為替週間見通し:伸び悩みか、経済制限強化で景気減速の可能性
【今週の概況】
■ウイルス感染拡大を警戒してドル売り強まる
今週のドル・円は弱含み。米モデルナ社は開発中の新型コロナウイルスワクチンを巡る大規模な第3治験で高い有効性が確認されたとの暫定分析結果を発表し、ワクチン実用化によるすみやかな景気回復への期待でドル買い・円売りが一時優勢となった。しかし、17日発表の10月小売売上高は予想を下回る低い伸びにとどまったことや、米国におけるウイルス感染の大幅な増加を警戒してリスク選好的なドル買いは縮小した。
20日のニューヨーク外為市場でドル・円は伸び悩み。103円86銭まで買われた後、103円70銭まで下落した。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長はムニューシン財務長官の要請に応じて、新型コロナウイルス向け緊急融資プログラム資金の返還に応じる意向を示したことがドル売り材料となった。ドル・円は103円83銭でこの週の取引を終えた。今週のドル・円の取引レンジは103円65銭から105円13銭となった。ドル・円の取引レンジ:103円65銭-105円13銭。
【来週の見通し】
■伸び悩みか、経済制限強化で景気減速の可能性
来週のドル・円は伸び悩みか。米国における新型コロナウイルスの感染者数は大幅に増加しており、経済制限などの強化によって景気減速の可能性が高まりそうだ。もう一段の金融緩和が観測され、株価や長期金利の低下を手がかりとしたドル売りが想定される。直近で発表された11月ミシガン大学消費者信頼感指数、11月NY連銀製造業景気指数、10月小売売上高は市場予想を下回る低調な内容だった。
来週発表されるマークイット11月製造業・サービス業購買担当者景気指数(PMI)、11月CB消費者信頼感指数、7-9月期国内総生産改定値などの経済指標が市場予想を下回った場合、景気減速への警戒感が一段と高まりそうだ。12月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)での追加緩和に思惑が広がれば、長期金利の低下を招き、ドルの下押し要因となりやすい。
米国の政治情勢の不透明感も嫌気されそうだ。今月3日に行われた大統領選はバイデン民主党候補の勝利がほぼ確定したが、トランプ大統領は敗北宣言をせず、政権のスムーズな移行は不透明だ。追加経済対策に関する与野党協議の行方も注視されよう。一方、コロナ対策のワクチン開発に関しファイザー、モデルナなど大手メーカーによる臨床試験が成果を上げ、早期実用化が待たれる。相場の押し上げ効果としては弱まっているものの、金融市場にとっては好材料で、リスク許容度の低下を抑制する手がかりとなろう。
【米・マークイット11月製造業・サービス業PMI】(11月23日発表予定)
11月23日発表のマークイット米11月製造業・サービス業購買担当者景気指数(PMI)が
市場予想を下回った場合、株安・ドル安につながる見通し。10月はサービス業の改善が目立ったが、コロナ感染再拡大の影響が懸念される。
【米・7-9月期国内総生産(GDP)改定値】(11月25日発表予定)
11月25日発表の米7-9月期国内総生産(GDP)改定値は、コロナまん延に伴う制限措置の影響で急激に持ち直した速報値から下方修正された場合、持続的な景気回復への期待は後退し、株安・ドル安の要因となろう。
予想レンジ:102円00銭-105円00銭
《FA》