日経平均は4日ぶり反発、ワクチンの早期普及への期待感が株価押上げ/ランチタイムコメント

市況
2020年12月9日 12時10分

日経平均は4日ぶり反発。276.44円高の26743.52円(出来高概算5億990万株)で前場の取引を終えている。

前日8日の米国株式相場は上昇、ダウ平均は104.09ドル高の30173.88ドル、ナスダックは62.83ポイント高の12582.77ポイントで取引を終了した。米当局がファイザー開発の新型コロナワクチンの有効性に良好な見解を示したことや、共和党幹部が追加経済対策に関し協議すると報じられたことなどが好感された。米国株高を受けた前場の東京株式市場は買いが優勢の展開となった。東京市場でもワクチンの早期普及による経済活動正常化への期待感が株価を押上げた。また、取引開始前に発表された10月の機械受注統計で受注額の伸びが市場予想を上回ったことも株価支援要因となった。

個別では、21年1月期第3四半期(20年2-10月)営業利益が前年同期比2.9倍となったコーセーRE<3246>、株式分割を発表した第一カッター<1716>が10%を超す大幅高となり、23年4月期にも連結営業利益を今期見通し比72%増の100億円に増やす計画だと報じられたヤーマン<6630>、国内シェア首位のレコメンドツールのベトナムでの販売権を取得したと発表したアウン<2459>、東京都が2030年までに新車全てを電動車に切り替える方針だと報じられたことを受けEV充電スタンドを手掛けるモリテック<5986>、業績の大幅改善を予想して米系証券が格上げした日本ケミコン<6997>、良好な費用削減の伸長などから国内証券が格上げしたトヨタ紡織<3116>が上げた。

一方、21年1月期第3四半期(20年2-10月)営業利益が前年同期比31.6%減となったCasa<7196>、21年1月期営業利益が前期比40.0%減予想と発表したミライアル<4238>、大株主の香港ファンドがTOBに同意しTOB価格引き上げ期待が後退した東京ドーム<9681>、20年10月期損益見込みを下方修正したハイレックス<7279>が下げた。

セクターでは、非鉄金属、空運業、パルプ・紙、機械、精密機器などが値上がり率上位。一方、証券商品先物、電気・ガス業、石油石炭製品が値下がりした。東証1部の値上がり銘柄は全体の61%、対して値下がり銘柄は33%となっている。

一昨日7日の当欄では、コロナ禍がもたらす世界の勢力図の変化をベトナムを例にとり考えた。今回この件をもう少し考えてみる。一見、足元の株式市場と関係が薄い話に見えるが、事によっては近い将来の株価に影響するかもしれない話題だ。

菅首相は、日米同盟の深化とともに、引き続き「自由で開かれたインド太平洋」を推進する方針のようだ。一方、ここにきて従来の方針が多少修正されているように見えるのが欧州だ。「中国一辺倒」だと思われていたドイツがこの9月に初めて「インド太平洋戦略」を打ち出した。さらに、英国が同国海軍史上最大の艦艇である最新鋭空母クイーン・エリザベスを中核とする空母打撃群を東アジアに長期展開する見通しだと今朝付の日本経済新聞が報じている。中国へのけん制の意味もあるようだ。記事ではさらに、フランスも遠からず空母部隊などを派遣する展開が予想されるとしている。一連の動きからは「インド太平洋」が欧州各国の安全保障においても最も重要な地域のひとつになっていることが窺える。

対して中国。貿易・通商に関するニュースが相次いでいる。11月15日に東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に署名したと伝わり、直後の20日には環太平洋経済連携協定(TPP11)への参加意欲を表明した。TPPは「環太平洋」の経済連携協定だが、来年初めには大西洋の国、英国が参加を申請しそうだ。一方、日中韓。日本と韓国にとって中国は最大の貿易相手国。中国にとって日本と韓国はそれぞれ第2位と3位の貿易相手国であり1位と2位の輸入相手国だ。3カ国いずれにとっても、日中韓自由貿易協定(FTA)はメリットが大きいが、持ち回りで開く3カ国の首脳会談すら見送られる状況で、ここも交渉は容易に進みそうにない。

このように、安全保障も貿易・通商も変数が多すぎて近い将来の姿すら描くことが困難だが、すでにアジア、インド太平洋での主導権を巡る動きは急速に激しくなっており、来年にかけての株式相場にも影響する可能性があると考えている。このことに関しては次の機会に考えてみたい。

さて、後場の東京株式市場で日経平均はもみ合いとなりそうだ。引き続き足元の新型コロナ感染拡大が懸念されるが、一方で、市場ではFRBが早期の追加緩和策を打ち出すとの見方もあり、上値、下値とも探りにくい。また、今週末11日の株価指数先物・オプション12月物の特別清算指数(SQ)算出を前に、ポジションを一方に傾けにくいとの声もある。積極的な売買が手控えられる中で、やや様子見ムードが広がる可能性もありそうだ。(小山 眞一)

《AK》

提供:フィスコ

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