日本製アニメ人気で需要高まる、著作権ビジネス関連株に熱視線集中 <株探トップ特集>
―世界へインターネット配信でIP保有企業の収益拡大、音楽コンテンツにも注目―
「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が国内における映画興行収入の記録を塗り替え続けている。昨年12月下旬にそれまで興行収入トップだった「千と千尋の神隠し」(2001年)の316億8000万円を突破し歴代1位になったが、その後も観客動員数を伸ばし、今年1月20日時点では360億円を上回っている。
歴代映画の興行収入ランキング20位をみると、うち9本が アニメーション作品であり、更にそのうち7本が日本の作品で占められている。アニメは日本が世界に誇る文化であり、「クールジャパン戦略」でも中核を占める。今後もインターネット配信などにより、コンテンツとしての日本アニメは重要度が増すとみられ、アニメをはじめ、マンガやゲームなどの著作権に関連するビジネスは更なる飛躍が期待できそうだ。
●アニメ輸出は5年間で5倍近くに拡大
総務省が発表した「放送コンテンツの海外展開に関する現状分析」の「放送コンテンツ海外輸出額の推移」では、放送コンテンツ輸出額のうちアニメの輸出額は2013年度は86億円だったが、18年度には前年比13.4%増の405億円と5年間で5倍近くに拡大した。13年度時点でも輸出の主力はアニメで全体に占める割合は62%だったが、18年度には78%に更に割合を伸ばしており、日本アニメに対する海外からの根強いニーズがうかがえる。
ただ、金額自体は規模が小さく、成功しているとは言えないのが現状だ。これまで海外における日本アニメの人気は海賊版やファンサブ(ファンが字幕を付けたもの)などによるものが多く、著作権者の収益につながらない形で広がったことが要因の一つといわれている。
●配信サービス拡大が追い風
しかし、最近になってこうした状況に変化が訪れようとしている。その一つがインターネットの配信サービスの拡大だ。
前述の「放送コンテンツの海外展開に関する現状分析」によると、インターネット配信権の輸出額は13年度には20億円強だったが、18年度には174億円となり、5年間で約8.5倍に拡大した。この数字はアニメだけではないものの、これまでのDVDやブルーレイディスクの輸出から、配信サービスによる収入が拡大していることは明らかだろう。
これを牽引したのは、豊富なコンテンツをそろえた、サブスクリプション方式による動画配信サービスの普及が大きいといわれている。足もとで、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響で巣ごもり消費が活発化し、世界的に配信サービスが急拡大しているが、これもこの傾向に拍車をかけそうだ。
●著作権法改正でマンガ配信にも変化
また、海賊版が猛威を振るい、アニメ以上に苦戦しているマンガについても、ここにきて変化が訪れようとしている。
その一つが1月1日に施行された改正著作権法だ。これまで、「海賊版」のダウンロードの規制については、音楽と映像が対象だったが、1月1日からはマンガや書籍など全ての著作物に対象が拡大された。
海賊版対策などに取り組んでいる「コンテンツ海外流通促進機構」によると、19年のオンラインで流通する日本コンテンツの海賊版の被害額は、国内外で3333億円から4300億円であると推計され、うちマンガを含む出版物の被害額は1407億円から1552億円と3割以上を占めるとされるが、著作権法改正により被害額の一部が正規版に回る可能性が高い。
また、動画配信サービスと同様に、マンガでもサブスクリプションサービスが広がりつつあることもプラスに働く。足もとで活発化する、ブロックチェーン技術による著作権保護の動きなども好影響を与えそうだ。
●アニメ分野の著作権ビジネス関連銘柄に注目
このようにアニメ、マンガなどに関連したビジネスの収益環境好転が見込まれるなか、注目されるのがIP(知的財産権)や著作権に関連するビジネスだ。
バンダイナムコホールディングス <7832> は、「機動戦士ガンダム」「ラブライブ!」などのIPを展開。また、昨年3月に創通を子会社化したことでIPクリエイション事業の強化を図っている。足もとの同事業はこれら定番IPに加えて、「鬼滅の刃」などの新規IP商品の寄与で、コロナ禍にあっても売り上げを伸ばしており、グループの商品と連動するエンジンとしての役割を強めている。
ブシロード <7803> [東証M]は、「カードファイト!! ヴァンガード」「BanG Dream!(バンドリ!)」などのIPを展開している。また、新規IPとして「D4DJ」を本格始動させており、昨年10月にはアプリゲームをリリースしたほか、テレビアニメも放送した。アニメは字幕15ヵ国語、吹き替え3ヵ国で配信しており、世界市場の開拓を狙っている。
東映アニメーション <4816> [JQ]は、「美少女戦士セーラームーン」をはじめ「ONE PIECE(ワンピース)」「ドラゴンボール」「スラムダンク」などのIPを展開。21年は劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal(前・後編)」の公開もあり、グループ内でのシナジーが期待されている。
●マンガ分野ではカドカワ、メディアドゥなど
KADOKAWA <9468> は、ライトノベルやコミックなどのIPを多く有し、最近でも「Re:ゼロから始める異世界生活」「魔法科高校の劣等生」などIPのメディアミックス化も多い。同社では特にアニメ事業で配信事業とライセンスの強化に取り組んでおり、今後の成長が期待されている。
アルファポリス <9467> [東証M]は、自社サイト「アルファポリス」に投稿された小説やマンガの中から閲覧者の評価の高い作品を書籍化しており、これまでにも「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」や「居酒屋ぼったくり」などが映像化されている。21年は「月が導く異世界道中」のテレビアニメ化も予定されており注目したい。
メディアドゥ <3678> は、電子書籍取次で国内トップ。また、子会社が展開する「MyAnimeList(マイアニメリスト)」は日本のアニメ・マンガに特化した世界最大級のデータベースサイトとして海外での人気が高い。更に、ブロックチェーンを活用した新たなコンテンツ配信サービスの開発を加速させており、著作権ビジネスで新たな地位を確立しそうだ。
大日本印刷 <7912> は19年11月から、ファンタジスタ(新潟市中央区)と共同で、日本のマンガを英語に翻訳しサブスクリプション方式で提供する「Manga Planet(マンガプラネット)」を展開している。同サービスは、海外向けマンガサブスクリプションサービスの先駆けとして注目度が高い。
●音楽分野ではネクストーンにも注目
このほか、忘れてはならないのがソニー <6758> だろう。昨年12月には傘下のファニメーションを通じて、米アニメ配信大手のクランチロールを買収すると発表しており、これにより日本アニメが世界へ広がる後押しにもつながる。「鬼滅の刃」の制作にも携わるアニプレックスを子会社に持っていることからも、今後の日本アニメ飛躍のカギを握る企業といえよう。
また、NexTone <7094> [東証M]は、音楽コンテンツの著作権管理事業を展開している。巣ごもりで使用料率の高い配信サービスの利用が増えているほか、楽曲のデジタル配信を手助けする「デジタルコンテンツディストリビューションサービス」などを手掛け、コンテンツ権利者と多くのネットワークを持つ点などに注目したい。
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