連合(EU)復興基金創設を好感した買いが強まり、8月31日には2018年4月以来、1年4カ月ぶりに心理的節目の1.20ドルまで一時値を上げました。が、ECB当局者のユーロ高けん制発言を受け、その後は失速。足元では、米大統領選でメインシナリオのバイデン民主党候補の勝利が押し上げ要因となりました。ただ、あくまでリスクオンのドル売りで、積極的なユーロ買いは限定的です。

※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

(吉池 威)

《YN》

提供:フィスコ

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