明日の株式相場に向けて=“懐疑の森”で輝きを放つ銘柄
きょう(28日)の東京株式市場は大きく売り優勢に傾き、日経平均株価が437円安の2万8197円と急反落。ここまで日替わりで上昇と下落を繰り返してきたが、その流れで行けばきょうは下げる順番ではあったものの、これまでとはちょっとパンチの重さが異なり、狼狽気味の地合いだったといえる。注目されたFOMCは大規模金融緩和策の維持を決め、パウエルFRB議長にしても、テーパリング(金融緩和縮小)など今の段階では微塵も考えていないと言わんばかりの記者会見だった。しかし、米国株は変調をきたしている。バブルかそうでないかの論議がかまびすしいが、それは局地的には発生していることは間違いがない。しかし、今さらそれを言ってどうするというのが市場関係者の本音のはずだ。
米国ではゲーム専門店ゲームストップの株価が急騰、1000億円あまりの時価総額の会社がわずか半月の間に2兆5000億円まで膨張したというから確かに尋常ではない。しかもその背景は、ロビンフッダーと呼ばれる個人投資家がSNS連携で買いを仕掛けたことによる。小口個人投資家が井戸端会議で意気投合し、空売りポジションを積んでいたヘッジファンドが焼かれてしまうという現実。これは断片図として切り取ればまさしくバブルを示唆する出来事といってよい。しかし、だから給付金で金をばらまくのは悪だという論理にはならない。現在は新型コロナウイルス感染拡大という非常事態にあるからだ。このジレンマがのちに「コロナバブル」として歴史に刻まれる可能性は高いと思われるが、ならば今、「ここから一歩進めば断崖絶壁か」といえばそれはおそらく違う。
イソップ寓話の「オオカミ少年」ではないが、バブルが弾けるぞと喧伝しながら売り方が空売りを仕掛け、踏まされるケースがこれまで何十回と繰り返されてきた。今回のロビンフッダーによるゲームストップ株急騰の顛末をバブルの象徴とするのは簡単だが、それが全体相場に当てはまるとはまだ言えない。バブル化していない銘柄の方が多いからだ。
バブル崩壊に身構えるのは、ワクチンが普及して新型コロナが収束に向かい、超金融相場の大義名分が失われた時。また、それに先立って注意を要するとすれば、イエレン財務長官‐パウエルFRB議長の鉄壁ハト派ラインが、テーパリング要請圧力に抗えず、意見を修正してきたらそれは危険信号といえる。一方、現象面から考えた場合、それはテスラ株の時価総額がトヨタ自動車<7203>を再び下回るくらいの暴落に見舞われた時であると考えられる。しかし今は依然として、周りを見渡せば鬱蒼と茂る“懐疑の森”の中にいる。“2月警戒論”はそれなりに現実味があるが、おそらく嵐に遭遇したとしてもそれは一過性であり、懐疑の中で木々は枝を伸ばし続けるだろう。
こういう相場であっても投資マネーの物色意欲は健在だ。というよりは、東証1部の値上がり銘柄数が900を超えているのは決して弱気に支配された相場とはいえない。日本航空<9201>、ANAホールディングス<9202>の空運大手の株価上昇はもとより、コロナ禍における2度目の緊急事態宣言で泣きっ面に蜂であるはずの百貨店株、三越伊勢丹ホールディングス<3099>、高島屋<8233>、松屋<8237>、エイチ・ツー・オー リテイリング<8242>、丸井グループ<8252>など一斉高に買われている。これはヘッジファンドのロング・ショート戦略のアンワインド(巻き戻し)もよってもたらされた風景だが、逆に言えば全体指数の下げは機械的な匂いを強く発散しており、額面通りに受け止める必要はない。
個別では5G関連で三機工業<1961>、半導体関連の押し目で東京エレクトロン デバイス<2760>、信越ポリマー<7970>など。また、業績好調で自社株買いなど株主還元姿勢に厚く、光拡散レンズなど独自技術で今後収益機会拡大が見込まれるエンプラス<6961>は要注目。きょうは業績増額と自社株買いを材料にストップ高に買われたが、PBRはまだ1倍であり、ここを起点に更なる輝きを放つ可能性がある。また、バイオ関連も動意する銘柄が相次いでいる。JCRファーマ<4552>はワクチン関連として本領を発揮しているが、ワクチン関連以外でも、シンバイオ製薬<4582>が東大医科研との共同研究を材料に既に需給相場の様相を呈している。チャート妙味でイナリサーチ<2176>などもマークしたい。
あすのスケジュールでは、12月の有効求人倍率、12月の完全失業率、日銀金融政策決定会合の主な意見(1月20~21日開催分)、1月の都区部消費者物価指数、12月の鉱工業生産指数速報値など。海外では、10~12月期仏GDP速報値、10~12月期独GDP速報値、12月の米個人所得・消費支出、12月の米仮契約住宅販売指数など。(銀)