PCR検査費用、払い戻さなかったチケット代は控除の対象になる? ~ 「コロナ禍の確定申告 その2」
清水香の「それって常識? 人生100年マネーの作り方-第24回
FP&社会福祉士事務所OfficeShimizu代表
1968年東京生まれ。中央大学在学中より生損保代理店業務に携わるかたわらファイナンシャルプランナー(FP)業務を開始。2001年に独立後、翌年に生活設計塾クルー取締役に就任。2019年よりOfficeShimizu代表。家計の危機管理の観点から、社会保障や福祉、民間資源を踏まえた生活設計アドバイスに取り組む。一般生活者向けの相談業務のほか執筆、企業・自治体・生活協同組合等での講演活動なども幅広く展開、テレビ出演も多数。 財務省の地震保険制度に関する委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。日本災害復興学会会員。
前回記事「あなたの『GoTo』クーポン利用額は大丈夫? 目安は50万円と90万円 ~『コロナ禍の確定申告 その1』」を読む
2020年は、2019年にはなかった支出がかさんだ年となりました。言うまでもなくコロナ関連支出です。
私たちが日常を送るうえで、マスクや消毒液などの感染防止グッズはいまや欠かせず、必要な支出とはいえ年を通せばそれなりの負担感があります。
コロナ禍が未だ収まらないなか、さまざまな理由から任意にPCR検査を受けた人もいるかもしれません。医師の判断で受けるPCR検査は全額が公費負担ですが、自費では1回3万円など結構な負担です。
あるいは、コロナ支援のため様々な団体が募っている寄付をしたり、コロナ感染防止のため中止になったイベントのチケットを払い戻さず、支援に回したりした人もいるでしょう。
考えてみると、この1年間のうちにいろいろな支出があったのではないでしょうか?
これらコロナ関連支出については、税金の控除を受けられるものもあるので、今回、具体的に解説します。さっそく、確定申告で税金を取り戻しましょう。
今年は、通常であれば2月16日から3月15日の1か月間で行う確定申告が、4月15日までの2カ月間に延長されます。所轄の税務署に出向かなくても、パソコンやスマートフォンを用いて行い、感染防止にもなるオンライン申告も推奨されています。まだの方は、国税庁ホームページのチェックをお勧めします。
【医療費控除】自主的に受けたPCR検査費用は対象になる?
医療費控除は、暦年(1~12月)の間で本人および生計を一にする家族が支払った医療費が一定額を超えるとき、所得金額から控除を受けられる所得控除です。
おさらいすると、所得控除は医療費控除のほか、基礎控除や配偶者控除、そして後で触れる寄付金控除など合計で15種類ある控除の1つです。
所得控除の額が大きくなれば、所得税が課せられる課税所得が少なくなり、税金を安くすることができます。下の計算式のように、課税所得は総所得金額から所得控除を引いた額になるからです。
つまり、所得控除の一種である医療費控除が発生すれば、所得税率を掛ける課税所得が小さくなり、よって所得税の額が小さくなります。
所得税額 = (総所得金額 - 所得控除) × 所得税率 - 控除額 - 税額控除
では、その医療費控除は、どのような場合に発生するのでしょうか?
下の計算式のように、医療費控除の額は、対象となる医療費などから支給される保険金等(生命保険などの入院費給付金、公的医療保険などの高額療養費等)を差し引き、さらに10万円を引いて計算します。
医療費控除額 = (支払った医療費等 - 保険金等) - 10万円 *
*総所得金額等が200万円未満の人は、10万円ではなく総所得金額等の5%
つまり、支払った医療費から受け取った保険金を差し引いた実質の負担額が10万円以上になった際に控除額が発生します。実質負担額が20万円なら医療費控除額は10万円になります。ただし、控除額の上限は200万円になります。
医療費控除の計算についての細かい注意点については、後ほど触れるとして、次に医療費控除の対象になる項目について紹介します。
控除対象になる医療費とは、医師等による診療や治療のために支払った費用、治療や療養に必要な医療品の購入費用などです。治療を目的としたマッサージや鍼灸治療、通院のために必要だったバス代など一定の交通費も対象になります。
一方、予防や健康増進などの費用は対象外です。よって新型コロナ感染予防のために購入したマスクや消毒液、フェイスシールドなどの感染防止グッズは、残念ながら医療費控除の対象にはなりません(下の表参照)。
■医療費控除の対象になる医療費など
掛かった費用 | 対象になる | 対象にならない |
---|---|---|
医師や歯科医師 への支払い | 診療・治療の対価・義歯の費用・ 先進医療・不妊治療や人工授精・ 妊娠、出産費用・禁煙治療など | 健診費用・予防接種・医師 に対する謝礼金など |
医薬品 | 治療または療養に必要な 医薬品の購入対価 | ビタミン剤・病気の予防・ 健康増進のための医薬品 |
鍼灸師、 柔道整復師 への支払い | 治療を目的とした施術の対価 | 疲れをとるため、体調を整える ことが目的のマッサージなど |
通院等で 掛かる交通費 | 電車代やバス代・公共交通機関が 利用できない場合の タクシー代・医師等の送迎費 | 電車やバスを利用 できるときのタクシー代・ 自家用車を利用したときの ガソリン代や駐車料 |
入院費 | 一定の差額ベッド料・ 入院時の食事代 | 入院時のパジャマ や身の回り品 |
その他 | 介護のおむつ代(要証明書)・ 松葉づえ、義手・義足など | 視力矯正のための眼鏡、 コンタクトレンズの購入費用・ マスク・消毒薬 |
新型コロナウイルス感染を調べるPCR検査費用が控除の対象になるかどうかは、ケースにより異なります。感染の疑いがあり、医師の判断でPCR検査を受けたとき、検査費用を自己負担していれば対象になります。
一方、感染していないことを明らかにする目的で、自らの判断でPCR検査を受けたときは対象外です。ただし検査結果が陽性だったときは、治療に先立つ診療と同様と考えられ、対象になります。