為替週間見通し:伸び悩みか、米長期金利の動向が手掛かり材料に
【先週・今週の概況】
■米長期金利上昇でドル売り縮小
先週・今週のドル・円は、やや強含み。英国と欧州連合(EU)の自由貿易協定(FTA)の暫定発効を好感して、リスク回避的なドル売り・円買いはひとまず縮小した。ただ、米国の政治不安は解消されず、年明け後もドルの上値はしばらく重いままだったが、1月5日に行われたジョージア州上院選挙(決選投票)で民主党候補が2議席を獲得し、民主党が米議会上下両院を支配することが確定的となったことから、追加経済対策実現への期待は高まり、米長期金利は上昇。米国株式は一段高となったことから、リスク選好的なドル買いが優勢となった。
8日のニューヨーク外為市場でドル・円は下げ渋り。この日発表された12月米雇用統計で非農業部門雇用者数は減少したことから、一時103円60銭までドル安・円高に振れる場面があった。しかしながら、クラリダ米連邦準備制度理事会(FRB)副議長が楽観的な経済見通しを示したことや、バイデン次期米大統領が大規模な追加経済対策を発表すると伝えたことから、長期金利は再び上昇し、ドル・円は103円98銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:102円59銭-104円09銭。
【来週の見通し】
■伸び悩みか、米長期金利の動向が手掛かり材料に
来週のドル・円は伸び悩みか。米バイデン次期政権発足に先立ち政策期待で長期金利は上昇しており、ドル買い材料になるとみられている。上下両院で民主党が多数派を占めることから、バイデン新政権による円滑な政策運営が期待される。国債増発観測で長期金利は上昇しており、ドル相場を下支えしている。
ただ、新型コロナウイルスまん延で、ワクチン接種への期待よりも景気減速の懸念は根強く、金融緩和の長期化観測がもう一段のドル高を抑制するとみられる。1月15日発表の12月小売売上高は前月比で減少すると予想され、回復度合いは鈍く、個人消費の弱さが鮮明になりそうだ。同日発表の12月鉱工業生産はさえない内容となる可能性があるため、製造業の業績回復ペースの緩慢さが意識された場合、株価の下押し要因となり、長期金利は反落する可能性がある。
なお、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は1月14日開催のウエブ会議に参加し、発言の機会があるため、この場で金融緩和政策の長期化方針を改めて提示した場合、ドル買いを抑制する可能性がある。
【米・12月消費者物価コア指数(CPI)】(13日発表予定)
13日発表の12月消費者物価コア指数(CPI)は前年比+1.6%でインフレ率は前月と同水準となる見込み。金融緩和は長期化の見通しで、想定通りならドル買い要因にはなりにくい。
【米・12月小売売上高】(15日発表予定)
15日発表の12月小売売上高は前月比-0.3%と減少が予想されており、個人消費の回復度合いは限定的となりそうだ。大都市での制限措置の強化により、個人消費の減退が示される可能性があろう。市場予想を下回った場合はドル売り材料になりそうだ。
予想レンジ:102円00銭-105円00銭
《FA》