明後日の株式相場に向けて=東エレクを“大人買い”、半導体に資金還流
きょう(22日)の東京株式市場は買い優勢の地合いで、日経平均株価が138円高の3万156円と反発した。方向感がつかみにくい相場環境にあったが、ボラティリティは相変わらず高い。前場に日経平均はあれよという間に400円を超える上昇をみせた。しかし、その背景がはっきりしない。前週末の米国株市場はNYダウ、ナスダック総合指数ともに上値の重い展開であったし、きょうはアジア株市場も高安まちまちだった。市場では前場段階では、堅調な米株価指数先物を横目に投資家心理が強気に傾いたという解釈もみられたが、400円高の理由としては不十分であり、案の定、米先物も後場はマイナス圏で推移する冴えない展開が続いた。もっとも東京市場は、あすが天皇誕生日の祝日に伴う休場であるため引けにかけ持ち高調整の売りが出るのは自然な流れ。後場伸び悩んだが、週後半に不安を残すような株価の萎(しぼ)み方ではなかった。
市場の一部では米長期金利の上昇に神経を尖らせている。しかし、米10年債利回りが1.3~1.4%というのは決して動揺を誘うような水準ではない。新型コロナ収束の兆しを匂わせている程度のレベルに過ぎず、さかのぼって新型コロナが世界で意識され始める前の昨年の年初の段階では、米10年債は1.8~1.9%のゾーンで推移していた。「今の段階で名目金利や実質金利を俎上に載せて云々と論議しても、煙は立ちようがない」(中堅証券ストラテジスト)という声もある。マーケットは今週行われるパウエルFRB議長の議会証言に対する注目度が高いようだが、「雇用を重視する立場から、ハト派一色のコメントで塗り固められるのは間違いない」(同)という。3月の16~17日に予定されるFOMCでも同様であり、FRBがテーパリングの可能性に言及するのは早くて6月のFOMCという見方が強いようだ。
一方、日銀のETF買いは年間12兆円の上限枠はそのままに、買い出動の機会を減らそうとしている気配が強い。足もとでは前引けのTOPIX0.5%以上の下落でも買いを見送る、いわゆるステルステーパリングといえる動きをみせている。しかし、これもマーケットは気にするという雰囲気はない。むしろ日本株の押し目を拾いたい外国人投資家にとっては「日銀に邪魔をされないで拾えるのはありがたい」というのが本音ではないか。日銀は外国人の買いニーズを見越した阿吽の呼吸で手を引いているようにも見える。
今の市場は、ひところの脱炭素相場の流れから、半導体関連株への再攻勢や休養十分の人工知能(AI)関連へと物色の矛先が変わっている。少なくとも今のレノバ<9519>やウエストホールディングス<1407>の値運びをみれば、再生可能エネルギー関連に資金を寝かせておく気にはならない。一方、最高値を更新した東京エレクトロン<8035>の“大人買い”はどうみても海外マネーの仕業であり、資金の流れとして見逃せない。話題となっているビットコイン価格の急騰も、脱炭素モードとは逆方向にベクトルが向いている。今はまだ騒がれていないが、以前にビットコインのマイニングで半導体需要が喚起され、米エヌビディアが収益を大きく伸ばした時の光景が脳裏をよぎる。半導体の高集積化はAI技術の発展ともリンクしており、現在の相場は少し時計の針を戻したような、デジャブ的な物色の流れを形成しはじめている。そのなか、今週24日にエヌビディアの11~1月期決算発表が予定されており、必然的にその内容はマーケットの耳目を集めることになりそうだ。
半導体関連では好業績かつ明らかに割安なエノモト<6928>のほか、足もとの業績は悪くても来期以降の回復を見込んで割安感が意識されるイソライト工業<5358>などに物色の矛先が向いている。このほか半導体商社のイノテック<9880>やプローブカードを手掛ける日本マイクロニクス<6871>などにも目を配りたい。AI関連は2月に入ってからのブレインパッド<3655>の上昇パフォーマンスがテーマ物色人気の再燃を暗示していた。ブレインPと並びAI関連の代表格であるALBERT<3906>に動きが出ても不思議はない。また、FRONTEO<2158>もエンジンがかかりそうだ。このほかHPCシステムズ<6597>もマド開け急伸後の一服場面は狙えそうだ。
明後日のスケジュールでは、1月の白物家電出荷額、1月の食品スーパー売上高など。海外では1月の米新築住宅販売件数、ニュージーランド中銀の金融政策決定会合など。(銀)