伊藤智洋が読む「2021年新春相場 マーケット・シナリオ」 <新春特別企画>

特集
2021年1月3日 8時00分

「2021年の日経平均株価の上値の目安は1月中旬頃に見えてくる」

◆一定の流れができている場合の値動きの幅が大きくなってきている

価格が上昇するには、多くの市場参加者の同意を得るだけでなく、市場参加者自身が積極的な行動を起こす必要があります。

不安から逃れたい一心で、その時点での予測など関係なく手仕舞いが入ってしまう下げの流れと異なり、上昇を開始するには多くの市場参加者を突き動かす何かが必要になります。長い期間の上げには、気持ちを持続させるため、安心できる材料が必要になります。

ですから、下降の流れは「短い期間で一本調子に下げる」「長い期間で不規則に下げる」というパターンになりやすく、上昇の流れは「短い期間で一本調子に上げる」「長い期間で規則的に上げる」というパターンになりやすいわけです。

2020年の日経平均株価は、3月19日の安値1万6358円から12月29日の高値2万7602円まで、1万1244円幅の上げ局面となっています。9カ月以上も上げ続けたように見えますが、実際に高値を大幅に更新する上昇を作っているのは、「3月19日の安値1万6358円から3月25日の高値1万9564円まで、4営業日で3206円幅の上昇」、「5月22日の安値2万0334円から6月9日の高値2万3185円まで、13営業日で2851円幅の上昇」、「10月30日の安値2万2948円から11月25日の高値2万6706円まで、17営業日で3758円幅の上昇」の3回。だいたい1.5カ月程度の期間だけです。

2020年は以前のチャートと比較すると、上昇の仕方(「短い期間で一本調子に上げる」「長い期間で規則的に上げる」)に変化はありませんが、動く幅が大きくなり、日柄、時間が短くなっています。

2020年の急激な動きはこの年だけの特別な動きではなく、近年、自動売買による高速取引の割合が増えたため、上昇、下降時の動き方で顕著になってきたと考えられます。

そのため、2021年の値動きは以前のような値幅に戻って穏やかになるとは考えずに、最近の激しい値動きを継続すると見ておいた方が妥当と言えます。

上昇を開始した後、下降を開始した後の振れ幅、日々の値動きの幅、ギャップの開け方などを推測する場合、値位置が高くなり、振れ幅が大きくなっている2018年以降の動きを参考にします。

2018年の展開は、1年がレンジ内の動き、または下降の動きになる場合、想定しておくべき値動きの幅や日柄、1営業日の値幅の参考パターンになります。

2019年は、引き締めへの政策転換の可能性があり、翌年以降、下げる可能性がある状況で、2018年の高値を試す流れになっていました。上値の限られる状況の中で、価格が上昇する場合、想定しておくべき値動きの幅や日柄、1営業日の値幅の参考パターンになります。

2020年は、3月までが上昇の流れの終息場面での動き方、4月以降が長く上げ幅の大きな動きになる場合の上げ方の参考になります。

2021年の値動きを考える際は、1年を通じて上昇の流れを作る年か、転換の年となるかを判断して、2018年、2019年、2020年の動きに当てはめて見ると、大まかな目標値や動き方を推測できるはずです。

◆2021年の日経平均は4月頃まで積極的に上げる可能性がある

雑な言い方だと思われるかもしれませんが、2021年の日経平均株価のキーワードは、「上げられるときに上げてしまえ!」です。

2020年4月20日、政府は事業規模117兆円の緊急経済対策を決定。そして、12月8日に事業規模73兆円の追加の経済対策を閣議決定しました。日銀は無制限の金融緩和を実行しており、アベノミクス初期を超える勢いで通貨供給量を増やしています。

国債を増発して歳出を大幅に拡大させたことで、ウイルス問題が一段落すると、国債の増発に対する批判、日銀の緩和政策やETF保有に対して圧力がかかる可能性があります。

また、菅首相の支持率が50%以下へと下がり、政権交代によって増税したい財務省寄りの政権が誕生することも考えられます。

2021年は株価を押し下げる可能性のある状況へと変化する不安に満ちています。そうした中、2020年末の日経平均株価は上昇を開始しています。

上昇には「多くの市場参加者を突き動かす何かが必要」であり、「長い期間の上げには気持ちを持続させるための材料が必要」だと前述しました。

そして、最近では一定の流れができている場面での値動きが、以前よりも極端になっているわけです。

日銀は少なくとも2021年前半まで大規模な金融緩和を継続する可能性があり、そして12月に追加経済対策が閣議決定されたばかりで、2021年度の予算にも経済対策が盛り込まれています。

日経平均株価は、3月、4月に取引量が拡大して上昇する傾向があります。4月は1990年から2020年までの期間で月足が陽線引けする確率が61.3%あり、11月の次に上げ傾向の強い時期になっています。また、日経平均株価は、年明けから4月、6月頃までの期間で上値を試す傾向があります。

2021年の株式市場は先行き不安ばかりですが、上げ傾向のある4月頃までなら強気の季節性に加えて材料の後押しがあり、まだ2020年からの流れを継続できる状況があります。

詳細は、プレミアムサイトで解説する予定ですが、日経平均株価の展開を大まかに述べると、2021年が大きく上昇の流れを作る場合、3万3000円以上を目指すと見ています。

3万3000円以上へ到達できるか否かの目安は、1月中旬頃までの期間で3万円へ接近する上げ局面が表れるかになります。

この記事の出る年明け後、年末の上昇の流れを継続しているなら、1月中旬頃までに3万円へ接近して、2021年が3万3000円以上を目指す可能性が出てきます。

1月に上値重く推移する場合でも、3万3000円を目指すシナリオはありますが、まずは年明け後の動きを確認して、上昇継続ならば一気に上げ幅を拡大する可能性を考えておきます。

2020年12月29日 記

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