窪田朋一郎氏【長期金利上昇で不透明感漂う市場を読み解く】(1) <相場観特集>
―3月期末接近で思惑錯綜、日経平均と為替はどう動く?―
週明け8日の東京株式市場は、朝方に日経平均は大きく買い優勢で始まったものの、その後は値を消す展開となり、後場はマイナス圏に沈んだ。引き続き米長期金利の動向などに神経質な動きとなっている。3月期末に向けて株式市場はどのような軌道を描くのか。また、金利動向と合わせ外国為替市場の動きも気にかかる場面だ。株式市場と為替動向についてそれぞれ業界第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。
●「バリュー株シフトの流れ鮮明に」
窪田朋一郎氏(松井証券 シニアマーケットアナリスト)
日経平均株価は足もと不安定な値動きとなっているが、これは日米の金利動向に対しての警戒感が重石となっている。米国では10年債利回りが再び1.6%台に浮上したことでハイテク株への投資に慎重な雰囲気が強まった。また、日本国内に目を向けても10年債利回りが直近0.15%台まで水準を切り上げる場面があり、米国ほどではないが長期金利が強含みで推移している点は気がかりだ。
この長期金利の上昇と歩調を合わせ、原油市況が上昇基調を強めていることでマーケットではインフレ警戒モードが漂っている。今週のECB理事会に続き、来週はFOMCと日銀の金融政策決定会合が相次いで行われるが、FOMCでパウエルFRB議長はハト派姿勢を継続するとみられる一方、これまでのような更なる金融緩和を示唆するコメントも期待しにくい。また、日銀の決定会合ではETF買いのスタンス変化に何かしら言及することが予想され、これを見極めたいとの思惑から、ここは強気にポジションを傾けづらい状況だ。また、3月中旬に向け年金系資金のリバランスの売りが上値を押さえる要因となるだけに、目先的に日経平均は下振れリスクがある。
3月後半は再び戻り歩調となりそうだが、それでも期末時点で日経平均3万円大台には届かないのではないかとみている。また、向こう3ヵ月の中長期視点では、全体相場のボラティリティは高まりそうで、日経平均のレンジは下値2万7000円、上値3万1000円を想定している。
個別では、景気敏感セクターへの資金シフトの動きが今後一段と強まろう。素材関連や旅行・飲食関連などが相対的な株高余地が大きいとみている。素材関連では日本製鉄 <5401> やジェイ エフ イー ホールディングス <5411> などの鉄鋼株。また。旅行関連では日本航空 <9201> 、ANAホールディングス <9202> などの空運株に注目。このほか外食関連ではクリエイト・レストランツ・ホールディングス <3387> やサイゼリヤ <7581> など。また、三越伊勢丹ホールディングス <3099> 、高島屋 <8233> などの百貨店株などもマーケットの視線を集めそうだ。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券へ入社後、マーケティング部を経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。
株探ニュース