【植木靖男の相場展望】 ─ 一発逆転に望みを託す
「一発逆転に望みを託す」
●上昇相場の終焉の悲観論も台頭するが…
日経平均株価は2月16日に3万467円の高値(終値ベース)を示現した後、にわかに波乱含みの展開をみせ始めている。その後、3月5日まで4勝8敗である。特に2月24日以降、いわゆる鯨幕相場(陽線と陰線が交互に表れる相場)が続いている。珍しいケースだ。このことは、市場がかなり迷っていることを意味する。
米国長期金利が上昇に転じ、これまでのように株価を下支えしてきた金融緩和基調に揺らぎが生じつつあるとの不安心理が台頭している。
ところで、株価の現状をみると、大陰線となった2月26日の2万8966円で警戒信号が灯り、その後も下値を切り下げている。このため、不安心理が徐々に高まり、市場では20年3月からの上昇相場が終了しつつあるのでは、といった悲観論も聞かれる。
確かに、25日移動平均線を下回り、一目均衡表の「雲」の上限に近づきつつある。
需給関係をみても、1月下旬以降、買い姿勢を強めていた個人投資家が討ち取られ、買い勢力が鈍っていることに加え、海外筋もここへきて売り越し基調になるなど、買い方が一抜け、二抜けたとあっては、市場はもぬけの殻となりつつあるといえよう。
問題は、この背景だ。金利上昇が敵視されているが、これは需要が増えてきた証しであり、さほど問題視しなくても、と思われる。それに金利上昇については、イエレン財務長官とパウエルFRB議長の息はぴったり合っているといわれており、その連携の下で金融緩和に動くとみられる。
●分水嶺となる大事な一週間
ところで、目下、多くの投資家はもはや上昇への期待はなし、との思いを持つようであるが、これまでの歴史からみれば、一発逆転のケースもままある。
週明け3月8日の東京市場がどう動くかに筆者は最大の関心を持っている。仮に上昇するようであれば、一発逆転の可能性もあろう。3月第2週に下げれば、もはや20年3月からの長い上昇相場は終わったと判断せざるを得ない。この一週間はきわめて大事な週といえよう。
さて、ここへきての物色の流れは、これまた難儀な話だ。すなわち、仮に昨年来の上昇相場が終わったとすれば、ここまでの柱であった情報通信、ハイテク株も主役の座を降りることになる。いずれ全体は二番天井を目指すことになるが、そのときの主役は景気敏感株であることは過去の経験則から明白だ。だが、一発逆転相場ありとすれば、引き続き情報通信、ハイテク株が主役であり続けることになろう。
これも3月第2週の株価動向次第といえよう。先週末に全般安の中、鉄鋼株や化学株が急騰したのは手の早い向きの買いであろう。
今回は指数が急落する中、果敢にも連騰しつつある銘柄に注目したい。週末にかけ急動意となった日立製作所 <6501> 、景気敏感株からは昭和電工 <4004> 。このほか好業績のユニチャーム <8113> 、ガラスのトップメーカーでもあり素材にも強いAGC <5201> 、金融からは野村ホールディングス <8604> 、タイヤ世界最大手のブリヂストン <5108> 、日本経済を支えるトヨタ自動車 <7203> 、ホンダ <7267> 。
また、逆張りに強い日本取引所グループ <8697> 、味の素 <2802> 、ライオン <4912> 。さらに不況知らずの中外製薬 <4519> などに注目したい。
2021年3月5日 記
株探ニュース