国内株式市場見通し:米追加経済対策成立を前に日経平均は3万円での値固め

市況
2021年2月20日 14時43分

■リスクオンムード強まり日経平均3万円突破

今週の日経平均は大幅に続伸し大台の3万円を突破した。週明け15日は、米バイデン政権の追加経済対策が成立に向けて一層進展したほか、米大統領が製薬大手ファイザーなどと新型コロナワクチンの追加供給契約を結び全国民の接種分を確保したことなどがリスクオンムードを強め、日経平均は500円超の大幅高と一気に3万円の大台を達成。景気・業績の改善が確認されつつある中で、イエレン米財務長官が「今こそ大胆な経済対策が必要」との見解を示したことが市場心理の火付け役にもなった。翌16日も、米国市場が休場のなか欧州株高を追い風に売り方の買い戻しに拍車がかかり、日経平均は高値で30714.52円まで上値を伸ばした。買い戻しが中心ながらも、年金基金や投資信託といったロングオンリー(買い持ちのみ)の長期筋による買いも入ったとの指摘が聞かれた。週半ばからは急ピッチでの上昇に伴う短期的な過熱感を冷ます動きとなった。週末19日には3万円をも割り込んで推移する時間帯があったが、押し目買いも入り、再び大台の3万円に復帰、終値でもこれを保持し、下値の堅さを印象付けた。市場でも、後半3日間の下落は健全なスピード調整の範囲内だとする見解が多かった。個別では、先物主導で大幅高となるなか値がさ株に買いが集まり、ソフトバンクG<9984>やファーストリテ<9983>が急伸した。特にファーストリテは株価が10万円の大台を突破したほか、「ZARA」を展開するスペインのインディテックスを時価総額で超え初めてアパレル業界で世界首位となったことが話題に。そのほか、ワクチン接種が国内でも始まったことでアフターコロナを見据える動きが一層強まり、空運やレジャー、結婚式場などのイベント関連の出遅れ感の強い銘柄が買われた。また、景気回復を背景に海運業や鉄鋼、非鉄金属なども週前半を中心に上昇した。一方、米長期金利が約1年ぶりの高水準を付けたことが警戒感を誘い、メドピア<6095>などの医療関連のウィズコロナ銘柄、グロース(成長)株には軟調なものが目立った。ただ、東京エレクトロン<8035>などの半導体関連については、日経平均が3万円を突破するなかで週初は強い動きがみられたほか、利食い売りに押された週半ばを挟んだ後の週末も再び大きく買われるなど概ね堅調な値動きだった。

■一進一退の展開か

来週の日経平均は大台3万円台での一進一退の展開が想定される。米国での大規模な追加経済対策の成立を目前に控えるなか、ワクチン接種が先進各国で始まり、マクロ環境は良好だ。先日の決算シーズンで主力企業の力強い業績改善も確認でき、目先は売り材料が見当たらないという状況に変化はない。また、17日に、1月下旬に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表され、連邦準備制度理事会(FRB)が足元の物価上昇は短期的なものとみており、金融緩和は当面維持する方針だと示されたことも支援材料だ。一方で、日経平均が29000円を達成した後に間髪を入れずに3万円を突破するなど、指数への高値警戒感は一層強まっている。市場では、1990年前後のバブル期と比べて株価収益率(PER)に異常は見られないほか、株式益回りと債券金利との差(イールドスプレッド)など、当時とは違って今の株高を正当化できるとする見解が多い。一方、米バンク・オブ・アメリカ(BofA)が16日に公表したグローバルファンドマネジャー調査によれば、世界の景気見通しは調査開始以来で最も強気で、足元の株高が「バブル」という回答は僅か13%にとどまったという。弱気派が混在していることがこれまでの株高を息の長いものにしてきたことを考慮すれば、市場が総じて強気に傾いてきたことはやや懸念であろう。それでも大勢は、財政金融による大規模なマクロ経済政策による下支え、ワクチン接種の進展による景気回復期待の高まり、そして、業績改善の裏付けという要素に基づくリスクオンムードの継続が想定される。ただ、米長期金利(10年物国債)が1年ぶりの高水準となる1.3%台を付けるなど、金利上昇ピッチが速い点には注意が必要だ。ここまでの金利上昇は景気回復に基づく良い金利上昇であることや、期待インフレ率を差し引いた実質金利ベースでは依然としてマイナス圏での低位安定が続いているため、大きく問題視する向きは少ない。しかし、あまりにスピードが速いと、市場の警戒感が一気に高まるため、金利動向には留意が必要だろう。

■循環物色がメイン、米長期金利には引き続き要警戒

物色としては、引き続きグロース株とバリュー(割安)株、そして、コロナ禍での打撃が大きい出遅れ感のある銘柄間での循環物色がメインとなりそうだ。また、米長期金利の動向には引き続き要警戒。ワクチン接種の開始に伴いアフターコロナを見据える動きが強まっている背景もあるだろうが、金利上昇への警戒感もあって、メドピアなどの医療関連、ウィズコロナ銘柄の下げが足元では目立っている。シクリカル(景気循環)要素をもつ半導体関連株などは強い動きが続いているが、米長期金利が1.5%を捉えてくるようだと、ハイテク株を含めてグロース株全体の本格調整に繋がりかねないため注視したい。

■1月鉱工業生産指数、米10-12月期GDP改定値など

来週の主な国内外予定は、22日に独2月Ifo景況感指数、23日に米2月消費者信頼感指数、24日に米1月新築住宅販売、25日に米10-12月期GDP改定値、米1月耐久財受注、26日に日本1月鉱工業生産指数、日本1月住宅着工統計、米1月個人消費支出・個人所得などが予定されている。

《FA》

提供:フィスコ

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